慢性血液透析患者におけるレボカルニチンの有用性の検討3
結果です。
まず、筋症状です。
筋症状は、筋痙攣いわゆる「こむらがえり」です。
カルニチンの欠乏状態では、筋肉の引きつりが起こりやすいことが知られていて、カルニチンを筋痙攣症状のある方が内服すると、症状が改善すると言われています。
当院では、4名の方に筋症状がありました。
ただ、症状の出現は月に1回程度であり、軽度の症状でした。
カルニチンを内服することで、2名の方は症状が消失しましたが、2名の方は改善せず、1ヵ月で内服を中止しました。
筋症状については、カルニチンはある一定の効果があったという結果でした。
ドライウエイトの変化は特に認めませんでした。
栄養状態の悪いGNRI91未満の方でも同様の結果でした。
僕的には、栄養状態の悪いGNRI91未満の方もそれ以上痩せなかった事に満足しています。
アルブミンについては、全体で変わらず、栄養状態の悪いGNRI91未満の方でやや上昇する傾向がありました。
元々低栄養の方達ですので、半年間悪化していないと言うことは良かったのではと思います。
GNRIは全体で変わらず、GNRI91未満の方はアルブミンが上昇した結果若干上昇している結果でした。
栄養状態が悪い方にカルニチンを処方して、半年後に栄養状態が少なくとも悪化しなかったことは、カルニチンの効果としては満足できる効果だったのではと考えています。
内部被曝通信
https://aspara.asahi.com/blog/hamadori/entry/TpigXw1NWt
朝日新聞に医療サイト「アピタル」と言う会員制のサイトがあります。
東大の坪倉正治医師がブログを書いており、一般の方でも見る事が出来ます。
坪倉医師は週の半分は南相馬で医療支援を行っており、南相馬で行っているホールボディカウンターの結果から分かったことをブログに書かれていますが、とても参考になります。
一度ご覧になってください。
それと、昨日ラジオ福島で、東大の早野教授と坪倉医師が内部被曝についてお話してくれました。
いくつか記憶に残った部分を書きます。
・チェルノブイリ比べて内部被爆の量は二桁違う
チェルノブイリでは、汚染直後に食品の規制をしなかったために、汚染した牛乳を飲んだ子供たちが甲状腺癌になったことが知られています。
食品が規制されている現在では、きちんと流通している食品を食べていれば内部被曝の量はとても少ないとの事でした。
南相馬で行っているホールボディカウンターの結果によると、ほとんどの方が測定感度以下であり、一部の被曝量が多い方でも1日20ベクレル程度の被曝量との事でした。
・ホールボディカウンターは子供をはかるより一緒に住んでる親を測ったほうがいい
これは、今回の内部被曝通信にも書いて有る事です。
うちの次男も郡山の高線量地域に住んでいる幼児として、つくばにバスで内部被曝量を測りに行ったのですが、本人だけで無くお母さんも一緒に測る様に言われた事を思い出します。
その時は、小学生の長男を測って欲しいと思いましたが、お母さんを測る理由はあったのだということが分かりました。
・1964年当時は日本国民のほとんどが毎日5ベクレルほどの内部被曝を受けていて、現在の福島での内部被曝より多い
今回の原発事故が起こらなければ全く知らなかった事です。
1950~1960年代を中心に、非常に多くの核実験が大気中で行われ、たくさんの放射性物質が降ってきていたそうです。
グラフの縦軸は指数ですから、とんでもない量が降っていたことが分かりますね。
以上です。 早野、坪倉両先生の話は2回に分けて放送されます。 次回は7月28日の土曜日、午後2時からとのことです。
慢性血液透析患者におけるレボカルニチンの有用性の検討2
患者背景です。
対象は、L-カルニチン600mg/日を投与開始した27例中、6ヵ月以上投与継続出来た22例です。
男性が16名、女性が6名、年齢は、平均68.1±1.85歳
原疾患は、DMが13例で非DMが9例でした。
透析歴は、44.9±9.94ヶ月
透析時間は、4.38±0.07時間
血流量が、265±7.8ml/min
Kt/vは1.8±0.05
です。
現在の当院の平均透析時間は、4.7時間。血流量が300ml/minくらいですので、母集団の透析量は少なめのようです。
これは、カルニチンを投与する対象として、食事摂取が少なかったり、低栄養だったりしている方が多く、透析量を抑えている方が多いためかと思います。
時間に関しては、本来は栄養状態が悪いから短くて良いと言うことはないのです。
時間を延ばさせてくれない方の栄養が悪いと言う事かもしれません。
投与理由は、当院の考え方として、基本的にはカルニチン投与の適応は栄養状態が良くない方と考えており、そのため20名の投与理由が栄養状態不良でした。
また、下肢痙攣が4名、ESA抵抗性の貧血の方が1名でした。
27名中5名が脱落しましたが、2名は下肢痙攣が改善しないため、内服中止しています。
また、副作用として2名、投与中に別の疾患で死亡された方が1名いました。
方法としては、
L-カルニチン600mgを6ヵ月投与して
筋症状がどのくらいの程度改善したか。
採血や胸部レントゲン写真の結果や、Inbody720で測定した筋肉量、脂肪量などを
栄養状態 :DW、alb、GNRI、筋肉量、脂肪量
心機能 :CTR
腎性貧血 :Hb、ESA使用量
として評価しました。
また、GNRIが91未満の栄養状態の悪い患者に対するL-カルニチンの効果も全体と比較してみました。
当院の週当たり透析時間の分布
当院で現在透析治療を受けている方の週当たり透析時間の分布です。
現在71名の方が透析治療のために通院しています。
3名の方は5−5−5−4時間の週4回19時間の透析治療を受けています。
5時間の方もたくさんいらっしゃいます。
5時間を受ける様になった方のほとんどが満足されているようです。
4時間半以上の透析時間の方も多く、全体の9割となっています。
現在、4時間透析の方は71名中7名ととなり、開院以来初めて10%を切りました。
透析時間は長ければ予後が良いことは良く知られています。
援腎会すずきクリニックでは、当院で透析を受けている患者さんの生命予後が良好で、合併症が少なく、透析後のだるさを極力無くした透析を目指しています。
慢性血液透析患者におけるレボカルニチンの有用性の検討1
先月、第57回(社)日本透析医学会学術集会に参加してきた事をブログで報告し、後日ブログでも紹介すると記載していましたが、そのままとなってしまい、1ヵ月近く経過してしまいました。
やり出さないと始まらないですね。
発表した演題は、
慢性血液透析患者におけるレボカルニチンの有用性の検討
と言う演題です。
当院では、透析患者のエルカルチン欠乏に対し、積極的にレボカルニチンの投与を行っています。
その効果について今回は発表させていただきました。
研究の背景です。
カルニチンは低分子量のアミノ酸誘導体で、細胞のエネルギー代謝、脂肪酸のミトコンドリアへの輸送、CoAによる代謝反応の制御、赤血球膜の安定化などの生理機能に必須の物質です。
透析患者では、透析治療によってカルニチンが除去されてしまうため、カルニチン欠乏が起こりやすいことが知られています。
カルニチンが心筋や骨格筋のエネルギー代謝、赤血球膜の修復に必要な物質であるため、その欠乏は心臓や骨格筋の機能、貧血の程度に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、透析者カルニチンを補充することで、
心機能の改善
筋痙攣などの筋肉症状の消失
EPO低反応性貧血の改善
などの効果があると言われています。
当院に維持透析で通院中のカルニチンの欠乏が疑われる透析者に対して、L-カルニチンを投与してカルニチン欠乏状態を改善させ、その効果について検討しました。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。