情報誌HEART再び
『健康・福祉』をテーマとした専門情報誌、HEART12月号にクリニックの紹介が載りました。
今回は、健康探訪のコーナーです。
編集室のお兄さん。前回の鈴木さんと今回のクリニックと、取材をしていただきありがとうございました。
これからもクリニックのことをアピールしていきたいと考えています。
副作用:便秘薬の酸化マグネシウム
毎日新聞より
便秘や胃炎に広く使われている医療用医薬品「酸化マグネシウム」の服用が原因とみられる副作用報告が05年4月~今年8月に15件あり、うち2人が死亡していたことが、厚生労働省のまとめで分かった。高齢者に長期間処方しているケースも多いことから、厚労省は血液中のマグネシウム濃度の測定など十分な観察をするよう、製薬会社に使用上の注意の改訂を指示した。
酸化マグネシウムは腸の中に水分を引き寄せて腸の運動や排便を助ける効果があり、各製薬会社の推計使用者は年間延べ約4500万人に上る。
15件の副作用は、服用が原因で意識障害や血圧低下などにつながった可能性が否定できないケースで、全員が入院。うち認知症などの病気を持ち、他の薬と併用して長期投与を受けていた80代の女性と70代の男性が、ショック症状などを起こし死亡した。15人中13人は、服用を半年以上続けていたとみられる。
酸化マグネシウムは市販薬にもある。厚労省はこの成分を含む製品を副作用の危険が最も低い3類から、薬剤師らに情報提供の努力義務が課せられる2類に引き上げることを決めた。市販薬での副作用報告は今のところないという。【清水健二】
http://mainichi.jp/select/science/news/20081128ddm041040019000c.html
先日、便秘の治療について記事を書いたばかりですが、今日こんなニュースが飛び込んできました。
年間4500万人の方が酸化マグネシウムを飲んでいて、酸化マグネシウムと因果関係が否定できない高マグネシウム血症が15名の方で起こり、2名の方が亡くなられたと言うようです。
重症となったり亡くなられた方は、精神病や認知症で自分で症状をうまく伝えられなくて具合が悪くなったようです。
長期に飲んでいる方もいらっしゃると思いますが、酸化マグネシウムの内服により副作用として悪心・嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、筋力低下、傾眠などの症状があります。
そのような症状があり、心配な方は、マグネシウムの採血を受けられた方がいいと思います。
ただ、4500万人が飲んでいる薬ですので、それほど危険性は高くないと思います。
ちょっとおかしいと考えた場合には、漠然と飲み続けるのではなく、副作用のことを思い出してみてください。
この薬は腎臓が悪い場合には代謝されず、副作用が出やすいと言われています。
血液透析を受けている方の場合は、より注意して内服すべきですので、気をつけてください。
前立腺がん検診について2
これだけPSA検診が有用だと言われているのに、なぜ厚生労働省は『死亡率減少効果の有無を判断する証拠が現状では不十分』と言っているのでしょうか。
実は、世界的にも未だに評価が分かれているのも事実です。
その理由が、前立腺がんが非常にゆっくりと進行する癌であり、発癌から癌で亡くなるまでに40年以上の経過が必要だと言われているからです。
つまり、生前癌と診断されず、亡くなった後に解剖することで確認される『潜在癌』がとても多く、70歳以上で40%以上いると言われているからです。
つまりは、「前立腺がん検診が普及した場合におこる前立腺がん死亡率低下の中で、過剰診断、過剰治療を被っている受診者がいるのではないか」という点を指摘しているのです。
厚生労働省が危惧しているのはこの点であり、前立腺がん検診を行うことによる無駄な医療費を作りたくないと言う考えがあるのかも知れません。
それから、最近では後期高齢者医療制度も出来てから、いろいろな論議が起こっていますが、前立腺がんが非常に進行が遅い癌であり、図でも示しました様に、後期高齢者で増え続けている癌であるという特徴があります。
国が積極的にがん検診を行うのは、働き盛りの方の癌を減らすことを目的としています。
そう考えると、後期高齢者に多い前立腺がんは、積極的に検診を行う必要のない癌であると考えられているのかもしれません。
ただ、我々泌尿器科医が、何もしていないわけでは有りません。
世界的には、死亡やQOLの低下に影響しない癌を治療前に選別して、治療を行わず、経過観察を行う方法も行われています。
我々も、PSAが4以上であっても、症状がなく直腸診で進行した前立腺がんが疑われなければ、高齢者では十分な説明をした後に、積極的な検査を行わず、経過を見ることも行っています。
泌尿器科学会でも、近い将来は、必要のないと思われる方への検査や治療の問題も解決していき、検診の有用性もこれまで以上に高くなるのではないかと記載しています。
厚生労働省の研究は、調査に基づく研究です。
我々は、目の前で苦しんでいる前立腺がんの患者さんと接しています。
現場の声として、50歳以上の男性には、是非とも前立腺がん検診を受けてほしいですし、検診が受けやすくなるシステムを確立していきたいと考えております。
