男性が飲んだ薬の胎児への影響
先日、薬屋さんから頂いた資料に、「男性が服用した薬剤の妊娠・胎児への影響について」と言うものが有りました。
今まで、男性が内服した薬剤が胎児に影響することは無いと考えていました。
精子は、成熟するまで約74日くらいかかります。その後体内に20日くらい蓄えられるとされています。
と言うことは、薬剤の影響が出るのは、受精の3ヶ月前となります。
ただ、射精される精子は数億個です。その中の選び抜かれた一個が受精しますので、奇形が有る精子が受精する確率より正常な精子が受精する確率の方が非常に高くなります。
しかも、奇形の精子では、受精能力を失うか、受精しても着床しない、もしくは妊娠早期に流産する可能性が高いです。
ですので、出生したときに催奇形性のような異常は起こらないとされています。
精子の異常で胎児に影響が出ることは無いようです。
しかし、精液を介しての女性への影響が有るそうです。
有名な薬では、サリドマイドがあります。
それから、抗ガン剤や抗リウマチ薬、そして、一部の抗ウイルス薬と、最近販売中止になる抗真菌薬でも可能性が有るようです。
最も驚いたのは、コルヒチンというよく使う痛風の痛みを抑える薬も危険性が有ると言うことでした。
コルヒチンは、痛風の治療薬ですので、よく使われる薬です。
予防としては、避妊をすることになりますが、内服後は3ヶ月くらいはコンドームを着用すべきだと言われています。
僕も、痛風の方に対し、コルヒチンを処方することが有ります。
今後は、処方するときには注意するよう説明しなければなりません。
経口補水療法
風邪を引いて具合が悪く食欲がない、下痢がひどいなどの患者さんがいらっしゃいます。
特に、小さなお子さんやご年配の方は、脱水になりやすい傾向があります。
これまで、そのような方を診察したときには、安易に『水分を十分に取りなさい』と指導していました。
しかし、発汗、下痢や嘔吐が有ると水分だけでなく、ナトリウム、カリウム、クロールなどの電解質も失われていることを忘れてはいけないようです。
つまり、汗をかいたり、下痢したり、吐いたりすれば、水分と共に塩分も足りなくなると言うことです。
激しい下痢や高熱の患者さんが来院した場合で、水分も多く取れないという患者さんに対して、しばしば点滴を行います。
点滴には、細菌をたたく抗生物質やビタミンの補給をするものも有りますが、体内の水分を補うことと電解質のバランスを良くすることを目的としていることが多いです。
そこで、脱水症状が軽度で、水分も口から取れる場合には、経口補水液を利用するという方法もあります。
この方法は、発展途上国などで、衛生環境が悪く、医療設備が整っていないために、点滴を行うことが難しい地域で進んでいます。
経口補水液の成分は、数種類の電解質とブドウ糖が入っており、脱水時におこなう点滴と同じような成分になっています。
それならば、スポーツドリンクで代用できるのではないかと考えられますが、と言うかこれまで僕もそう思っていたのですが、これらの商品は、経口補水液に比べて飲みやすくなっているので、電解質の成分が半分で、糖分が多くなっています。
結果として、脱水症状の改善よりは予防を主としているもので、脱水症状の改善には劣っていると言えます。
経口補水液は、 砂糖40g(上白糖大さじ4と1/2)と食塩3g(小さじ1/2)を湯冷まし1リットルによく溶かして作ります。
出来れば、レモンやグレープフルーツなどの果汁を加えて飲みやすくすると、カリウムの補給になっていいでしょう。
使い方としては、弱った身体に負担をかけないように、ゆっくり点滴を行うように、少しずつ飲んでください。
ただし、塩分制限をしている方の場合は、医師に相談してからにしてください。
実は、先日薬屋さんが経口補水液の宣伝に来て、お年寄りの多い当院では使う場合が有るのではと考え、OS−1という製品を院内におくことにしました。
僕は、体調不良の時に飲んですごく良かったのですが、いつも来ている患者さんに試しに差し上げたところ、しょっぱくってだめだと言うことでした。
ただ、二日酔には効きそうです。
もちろん、風邪や下痢で具合が悪いときは、点滴並みの効果が有りますので、いいかと思います。
追加ですが、透析患者さんはナトリウムが多いので、お勧め出来ません。
看護師さん募集中
最近、堅い記事が続いている様です。
そうなると、だんだん書くのが辛くなってきますね。
思ったことを書いてゆくというのも有るかなと言うことで、この様な題名にしてみました。
1月から、火木土の透析が始まりました。
火木土は、まだまだ患者さんの数は少なく、スタッフも十分な対応が出来ていると思います。
ただ、もう少し患者さんが増えたときのことを考えると、そろそろ次の一手も考えなければならないです。
