透析クリニックが被災して 17
当院のライフライン復旧経過です。
電気は、翌日200V電圧変電器を応急処理することで使用可能となりました。
水道は、翌日一時低水圧でしかも濁った水が流れてきましたが、その後改善しました。
かなり濁った水で、RO装置のプレフィルターが真っ黒となりました。
ガスは時間はかかりましたが、4日後には全て復旧しました。
ガスが復旧するまでの間、患者さんには寒い思いをさせてしまいました。
院内設備について教訓です。
鉄骨の建物は、地震時に揺れてしなることで地震の揺れを防ぐと言われています。
ですので、上に行けば行くほど揺れます。
鉄骨で揺れが強い施設では、貯水槽、変電器などの重要な構造物は出来るだけ地上に置くべきです。
そして、地震対策として透析室は1階に置く方がいいです。
ただ、東北腎不全研究会での発表で聞いた話ですが、
有る施設は1階は津波の被害に遭い、CTを含め医療機械の全てがやられてしまったそうです。
ただ、2階の透析室は津波の被害が無く次の日から透析可能だったそうです。
この話ですごいと思ったのは、この施設では非常用電源を屋上に置いたと言う事です。
周囲が津波の被害でひどい状態ですので、勿論電気も通っていません。
今回、通常は地上に置く非常用電源を屋上に設置したので、燃料を屋上まで持って行く労力は有ったが、電源を確保して透析を継続出来たという話でした。
設計士が通常は地上に置くと説明したが、院長先生がこの辺りは以前より津波にやられているので、屋上以外は譲れないと言う意見だったそうです。
結論としては、
その地域の特性や建物の構造を考えて透析室は設計すべきだと言う事です。
勉強になりましたが、当院はすでに作ってしまっているので参考に出来ませんが、このブログを見た方は参考にして下さい。
HDF研究会
9月3日(土)、9月4日(日)に横浜市で開催される第17回日本HDF研究会学術集会・総会参加してきます。
今回は、9月3日土曜日に第3会場で16:50から行われる一般演題③:性能評価①で、
O-3-01 「膜・透析方法の違いによるアルブミン漏出について」
を発表いたします。
発表内容ですが、以前よりオンラインHDFは栄養状態の改善に有用だと言われています。
また、矢吹病院の政金先生を中心にエバール膜やPMMA膜を使用することで栄養状態が改善されたという報告があります。
我々も、食事がたくさん食べられる方には前希釈で大量置換のオンラインHDFを行ってきました。
ただ、それではアルブミンやGNRIなどの栄養指標が下がってしまい、継続が難しい患者さんにはⅢ型やⅣ型のPMMA膜を使ったHDを選択してきました。
それならば、Ⅳ型のPMMA膜を使って前希釈でオンラインHDFを行うと言う方法もあるのではないかと考え、一昨年にトライアル的に行いました。
その結果を今回報告いたします。
HDF研究会に参加される先生方には、是非とも聞いて下さい。
よろしくお願いいたします。
被災地での長期処方
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新薬等の処方制限が期間限定ですが被災地で解除されるようです。
まだ連絡が来ていませんが、我々末端に情報が入るのは、来週14日くらいかもしれません。
原発から避難された患者さん達、着の身着のままで交通手段に困る方も多いようですので、朗報ではないかと思います。
追加です。
http://www.hospital.or.jp/pdf/14_20110906_01.pdf
東日本大震災に関連する診療報酬の取扱いについて
4.新薬に関する処方制限について
患者の周囲にあった保険医療機関が全て機能していない場合及び最寄りの医療機関までの交通手段の無い仮設住宅に入居した場合であってやむを得ない場合には、新薬につ いて14日を超えて処方しても差し支えない。
ただし、診療報酬明細書又は調剤報酬明 細書、処方せん、診療録及び薬歴簿に当該やむをえない事情を付記すること。
(適用は 9月12日から)
これを見るとかなり特定された条件のようです。
失礼しました。
HDF研究会に参加して 2
HDF研究会の報告 2 です。
いくつか印象に残った発表をご紹介いたします。
芦屋の坂井瑠実クリニックの喜田智幸先生のご発表で、頻回長時間透析のご発表がありました。
5時間から7時間の透析を週4-7回行っている患者さん達の報告です。
通常、週3回4時間の透析ですから、MAX週7回7時間透析はすごいですね。
勿論、在宅透析です。
在宅透析では回数の制限はございません。
7時間も夜間眠っている間の深夜透析です。
自分で回路を組んで、自己穿刺して寝ている間透析を行います。
在宅透析は全国で約200名くらいの方が行っている透析方法です。
十分な訓練の元で回路の組み立てとプライミングを行い、自己穿刺して在宅で透析を受ける方法です。
出来る方は限られますが、可能な方に取ってはとてもメリットがある治療法です。
残念ながら福島県で行っている施設はありません。
東北でも、山形県の矢吹病院のみとなります。
それで、今回の発表で何についてビックリしたのかというと、長時間頻回HDで血清アルブミンが上昇したと言うことです。
元々データ的にはアルブミン値が高い方に行っているのですが、さらに良くなったという結果を聞きました。
当院でも、可能な限り沢山の透析をしてもらうように努力しています。
