しっかり透析の効果
当院では、透析液清浄化を前提に
5時間透析や週4回透析
血流量300ml/分以上
オンラインHDF
のしっかり透析を提供しています。
今回、しっかり透析の効果を実感出来るケースがありましたのでご紹介いたします。
透析の効率を判断するためには、1回の透析で尿素窒素(BUN)がどのくらい除去されたかの除去率や、週3回の血液透析でどのくらいの老廃物が除去出来たかを示す治療の目安となるkt/vが用いられます。
当院通院中の患者さんですが、当院では5時間透析で、血流400ml/minのオンラインHDFを行っています。
その方の透析条件は、
透析時間 5時間
血流 400ml/min
ダイアライザー Ⅳ型1.7㎡
オンラインHDF 補液200ml/min
です。
この方が、とある事情で別の施設で透析を受けました。
診療情報提供書を頂きましたが、そこに透析前後のデータも記載されており、除去率やkt/vを測ることが出来ました。
その施設はベットの都合上4時間透析でした。
また、血流は全国的に一般的な血流量である、200ml/minでした。
ダイアライザー Ⅳ型1.3㎡の通常透析でした。
それぞれのkt/vとBUN除去率は
kt/v BUN
自院 2.23 84%
入院先 1.35 68%
と言う結果でした。
一般的にkt/vは1.2をクリアするようにと言われています。
ただ、少なくても1.6までは数値が大きくなるにつれて生命予後も良くなるとされています。
当院では、kt/vが2.23ですので、一般的な血流200の4時間透析がkt/v1.35であったことに比べて老廃物の除去は十分されていることがわかります。
透析膜の膜面積も大きなものを使っていると言うこともありますが、それも含め当院のしっかり透析と考えて頂けたらと思います。
以前からオンラインHDFは小分子の抜けが悪いと言われていました。
でも、しっかり透析を行うことで、尿素窒素という小分子も十分に除去出来ると言う事が示せたと思います。
これからも当院の透析は、しっかり透析を継続していきます。
血流量と透析液流量
日本の平均的な血流量は、概ね200 ml/分程度です。
DOPPS研究の結果からわかった諸外国の平均360 ml/分と比較すると、かなり低い値です。
当院では、以前よりしっかり透析の一貫として血流量を上げるようにしています。
最近のデータでは、当院の平均血流量は360ml/分と諸外国のデータと変わらない数値になっています。
それでは、ダイアライザーの中で血液と接する透析液の流量はどのくらいがいいでしょうか。
一般的に血流量と透析液流量のバランスが「1:2」程度がよいとされています。
当院の血液流量からすると透析液流量は700ー800ml/分くらい有ると透析の効率は一番いいのかもしれません。
しかし、現在使用している透析装置では透析液流量が600ml/分までしか上げられません。
ろ過透析用に回す透析液もありますので、血流量と透析液流量のバランスも「1:1」くらいになっています。
ただ、バランスが悪くても、血流量を上げる事には意味があります。これまでの治療成績から、はっきりと透析効率が上がったと実感しています。ですので、可能ならば少しでも血流量は上げた方がいいと考えています。
今年の夏には個室透析センターを増築予定です。
そこで使用する透析装置を現在選定中です。
こちらの透析装置は透析液流量を800ml/分まで上げられるそうです。
他の装置にもメリット・デメリットがありますので、良く見極めて最良の透析装置を選択したいと考えております。
市民公開講座のお知らせ

3月3日の日曜日に福島市のコラッセふくしまで腎臓病の市民公開講座が行われます。
腎臓病について不安や悩みの有る方は無料で参加出来るとの事です。
ふるってご参加ください。
- 2013.02.20
- 仕事 / 職場
増築工事 2

