2025.08.10
一般

リング事故頻発の日本プロボクシング界  「穴口さんの死を無駄にはしない」と誓ったはずではなかったのか

「穴口さんの死を無駄にはしない」と誓ったはずではなかったのか
上記記事によりますと、JBCは穴口一輝選手の悲劇を受けて事故検証委員会を設置しています
設置された事故検証委員会は、報告書をもとに下記の提言を行っています
提言は
①減量・トレーニングに関する提言
提言により合同医事講習会が開催されています
②試合運営・安全管理の見直し
30日前と14日前の事前計量制度を導入
→不十分だったのではと思います
③定期健康診断や迅速受診の体制整備
選手が定期的な健康診断や迅速な受診を行うことができる環境を整える取り組み
→実現されていない
④ジムに「健康管理責任者」設置&セコンド4名体制 
「健康管理責任者」を置き、現行3人のセコンドを4人として1人は「健康管理責任者」とする
→実現されていない
⑤医療機関や専門家へのアクセスの整備
選手やその関係者が、健康管理をサポートする医療機関や専門家へアクセスしやすい環境を作り上げる
→実現されていない
同じ日に2名の方のリング禍が起こってしまった以上、何も行わないでの興行の継続は出来ないと思います
JBCから最新の「ウエイト変更勧告」が出ていますが
浦川選手(差戻し6.5 kg/戻し率約10.6 %)や神足選手(差戻し6.5 kg/戻し率約11 %)の例も掲載されています 
まずは、“当日の体重戻しが10 %を超える場合は試合出場を制限する”――こうしたルールの導入こそが、今求められているはずです。過度なリバウンド防止が、選手の命を守る第一歩になるはずではないでしょうか。

2025.08.08
一般

「タミフル=異常行動」は誤解だった?―約70万人の調査結果から

かつて、インフルエンザ治療薬「オセルタミビル(商品名:タミフル)」が小児に異常行動を引き起こすのではないかと報道され、大きな社会的関心を集めました。その影響で、一時は10代へのタミフル処方が制限されたことも記憶に新しいかもしれません。

しかし現在では、インフルエンザそのものが精神症状(異常行動など)を引き起こすことが分かっており、タミフルの副作用によるものではないことが明らかになってきました。

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今回ご紹介するのは、5~17歳の約70万人を対象とした大規模研究の結果です。この研究では、インフルエンザにかかった子どもにオセルタミビルを投与した場合と、未投与の場合で、精神・神経症状の発症率を比較しました。

その結果、オセルタミビルを投与された群では、未投与群と比べて精神・神経症状が約半分に減少していたという報告が得られました。

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具体的には、以下のような結果が示されています:

  • 全体のインフルエンザ症例151,401件のうち、66.7%(95%信頼区間:66.5~67.0%)にオセルタミビルが使用されていました。

  • 最も多かった有害事象は、気分障害(36.3%)および自殺や自傷行為(34.2%)でした。

  • 未治療のインフルエンザと比較して、オセルタミビル治療中(IRR: 0.53, 95%CI: 0.33–0.88)、および治療後(IRR: 0.42, 95%CI: 0.24–0.74)のイベント発生率は低下していました。

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  • サブ解析では、精神医学的イベントのリスク低下(IRR: 0.80, 95%CI: 0.34–1.88)よりも、**神経学的イベントのリスク低下(IRR: 0.45, 95%CI: 0.25–0.82)**の寄与が大きいことが示唆されました。

この結果は、「タミフル投与によって子どもの神経症状が増えるどころか、むしろリスクが下がる」ことを示しています。にもかかわらず、当時は「タミフルが異常行動を引き起こす」とマスコミが一斉に報じたため、多くの人が薬害のように受け止めました。

実際には、インフルエンザをはじめとする高熱を伴うウイルス感染では、薬に関係なく**「熱に浮かされたように」異常行動が出ることは昔から知られていた**現象です。

今回の一件は、子宮頸がんワクチンの報道とも重なる部分があります。薬に対する不安を煽るような報道が、予防や治療の機会を失わせてしまうことのないよう、私たちも正しい情報に基づいた判断をしたいものです。

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https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/fullarticle/2837165?guestAccessKey=fc89fa3e-04f9-46ce-9415-0661495369d7&utm_source=twitter&utm_medium=social_jamaneur&utm_term=17770532013&utm_campaign=article_alert&linkId=849227791

