2013.09.05
生活 / くらし
その他(一般)

線量計の回収日

今日は定期的な線量計の回収日です。
線量計の積算値は基準値を大きく下回っています。
しかし、福島に住んでいる我々は、常に子供たちが被ばくしないように目を光らせて行かなければならない現状があります。

ちょっと山に行って採ってきた物は食べてはいけないのです。
山菜採りやイワナ釣りが趣味だったおじいちゃん達は趣味を失いました。
汚染水問題で、いわきの海水浴場に行く気にはなりません。

子供たちの多くの友達が避難していきました。
知人や同業者でも妻子を県外に避難させている方はたくさんいます。
最近、少しずつ子供たちも戻ってきていますが、安心安全で戻ってきていると言うより、経済的な問題、家庭環境の問題から戻ってきているのだと思います。
公園の線量はまだ高く、下の子はまだ自転車に乗れません。

最近、汚染水問題で福島第一原発の報道が多くなってきましたが、我々福島県民がどの様に生活しているのかは、もう忘れられてきているのではと思います。

県外の方には、我々の現状が忘れ去られないように,今後もアピールを続けて行きます。

2013.08.30
診療
研究

CERAの腎性貧血に対する費用対効果3

CERAを使用する事で何故ESA製剤のコストが下がったのでしょうか。

このスライドは、ESA製剤の高容量投与患者割合の変化です。
今回、高容量投与患者を
エポエチンαBSで9000単位以上
ダルボポエチンで40μg以上
CERAで150μg以上
としました。
一般的には極端に多い量ではありませんが、当院での使用量としては多い量です。

CERAを使用するようになって高容量投与患者の方達の割合が減りました。
このことがESA製剤のコストが下がった最大の原因と思います。

鉄剤ですが、観察期間中に変化は見られませんでした。

Hbサイクリングについては、最初みて悪くなっていると思いました。
と言うのは、目標であるtargetが減っているからです。

ただ、よく見るとHAとLowが減っていました。
HAとLowは予後不良と言われているので、これが減ったことは大きいです。
targetが減ってLALが増えた事については次の考察のスライドで述べます。

考察

十分な透析を行いながら、CERAの使用量を10%程度から50%まで増加させたところ、Hbは変わらずにESA製剤全体の使用量を減らすことが出来ました。
それに伴いESA製剤全体のコストも低下しました。

全体的な鉄の使用量の変化は無かったが、高容量投与患者の割合が少なくなっており、このことが、ESA製剤使用量の減少に影響していると考えられました。

CERA使用量を増加させたところ、Hbサイクリングは、予後不良と言われているLowとHAが11%から5%へ減少しました。
Targetが減少したのは、CERA投与直前の採血でTargetより若干低いHb値となる場合が有ったためと考えています。
CERAの場合、半減期が長いですが、どうしても1ヶ月過ぎると下がってくる場合があり、Hb10g/dlを若干割ってしまう場合も有ります。
それでtargetが減ってLALが増えてしまったのかと思います。
これは、今後の調節で改善出来ると思われます。

2013.08.30
診療
研究

CERAの腎性貧血に対する費用対効果2

対象患者55名の透析条件です。
透析方法は、55名中49名がオンラインHDF、HDF1名です。
当院の基本治療はオンラインHDFですが、栄養状態が悪化した患者さんでは積層膜を中心としたHDを行っています。

透析時間は、平均4.7時間、血流量は平均355ml/minでkt/vが2.08のしっかり透析です。

今年になり、CERAの使用割合を10%程度から50%まで増加させています。
その分エポエチンαBSが下がっています。

ここからがポイントです。
CERAの使用割合を増加させたところ、Hbは下がる事無く(若干上がっている印象)ESA製剤の使用量を減らすことが出来ました。
週辺り最大で3509単位から2218単位に減らすことが出来ています。

週辺り2218単位と言いますと、週3回750単位使用で2250単位ですから、かなり使用量が少ないのではと思います。
多いときでも週1回1170単位であり、貧血に対してはしっかり透析の効果が出ていると思います。

元々少ない使用量を更に少なく出来た点は大きいです。

もちろん、包括化されているESA製剤のコストも軽減できました。
最も少ないときで、一人当たり1ヶ月で1万円を下回っていました。

2013.08.30
診療
研究

CERAの腎性貧血に対する費用対効果1

先週末に弘前市で行われていた第40回東北腎不全研究会で発表した

CERAの腎性貧血に対する費用対効果

についてご紹介します。
土曜日の医師セッションで発表しましたが、教育セミナーと看護セッションと同時であったためか、参加者は少なくひっそりとしたセッションでした。
せっかく作成したスライドですので、久しぶりにブログでご紹介いたします。

表題です。

目的です。
当院では、今年になり、ESA製剤でCERA使用量の比率を10%程度から50%まで上げて行きました。
当院ではしっかり透析を行っていますが、しっかり透析を行いながらCERAの使用量を増加させたことで、包括されているESA製剤の使用量及び薬価がどのように変化したか調査しました。

