2008.08.27
診療
研究

早期血液透析導入のパラドックス

先日東北腎不全研究会で聞いた話です。

一般的に透析の導入は透析導入基準を満たした場合に行うが、糖尿病の方や高齢で合併症のある方の場合は、早期導入した方が予後がいいと言われています。

これは、腹膜透析でも同じであり、早い段階で透析導入を行うと、残腎機能が保持されて、非常にメリットがあると言われています。
オシッコが出ない場合、水分制限はかなりきついものであり、透析毎に大量に除水を行う事で、身体の負担も大変あります。

早期導入を行い、残腎機能を保護するような十分な透析を行うことで、通常は半年くらいで出なくなってしまう尿が数年持つと言われています。

それで、世界レベルの研究で、透析導入がクレアチニンの数値で8以上と8未満で、生命予後がどれだけ違うかを調査したそうです。
もちろん、誰もが早期導入となるクレアチニン8未満の方が予後がいいと考えたようです。

ところが、結果は反対の結果であり、クレアチニンが8以上での導入の方が生命予後は良かったとのことです。
まさに、早期血液透析導入のパラドックスです。

理由ですが、透析導入まで元気でいた人は、ぎりぎりまで我慢できてしまうために、クレアチニンが10以上で透析導入となることが多くなりますが、元々元気ですので、導入が遅くても予後がいいことが多いからではないか。
それに対し、糖尿病や合併症の多い高齢者では、クレアチニンが低い段階で具合が悪くなり導入するので、元々の状態が悪いので、予後が悪くなるのではないかとおっしゃっていました。

なんだか、どれが本当なのか分からなくなるような研究でしたね。
これからは、前向きな研究での早期導入について研究を望むと縁者の先生はおっしゃっていました。
つまりは、状態が同じくらいの人で早期導入する場合とぎりぎりまで待って導入する場合を比べる必要があるとのことです。

2008.08.27
診療
研究

動脈硬化

すみません。
昨日の続きです。
それで、講演の話なんですが、まず前振りから。

透析患者さんはオシッコが出ない人が多いですから、透析をすることで、前回の透析から増えた分の水分を除去しなければなりません。

透析前の体重測定では、基準体重(ドライウエイト)から何キロ増えてきたかを計算し、その分の除水を行います。
たとえば、2kg増えてきたときに4時間の透析を行うとすれば、1時間あたり500gの除水を行います。

一般的には、時間あたりの除水量は体重の1.2%程度に抑えておいた方がいいと言われています。
つまり、60kgくらいの人では、一時間あたり700gくらいになるのです。

ただ、全く尿の出ない患者さんで、びっくりするほど増えてくる方が時々いらっしゃいます。
そうすると、一時間あたりの除水量もかなり多くなってしまいます。

それで、やっと講演で聞いた動脈硬化の話に戻ります。
透析患者さんの血管は、石灰化が進んで、まるでガラス管の様な動脈になっていきます。

このときに、石灰化のない動脈でしたら、除水を多くして血管内の水分をどんどん引いていっても、動脈がそれなりに縮んで対応しますが、石灰化の強い動脈だと、大量の除水を行っていくと、透析後半に急激に血圧低下を起こしたりするのです。

ひどいときは、170から90mmHgとか落ちてくる場合があります。
この様な急激な血圧低下の何が悪いかと言いますと、狭心症発作を起こす可能性があるようなんです。しかも、透析患者さんの狭心症は胸痛などの症状がないことが多いと言われています。
特に問題なく経過していたのに、急激に肺に水がたまっていて、心不全になっていた時は、こういうケースが多いそうです。

それではどうすればいいかと言うことですが、

1.無理な除水がないように、しっかり水分制限を行うこと。
(水分制限の基本は塩分制限です。塩分を控えれば水分は自ずと制限されます。)
2.長時間の緩やかな除水を行うこと
3.石灰化が起こらないような十分な透析を行うこと

この様な事が必要となってきます。
1.2に関しては、患者さんの努力によるものが多いですが、3は我々が努力すべき事です。
当クリニックでも、常に十分な透析を行うことを心がけております。