臨床工学士については、4月から新人さんが入ってくれることになっていますので、看護師さんの充実を図らなければならないと思っています。
自分で言うのも何ですが、クリニックではすごくいい感じで仕事が出来ている様な気がします。
皆、一生懸命です。
皆が目標を持って頑張っています。
今日もちょっとトラブルが発生しましたが、一つ一つのことに対して、真剣に対応しています。
そう言うことが有るたびに思うのですが、起こったこと一つ一つを乗り越えていくことがなんだか、僕やスタッフの肥やしになるような気がします。
さあ明日も頑張ろう。
追伸
ホームページのスタッフ募集見てください。
透析患者さんの栄養障害2
透析患者さんの栄養状態の維持で重要なことは、蛋白摂取量よりも炭水化物と脂質からのエネルギー摂取と言うことを前回お話ししました。
ただ、透析が導入となる以前と同じように蛋白制限をしなければならないのでしょうか。
透析患者さんに対して一般的に指導される蛋白摂取は、1.0~1.2kg/kgです。
それに対し、一般人の蛋白摂取量は0.94kg/kgなのです。
腎臓病というと蛋白制限と言うイメージがありますが、透析患者さんに対しては、一般人より多くの蛋白を取るように指導しているのです。
タンパク質は良質のものを十分に取ることが重要です。
ただ、取りすぎると問題が有ることも説明しました。
実は、蛋白摂取量が少なくてもエネルギーの摂取量がたりていれば栄養状態は悪化しないことも言われています。
つまり、食事に注意して十分なエネルギーを取ることがとても重要だと言うことになります。
なんだか、ややこしくなります。
最近は糖尿病から腎不全になる方が多いので、透析を開始してからの食事指導が、今までと全く異なることに混乱する方は多いです。
もう一つ、蛋白摂取量はデータからの計算式で容易に計算できますが、エネルギーをデータから計算することは出来ません。
エネルギー摂取量の算出は、管理栄養士による患者の摂食調査しか手段がないそうです。
つまり、透析を受けている方では、管理栄養士による栄養指導を繰り返し受ける必要が有ると言えます。
ここでちょっと宣伝です。
援腎会すずきクリニックでは、透析を受けている皆さんに、管理栄養士が月1回の栄養指導を行っています。
すごく手間のかかる仕事です。
しかし、以前の糖尿病食が身についている人は、繰り返し説明しなければ納得してもらえません。
導入直後に栄養指導を行っても、一度だけでは身につきません。
繰り返し行うことが大切ではと考えています。
透析患者さんの栄養障害
透析患者さんでは、15%の方が軽度栄養障害、10〜15%の方で中等度栄養障害、5〜10%の方で高度の栄養障害があると言われています。
そして、透析歴が長くなるとその傾向は強まるようです。
栄養障害自体が、透析患者さんの死亡原因となることはないのですが、死亡原因の上位である心不全、感染症、脳血管障害などの合併症は、栄養状態の良否と関連していると言われています。
それでは、どのような要因が透析患者さんの栄養障害を起こしているのでしょうか。
1,エネルギー摂取量の不足
2,慢性的な炎症
3,血液透析時の異化的刺激
4,アシドーシス
5,透析で抜ける蛋白・アミノ酸
6,腎不全による糖質・アミノ酸代謝異常
などが言われています。
エネルギー摂取量については、蛋白摂取が過剰になると、尿素窒素やリン濃度の上昇、アシドーシスを起こす恐れもあり、また脂質の取りすぎにより、脂質代謝異常を悪化させる恐れが有ることから、透析患者さんでは、炭水化物を十分に取ることで、エネルギー量を上げることが推奨されています。
感染症などの炎症や、食欲を低下させる病気、そして歯科疾患などの摂食不良を起こす疾患を改善させることはとても重要です。
我々医療者側もしっかりした透析を提供しなければなりません。
生体適合性の良い膜素材を使用することはもちろんですが、十分に清浄化された透析液を使用することが慢性炎症を防ぐ大切な方法です。
当院はオンラインHDFを行っているので、透析液清浄化に気をつけるのはもちろんです。
そして、清浄化が達成されているか、しっかり検査もしています。
もっとも、現在は多くの施設でハイパフォーマンスダイアライザを使っていますので、逆濾過によって透析液が体内に入る可能性は高くなっています。
どの施設でも、ウルトラピュアな透析液を使用する必要が有ると言えるでしょう。
透析液が汚ければ、慢性炎症が起きます。
慢性炎症は、栄養障害と動脈硬化疾患を起こします。
それがMIA症候群です。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。