今回、この記事を書くにあたって、一般の方に分かりやすく書くために、用語がちょっとずれてしまっているところがありますが、ご了承ください。
風邪での筋肉注射
以前来院した患者さんで、風邪なので筋肉注射をしてほしいという中高年の方がいらっしゃいました。
通常、風邪では注射は行っておらず、食欲がなくて脱水の方に点滴の注射を行うことがあるとお話ししたところ、がっかりして帰られました。
なぜだろうと思ったのですが、先日行った研究会でその理由についてのヒントを得ることが出来ました。
演者の先生が、昔はやった麻疹の話をされました。
通常は、高い熱が出た後に発疹が出て直っていくのだが、時々発疹が出なく、青い顔をしたまま具合が悪くなっていく患者さんがいて、命を落とすことが有ったと話していました。
その当時、販売されたばかりの免疫グロブリンの筋肉注射をしたところ、数時間で青い顔が赤い顔に変わり、急激に元気になったとおっしゃっていました。
免疫グロブリンの筋肉注射で重症の麻疹の患者さんが、命を落とさずにすむようになったと言う話ですが、現在では、免疫グロブリンは純度が高くなり、重症感染症の入院患者さんに対して点滴で使われるようになっています。
当然、入院している重症の患者さんに使用する薬ですので、外来で気軽に風邪に使う薬ではありません。
もちろん、クリニックには置いてありません。
その当時も単なる風邪では使うことは無かったと思いますが、高い熱が出て、注射一本で急激によくなったと言うのは、実はこのようなことだったのかもと思いました。
遙か昔の記憶で、そのようなことが有ったのでしょうね。
これから、風邪がはやってくる時期です。
まずは予防。うがいと手洗いをしっかり行ってください。
前立腺がん検診について1
昨年、厚生労働省研究班が、「現時点で、集団検診として前立腺がん検診を実施することは勧められない」とする指針案を出したのですが、日本泌尿器科学会は全く逆の考えで、前立腺がん検診をどんどん行うべきであると考えています。
先日、前立腺癌検診についての講演会が郡山でありましたので、講演会で聞いてき内容と泌尿器科学会のホームページで集めた情報をまとめて記事としてみます。
まずは、前立腺がんがどのくらい広がっているかについて書きます。
前立腺がんは欧米人に多い癌で、米国では男子の疾患罹患率の1位、死亡率も2位の癌です。
ちなみに罹患率というのは、発生した病気の割合で、発生率とも言います。
日本人の男性では、数年前までは罹患率10位くらいでしたが、最近では5位まで上がってきているようです。食生活の欧米化に伴い、今後も増え続けて行くようです。
2020年には肺がんに次いで男性癌の第2位になると予想されています。
そして、2020年の前立腺がんの死亡率は、2000年の2.8倍になると予想されているのです。
恐ろしく増加していることが分かると思います。
前立腺がんは、50歳以下では非常に少ないのですが、50歳以上で徐々に増え行き、75歳以上の後期高齢者では、非常に多くなっている癌でもあります。
国立がんセンター 癌の統計より
発見するには、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA検査が非常に有効です。
正常が4以下ですが、4〜10で2割、10〜20で3割、20以上で8割の方に前立腺がんが見つかると言われています。
米国では前立腺がんの患者さんが多いこともあり、その対策はずいぶんと進んでいます。
米国では、50歳以上の男性の75%は少なくとも1回はPSA検査を受けたことがあると言われているほどです。
そのため、PSA検診が普及したおかげで、死亡率が1990-1992年をピークに低下傾向にあり、2003年は1990年と比べ31%も低下しているようです。
31%ですので、かなりの効果があることが分かります。他の癌で、死亡率を30%も低下させることが出来るというのは、聞いたことないと思います。
もちろん当然の話ですが、癌は転移するので怖いですね。前立腺がんでも、遠隔転移を起こすと死亡率が上がります。そして、PSA検診が遠隔転移を減少させたことも疫学調査から分かってきています。
前立腺がんは、骨に転移しやすい癌です。骨に転移することにより、全身の痛みが生じることも多いですので、遠隔転移を減らせることは重要なことです。
前立腺がんの検診では、オーストリアのチロル地方の検診が有名です。
1988年から積極的な前立腺がん検診を導入して、住民男性の86%が少なくとも1回は検診を受けるようになった結果、明らかに進行した前立腺がんが減り、死亡率の予測値は54%も減少しています。
それでは、日本におけるPSA検診はどうなっているでしょうか。
日本では、PSA検診の普及率が依然として低いため、未だに発見される前立腺がんの約30%は骨転移の伴うものであり、癌が進行するまで見逃されている場合が多いと思われます。
以上が、前立腺癌のPSA検診についてのお話ですが、次回はなぜ厚生労働省がPSA検診を勧めていないのかについて、書いてみたいと思います。
プロフィール

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。