方法ですが、当院で現在通院透析中の70名の患者さんの中で、次のスライドで示す除外基準を満たして、当院に転院してから12ヶ月以上経過している55名の患者さんについて以下の項目を調査しました。

ESA製剤使用割合の変化:CERA使用量の比率を10%程度から50%まで上げた状況について

ESA製剤使用量の変化とHbの変化:Hbを一定に維持しながら、CERAをたくさん使うことでESA製剤使用量が減ったかどうかです。

ESA製剤コストの変化:それに伴うコストの変化です。

高容量使用者の変化:今回高容量使用者の割合について見てみました。

鉄剤使用量の変化:貧血治療には欠かせない鉄剤の使用量について検討しました。

Hbサイクリングの変化:そして半年ごとのHbサイクリングの変化についてです。

HbサイクリングはEbbenらの6分類を使用しました。

除外基準です。
基本的には、Hbサイクリングに影響するであろう造血機能以外の因子を除外しているのだと思います。

Ebbenらの6分類ですが、先ず Hb 濃度の目標値を設定します。
目標値は、10≦Hb≦12 g/dLとしている文献が多いようです。
今回の観察期間は6ヵ月としました。

観察期間中のHb 濃度が
目標値より低値で推移した症例を Low
目標値より高値で推移した症例を High
目標範囲内に安定していた症例を Target
目標値と低値の間を推移した症例を LAL
目標値との間を推移した症例を LAH
低値から高値にわ たって変動した症例 HA
と言う6 群に分ける分類方法です。

詳しくは以下の論文を参考にしてください。

http://www.nmckk.jp/pdf.php?mode=puball&category=JJCD&vol=24&no=13&d1=8&d2=0&d3=0

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/43/6/43_6_507/_pdf

2013.08.25
診療
研究
その他(医療関連)

第40回東北腎不全研究会

土曜日・日曜日と弘前市で行われていた第40回東北腎不全研究会に参加してきました。
今回も下記2つの演題を発表してきました。

CERAの腎性貧血に対する費用対効果

進行した透析アミロイドーシスに対する治療経験

 

機会が有りましたら、ご紹介したいと思います。
それで、日曜日にはオンラインHDFについてのランチョンセミナーがありました。
演者は、オンラインHDFの第一人者と言えるあかね会土谷病院の川西秀樹先生でした。

川西先生の御講演が聞けるなんて、これだけでも今回の研究会に参加した意義があると思いました。

講演は、オンラインHDFについて様々な観点からとても興味深い内容でした。
その中も凄いと思ったのは、オンラインHDFの生存率についての部分です。

スペインのある地方の患者さん906名を対象に行った前向き研究の結果です。

High-Efficiency Postdilution Online Hemodiafiltration Reduces All-Cause Mortality in Hemodialysis Patients

http://www.medpagetoday.com/upload/2013/2/16/ASN.2012080875.full.pdf

906人の血液透析を受けている方を対象に、従来通りの透析を行った450人と、高効率の後希釈オンラインHDFに切り替えた456人との多施設で共同の非盲検ランダム化比較試験です。
通常の透析も、日本で一般的に行われているハイパフォーマンスメンブレムを使った透析であり、決して透析の質が悪い訳ではありません。

それで、結果からは通常の透析を行った群に比べ、オンラインHDFを行った群では、死亡リスクが30%低下したと言うのです。
しかも、心血管疾患では33%の死亡リスクが低下し、感染症関連では55%の死亡リスクが低下したと書かれています。
通常の透析に比べ死亡リスクは30%低下すると言うのはとても凄い事だと思います。
当院は標準透析がオンラインHDFですから、この様なオンラインHDFの優位性の論文は心強いです。

ここまでは、僕も知っていましたし、実際のこの論文は読んでいます。
川西先生が仰っていたのは、このHDの生存率のグラフが現在の日本透析学会の生存率の変化とほぼ一致すると言うのです。

オンラインHDFにきちんとした保険点数が付いて、昨年からオンラインHDFを行う施設が急増しています。
そのため、日本の通常透析を受けている方の多くがオンラインHDFに移行したら、このグラフのオンラインHDFの生存率と同じように、世界で最も優れた成績である日本の透析者生存率が更に30%上昇するのではないかと言うのです。

とても夢の有る話です。
やはり、我々の様な凡人とは視点が違うとも思いました。

ただ、日本で行われている一般的な透析の場合は血流量が低いので、高血流で行われている海外の成績がそのまま当てはまるかどうかは分かりません。
それは、オンラインHDFの効力は高血流で発揮されるからです。
血流量を上げることは全くコストがかからないことです。高血流だから心臓が悪くなると言うのは迷信です。少なくとも300ml/min程度の血流でしたら血圧が下がることもないでしょう。
このブログを見てくれた透析従事者の方は是非とも血流を上げて欲しいです。

生存率ですが、30%は無理かもしれないですが、20%くらい生存率が上がったら、それだけでも素晴らしいですね。

当院でも引き続きオンラインHDFと高血流、長時間のしっかり透析で頑張って行きたいと思います。

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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