今日の増築現場を撮影しました。
工事は着々と進んでいるようです。
明日は行程会議です。
行程会議は毎週行っています。
クリニックが木曜日午後休診のため、毎週木曜日午後開催しています。
毎回、たくさんの事を決めています。
初回は3時間もかかりました。
現在でも2時間くらいかかります。
毎回、行程会議で工事の現況を確認して、今後工事する細かい部分を決定しているので、出来たときにおかしな事が起こらないのだと思います。
また、状況について随時報告していきます。
甲状腺癌について
http://www.asahi.com/national/update/0213/TKY201302130390.html
福島県は、事故当時18歳以下だった約18万人のうち、約3万8千人の甲状腺の超音波検査を行い、3人が甲状腺がんと診断され、7人に疑いがあると言う発表をした。
10人の平均年齢は15歳で、確定診断された3人は全員、進行がゆっくりで早期癌だった。
今回の調査対象は飯舘村や浪江町など避難区域などの子どもたちで、3人は手術でがんを摘出、通常の日常生活を送っている。
福島県立医大の鈴木真一教授は「今回のような精度の高い超音波検査で大勢の子どもを対象にした調査は前例がなく、比較はできない」と説明した。
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甲状腺がんは進行が遅く生存率も高いと言われています。
しかし、子どもの甲状腺がんの発生頻度は100万人に1~2人程度と言われていましたので、明らかに高い発生率にたくさんの方が驚いたと思います。

金曜日に郡山で甲状腺の講演会がありました。
特別講演は、がん研有明病院の杉谷巌先生でした。
http://www.gsic.jp/cancer/cc_04/ysc01/index.html
講演の内容を箇条書きでまとめました。
甲状腺癌は4つの組織型に分類されます。
日本はヨード過剰なため、約85%が予後の良い乳頭癌となっています。
これはヨード不足の欧米とは明らかに違い、治療方針も異なっているそうです。
乳頭癌は、あらゆる悪性腫瘍の中で最も予後良好であり、発生率が高いので、解剖すると3-36%の方に見つかりますが、臨床的に問題となるものは1/1000と少ないと言われています。
リンパ節転移があっても予後にはほとんど関係しないそうです。
しかし、一部高危険度の癌もあり、高危険度癌と低危険度癌に分けられます。
高危険度癌10-20%
50歳未満で肺や骨への遠隔転移がある
50歳以上で3cm以上のリンパ節転移、甲状腺外への明らかな浸潤
→10年生存率は7割程度
低危険度癌80-90%
高危険度癌以外のことです。
→10年生存率で95%以上、20年生存率でも90%以上
高危険度の癌でも10年生存率7割というのは、他の癌に比べとても高いですね。
大きさが1cm以下の小さな癌を微小癌といいます。
超音波検査を用いて検診すると成人女性の3.5%に微小癌が発見されます。
超音波検査の機械の発達により、微小癌の発見は30年間で2倍発見されるようになりましたが、死亡率は変わっていないそうです。
それは、微小癌が進行しない癌である裏付けになります。
微小癌を6-12月毎の定期超音波検査で5年間経過観察した結果では、91%不変 増大7% 縮小2%だったそうです。
そのため、検診で見つかった癌を疑う5mm以下の腫瘍は現在は経過観察されているとのことです。
ちなみに、某保険会社では、吸引細胞診で見つかった微小癌については癌保険の支給をしていないと言っていました。
甲状腺癌には、一部未分化癌と言う悪性度の高い癌もあるそうです。
発生率2-3%で進行が早い癌です。
65歳以上の高齢者に多いと言われています。
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チェルノブイリでは、原発事故後子どもの甲状腺癌が増加したことが知られています。
福島で子育てをしている我々にとってはとても心配なことです。
僕もこれまで子どもの甲状腺癌については漠然とした不安を持っていました。
放射線の被曝については、心配ですが、今回の講演で相手の特徴を知る事が出来ました。
微小癌は、5年間経過観察91%不変だそうです。
極端に恐れずに冷静に見つめていきたいと思います。
プロフィール

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。


