学習講演会12
オンラインHDFのデメリットについてですが、透析施設側のデメリットと透析を受ける側のデメリットが有ります。
透析施設側のデメリットは、透析液の管理にコストがかかることです。
当院では、東レメディカル社の最新の洗浄消毒方法を取り入れた「トータルクリーン化システム」を導入しすることで、徹底的に水質管理を行うことが出来ました。
これは、透析設備がパッケージ化された新しい施設だから出来ることで、既存の施設で行うのはとても大変な事だと言われています。
そして、透析液のエンドトキシンを取り除くエンドトキシン除去フィルターは高価ですが、頻回に交換する必要があります。
また、どんなに素晴らしいクリーンシステムを使っていても、本当にきれいになっているのかを確認していなければ意味がありません。
定期的にエンドトキシンや細菌を測定して、測定値が感度以下である事を常に確認していくには、それなりのコストがかかります。
でも、現在ほとんどの施設で使われている膜は、高性能膜であり、逆ろ過を起こしてしまい透析液が体内に入ってきますので、オンラインHDFやるやらないにかかわらず透析液の清浄化は必須であると思います。
もう一つのデメリットは、通常透析では必要ない輸液ポンプが必要だという事です。
ポンプ代は透析装置一台に付き数十万円かかりますので、負担は相当な額になります。
そして、患者さん側のデメリットは、オンラインHDFが保険で適応されていない治療であることです。
自分がやっている治療が、保険で認められていない治療だと言うことは、患者さんにとって不安であることは間違いないと思います。
尚、オンラインHDFは保険で適応されない治療ですが、かかる費用については全て当院で負担しており、患者さんの負担となることは一切ありません。
患者さんに費用を請求することは、混合診療となり、法律で禁止されています。
じゃあ、何でそんな治療を積極的にやるのかというと、いろいろとクリニック側にもメリットがあります。
いつも患者さんたちの具合が悪く、透析が終わっても帰れない患者さんがいるようでは、スタッフの仕事は大変です。
でも、オンラインHDFを行うことで、患者さんが元気になり、透析中の状態悪化も少なくなることで、スタッフの負担が少なくなります。
そして、もう一つの大きなメリットとして、包括化されているエリスロポエチンの使用量が少なくなる事があります。
当院でも、転院後に使用しているエリスロポエチンの量が半分くらいに減っています。
これは、コスト的にはかなり大きな事です。
でも、一番のメリットは、医師もスタッフも患者さんも、みんなが前向きに治療を行えると言うことが一番メリットだと思います。
この治療をやることで、患者さんたちはとても元気になっていきます。
それが目の前で実感できます。
とてもすごいことです。
学習講演会11
それでは、オンラインHDFはどの様な方に効果が有るのでしょうか。
基本的には、HDFの濾過量を増やしたものと一緒です。
通常のHDFを強化したのがオンラインHDFなのです。
HDFには、先に点滴を入れてからダイアライザーを通す前希釈と、ダイアライザーを通してから点滴を入れる後希釈が有ります。
薄めてからろ過する前希釈よりもろ過をしてから点滴を入れる後希釈の方が、効率はいいです。
でも、いくら何でも後希釈の場合にはろ過できる量が決まってきます。
それで、ろ過する量がそれほど多くないボトル型のHDFを後希釈で行うのが一般的です。
オンラインHDFの場合は、どちらでもいいのですが、当院ではろ過の効率は悪くなるものの、大量にろ過できる前希釈オンラインHDFを採用しています。
スライドに示しましたが、HDFを行うと、透析アミロイドの原因となるβ2MGが下がり骨・関節痛などが改善することが良く強調されます。
ただ、当院には長期の患者さんがおりませんので、アミロイド症の改善効果についてはよく分からないと事があります。
以前に、通常のHDを行う透析施設で働いていたスタッフが言うことは、当院で透析を受けている患者さんたちは、透析が終わると、来たときと同じようにすたすたと帰っていくとよく言います。