 

2008.08.27
診療
仕事 / 職場

頸動脈エコーについて

透析患者さんの動脈硬化について、先日の東北腎不全研究会でちょっと話がありましたので、ちょっと書いて見たいと思います。

まず、簡便に動脈硬化が分かる検査として、頸動脈エコーがありますので、この検査についてお話しします。

頸動脈エコーは、首に超音波の機械を当てるだけの検査ですので、患者さんに負担はかかりません。だいたい20分くらいで終わります。

これを行うと脳に行く動脈のつまりや動脈硬化の程度が詳しく分かります。血管の硬さや厚みは0.1ミリ単位で測定できます。
頸動脈の動脈硬化が進行すると、血管が徐々に狭くなっていき、詰まってしまうこともありますので、危険のある方にはしっかり見ていく必要があります。

この検査では、脳梗塞になるリスクを調べるだけでなく、全身の動脈硬化がどのくらい進行しているのかを評価することも出来ます。
また、検査結果を比較することで、高血圧や高脂血症などの治療が上手くいっているかの指標にもなります。いわゆる治療の効果判定にも使えるのです。

当院でも、専門の超音波技師が居りますので、透析患者さんには定期的に行っており、内科で来院された患者さんで、必要な方に行っています。

動脈硬化の進行した患者さんに頸動脈エコーを行うと、動脈の壁が厚くなっている方がたくさんいらっしゃいます。
その厚くなった動脈壁の中でも、脳梗塞を起こすリスクが高いものは、厚くなった動脈の壁が柔らかく、しかも壁に潰瘍等が出来ているものです。
この潰瘍が進んでいくと、壁がはがれ出していき、血液と共に流れていくと脳梗塞を起こすのです。

それに対し透析患者さんでは、腎不全という病態により、カルシウム・リン代謝の異常が起こり、異所性石灰化が大きな問題となります。

この異所性石灰化は身体のいろいろなところに起こりますが、動脈の石灰化もその一つです。
動脈が石灰化していくと動脈はどんどん硬い動脈となっていきます。
長期透析患者さんや糖尿病性腎症による透析患者さんでは、この傾向が強いと言われています。

それで、やっと前置きが終わりました。
続きは明日といたします。

2008.08.26
グルメ / お酒
旅行 / 宿

東北腎不全研究会 その2

山形に到着して、研究会に出席しました。
山形駅には、研究会を案内する大きな看板があり、開催者の意気込みを感じました。

2日間の研究会だったので、泊まりでしたが、山形でお気に入りのお見せが一軒あり、今回もその店に行きました。
山形駅を出て、すぐ左のビルにある、『冷麺さくら』です。
山形駅を出ると大きな看板がありますので、分かりやすいかと思います。
焼き肉と冷麺の店ですが、この店の冷麺はすごく美味しいです。
以前知人に連れて行ってもらったのですが、それ以来山形に行ったときは、ほとんど食べに行っています。

スープも美味しいのですが、手打ちの麺すごく美味しいですよ。

もちろん、2日目もしっかり勉強して帰途につきました。

2008.08.25
生活 / くらし
グルメ / お酒

東北腎不全研究会

土曜日の外来後、山形市で行われた東北腎不全研究会に行って参りました。
シンポジウムやセミナーが多く、勉強になりましたので、今後の診療に役立てていきたいと考えています。

新幹線で行きましたが、山形新幹線って単線の部分も有るのですね。
途中、どう考えても新幹線が止まらなそうな置賜駅で止まったので、どうしたのかなと思っていたところ、対抗新幹線の通過待ちですなんて放送がありました。

土曜日は外来が終わった後なので、昼ご飯を食べず新幹線に飛び乗った形でした。
本当は、米沢まで我慢して米沢牛の弁当を食べたかったのですが、どうしても我慢できず、米沢牛のハンバーグ弁当を食べてしまいました。

はらくっち弁当です。

腹一杯くったと言う意味でしょうか。
一つ一つ丹誠込められている感じでなかなかいい弁当でしたよ。

すごく幸せな気分になったお弁当です。
着いた後のことは明日また報告いたします。

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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