2025.08.03
一般

ボクシングの水抜きによる急性硬膜下血腫

たまには、ボクシングの話です

私は日本ボクシングコミッション(JBC)のコミッションドクターをしています

昨年は穴口一輝選手が、試合後に右硬膜下血腫で緊急手術を受け、その後亡くなられています

最近では、前世界チャンピョンの重岡銀次朗選手が試合後に急性硬膜下血腫を発症し、開頭手術を受けています。

昨日も同様な事故があったようで、近年頻発している状況です。

原因として、近年は選手のパンチ力が昔よりも強くなっていることもありますが、過度な水抜き(急激な減量)も大きな要因ではないかと考えています。

正常な状態の脳は脳脊髄液に浮かび、この脳脊髄液が衝撃吸収材として脳を保護する役割を果たしています。脳と頭蓋骨の間には適切な脳脊髄液のスペースが存在し、また脳表面を走行する「架橋静脈」は、通常たるんだ余裕のある状態で硬膜と脳を橋渡しするように存在しています。

しかし、試合前の減量によって重度の脱水状態に陥ると、脳実質が萎縮し、脳脊髄液の量も減少します。その結果、硬膜とクモ膜の間に存在する「サブデュラルスペース(硬膜下腔)」が拡大し、架橋静脈は本来のたるみを失ってピンと張った緊張状態になります。

このような状態で頭部に衝撃を受けると、脳が硬膜側に動く「ブレインシフト」が生じ、張り詰めた架橋静脈に強い牽引力が加わり、比較的軽微な衝撃でも静脈が断裂しやすくなるのです。

破裂した架橋静脈から出血が起こると、硬膜下腔に血液が貯留し、急速な脳圧亢進や脳圧迫を引き起こして意識障害や生命の危険を伴う急性硬膜下血腫が発症します。

また、水抜きと硬膜下血腫がどのように関係するのかについてですが、脳には「血液脳関門(BBB)」が存在し、脳実質への水分移動は厳密に制御されています。計量後に大量の水分を摂取しても、まず血管や全身の脱水は是正されますが、脳実質内の水分回復には時間がかかるため、脳は依然として脱水状態のまま試合に臨むことになります

このように、脱水状態は脳の浮力低下と架橋静脈の緊張をもたらし、急性硬膜下血腫のリスクを著しく高めます。したがって、脱水状態で頭部に衝撃を受けることは、通常よりも深刻な結果を招く可能性があるため、細心の注意が必要なのです。

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2025.07.14
一般

第17回血液浄化StepUPセミナー開催のご案内

来たる2025年11月2日(日)、郡山にて
**『第17回血液浄化StepUPセミナー』**を開催いたします。
本セミナーの大会世話人は、援腎会すずきクリニック 医療技術部 部長 鈴木翔太が務めます。
今回の開催テーマは、
**「患者報告アウトカム(PRO:Patient-Reported Outcomes)」**です。
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近年、透析患者のQOL(生活の質)が極めて重要な課題として認識されつつあり、
その評価においては、患者自身の視点を反映するPRO(患者報告アウトカム)の活用が強く求められています。
中でも、透析後の疲労感、そう痒感、痛みなど、患者が日常的に訴える症状に対する理解と対応が注目を集めています。
今回は、PROに関するスペシャリストの方々を全国よりお招きし、ご講演いただきます。
臨床工学技士はもちろんのこと、医師、看護師、管理栄養士など、
透析診療に関わるあらゆる職種にとって有意義な学びの場となることを目指しております。
皆さまのご参加を心よりお待ちしております。▼開催概要
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• 名称:第17回血液浄化StepUPセミナー
• 大会世話人:鈴木翔太(援腎会すずきクリニック 医療技術部 部長)
• 開催日:2025年11月2日(日)10:00〜16:00
• 会場:郡山商工会議所(福島県郡山市)
• 開催テーマ:患者報告アウトカム(PRO:Patient-Reported Outcomes)

※詳細につきましてはチラシをご覧ください。

※お申し込みは こちら からとなります。
2025.07.11
一般

第13回日本腎栄養代謝研究会学術集会・総会

7月12日(土)、13日(日)の2日間、日立システムズホール仙台にて第13回日本腎栄養代謝研究会学術集会・総会が開催されます
院長がエデュケーショナルセミナー として
「透析患者減少時代の透析療法と栄養管理のあり方を考える」
と言う演題名で発表させて頂きます
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プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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