オンラインHDFの”透析後、疲れにくい”と言う効果かなと思います。
それから、皮膚のかゆみが減る事は明らかで、当院ではほとんどの患者さんが痒みを訴えません。
実は、最近転院してきた患者さんで、かゆみを強く訴える方がいらっしゃり、転院後すぐに通常のHDFを行ったのですが、全くかゆみが取れませんでした。
それで、オンラインHDFに変えたところ、すぐにかゆみを訴えなくなりました。
効果が劇的にありビックリしました。
通常は、オンラインHDFにしてもかゆみが取れるまでに2週間から1ヵ月くらいはかかるのですが、その方は劇的に改善しました。
以上がオンラインHDFの効果です。
カレーアクションふくしま
ビッグパレットふくしまで、今週末第9回うつくしまこども博が行われます。
その中で、『カレーアクションふくしま』と言うイベントがおこなわれ、親子で、福島の自慢の食材を使った「ザ・ふくしまカレー」を作ろうという事らしいんです。
たまたまラジオでその事を聞いて、ネットで調べたら、まだ募集していて、子供も5歳から参加できるとの事でしたので、数日前に申し込んでいました。
そしたら、本日はがきが届きました。
暗いところで撮影したので、ちょっと色が変わっていますが。
独身時代、カレー作りは得意でしたので、お兄ちゃんと2人で楽しんできます。
エプロン持っていないので、気合いを入れて買ってきます。
なぜ血流を上げると生存率がよくなるのか。
ここまで、オンラインHDFを中心に説明を行ってきました。
今回はちょっと血流に付いての補足です。
これは最近作ったスライドですので、学習講演会ではお話ししていません。
学習講演会6で血流を上げると生存率がよくなる事を説明しました。
ただ、血流を上げれば効率はよくなりますが、お見せしたグラフで死亡に対する相対危険率がずいぶんとよくなっているので、本当にこんなによくなるのかと考える方もいらっしゃるのではないかと思います。
その原因について説明したいと思います。
これは、僕が考えたことですから、とりあえず話くらいに聞いてください。仮説みたいなものです。
透析のコンソールの中には、中空糸が沢山あります。
血液がその中を流れ、尿毒素は中空糸にある孔を通って透析液側に出て行きます。
小さな物質は動きやすいですが、大きな物質は動きにくいです。
これは、中空糸の膜の内側に境膜という部分が出来て、その境膜を物質が通りにくい性質のためです。
境膜については、勉強不足でよく分からないところがありますが、このような部分に出来る膜と言うより薄い層で、物質が移動しにくくなる原因となります。
移動しやすくするためには、境膜が薄くなれば移動しやすくなります。
そこで、高血流にすることで、この境膜が薄くなり、血液側にある尿毒素が透析液側に移動しやすくなるのではないかと考えられます。
他にも、この境膜を薄くする手段は考えられていて、血流を上げることはその1つではないかと思います。
また、血流が早くなると圧が生じ、ろ過が起こってくるのではないかという話も聞いています。
血流を上げることは、単純に流速を上げる以上に大きな効果があるかもしれません。
6月のエンドトキシン濃度の測定結果が出ました。
6月のエンドトキシンと細菌の培養検査の結果がでましたので公表します。
6月16日に行った検査結果では、
ET活性値:0.0003 EU/mL未満 (測定感度未満)
生菌数:0.1 CFU/mL未満 (測定感度未満)
でした。
今回もウルトラピュアな透析液が保たれていました。
ちょっと報告が遅れすみませんでした。
今日、スタッフが『すいませ〜ん。遅れてしまって』と言って報告してきました。
そういえば、週末今月の結果まだだなと思ったのですが、そのまま忙しく忘れていました。
一番大切な部分なのに、だめですね。
来月、市内で行われる透析の研究会で、透析液清浄化の講演が有り、前座として当院臨床工学士が、当院が行っている透析液清浄化について報告することになっています。
透析液清浄化は、透析治療の根本となるところですので、しっかりしていかなければなりません。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。