身体の大きな方は、大きな膜を使い、5時間以上の透析で、血流も400ml/minくらいで行っています。
でも、そうすると少しアルブミンは低下するようです。
ただ、患者さん達はとても元気でもりもりご飯を食べます。
ガリガリに痩せていた方がふくよかになっていきます。
当院の患者さん達でゴルフ仲間も出来ているようです。
だから、透析量を増やすことでアルブミンが少し低下するのは当然と思っていました。
でも、さらにその上を行く透析を行うと、一般の方と同じようになっていくのだという事を知りました。
勿論、在宅でも膜を小さくしたり、血流を下げてはいないそうです。
お見それいたしました。
今後もさらに良い治療が提供できるように頑張ります。
それから、レストレスレッグ症候群(いわゆるむずむず足です。)に対して、β-2マイクログロブリンより大きなα-1マイクログロブリンを積極的に除去すると症状が改善するという発表が、橋本クリニックの櫻井健治先生を中心にありました。
α-1マイクログロブリンの除去量を35%以上とするとレストレスレッグ症候群の症状は消失するのだと言う話でした。
当院でも、α-1マイクログロブリンの除去量については一部の患者さんで測定した事はありますが、それほど重要視していませんでした。
早速、郡山に帰ってきて、全員でα-1マイクログロブリンの除去量を調べる事としました。
70人を透析前後で測定しますので、三菱化学メディエンスさんに大幅な値引きをお願いして来週測定してみます。
三菱化学メディエンスさま、ありがとうございました。
当院でも調べてみるとレストレスレッグ症候群の患者さんが数名いるようです。
とにかく症状が改善出来るように頑張ってみます。
以上、特に印象に残った2題をご紹介いたしました。
- 2011.09.06
- 研究
HDF研究会行ってきました。
土曜日曜と、横浜市で開催された第17回日本HDF研究会学術集会・総会参加してきました。
6月に透析学会総会に参加し、先月末には東北腎不全研究会に参加していますが、両方の学会とも、透析診療を行っているたくさんの知り合いに会うことが出来ました。
しかし、HDF研究会には以前からの知り合いはほぼいなく(山形矢吹病院の方々と松江腎クリニック草刈先生くらいです。)、HDF研究会で会って話す方達はHDF研究会で知り合いになった方たちです。
昨年初めて参加したときは、ほとんど知っている方がおらず、草刈先生や政金先生の後にくっついてたくさんの先生方を紹介してもらっていました。
HDF研究会に参加して盛んに発言している先生方は、透析をかじっていると聞いたことがある先生方ばかりです。
今年は、昨年知り合いになった先生方を中心にお話する事が出来ました。
さらに、このブログ読んでいますと声をかけていただきありがとうございました。
2日間、朝から日曜日15時半の終了時点まで、シンポジウムやワークショップ、一般講演など、聞ける講演は全て聞く事が出来、とても勉強になりました。
たくさんのセッションが有りましたが、どんな内容だったのと聞かれたこともあり、いくつかご紹介いたします。
International Symposiumと言うセッションでは、東南アジアを中心に各国の腎臓内科の先生方が自国の透析の環境について講演してくれました。
もちろん同時通訳ありです。
最近の同時通訳は医学用語がよく分かっていますね。
以前は医学用語の通訳が出来ず、何を言っているのか分からない通訳の事が有りましたが、とてもわかりやすい通訳でした。
カンボジアでは、急逝血液浄化は行われていますが、慢性腎不全に対する血液透析はまだ普及していないとのことでした。
しかも、ダイアライザーも5回再利用するそうです。
ベトナムの病院では、ベットが足りず、1つのベットに2人の患者さんが寝ている写真を見せてもらいました。
でも、慢性腎不全に対する人工透析は積極的に行われ、約1万人くらいの患者さんがいるそうです。
ダイアライザーは6回再利用して、透析治療費は1回20ドルと世界で一番安い治療費だそうです。
ちなみに、CAPDは月400ドルかかりあまり普及していないそうです。
ミャンマーでは、サイゴンにいる腎臓内科医は3名だけだそうです。
透析は急性腎不全に対する治療のみが行われていて、慢性腎不全の治療は行われていないと言っていました。
お国がらでしょうが、急性腎不全となる原因の75%は毒蛇に噛まれた事が原因で、多くの方が貧困のためお金が払えず、急性腎不全に対しては国が治療費を払ってくれるそうです。
フィリピンの先生は、オンラインHDFの話でしたので、かなり進んだ治療が行われているようです。
この後、台湾、中国と続いたのですが、当院の一般演題
O-3-01 「膜・透析方法の違いによるアルブミン漏出について」
が始まる時刻となり、その後は聞く事が出来ませんでした。
でも、自分の全く知らない世界を知る事が出来て良かったです。
オンラインHDFの発表が盛んにされていましたが、血液流量が低い発表が多く、勿体ない印象がありました。
夜は、懇親会で今年も何人かの先生方と名刺交換が出来て、ロビー活動も充実しました。
その後、透析命の先生方と夜景を見ながらカクテルを飲みに行き、楽しい一日が終わりました。
もちろん、日曜日も朝8時からの日本透析医学会認定 透析液水質確保に関する研修から、15時半まで学会を満喫してきました。
明日からの診療に役立てたいと思います。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。