2009.03.24
診療
仕事 / 職場
その他(医療関連)

泌尿器科診療のこと

4月になって、泌尿器科のことも書かなければと考えます。
ブログって書いて1年位すると埋もれていってしまうんですよね。

昨年開院前に一度記事としましたが、再度、シリーズで泌尿器科の病気の事を書きます。

まずは、患者さんの症状を聞くことから診療は始まります。
病名ではありません。

患者さんが来院するときは、自分はどういう病気だと言って来院するわけでなく、症状を言って来院しますよね。

つまり、どの様な症状の場合、どの様な検査と治療が行われるのかが、実際に知りたいこととなるかと思います。

それで、最初にお話ししますが、おおざっぱな話になります。
多数の方は、同じ診療の方針でいけますが、症状や既往歴、飲んでいる薬などから、これはちょっと病気が違うようだと考えられた場合には、方向性が違ってきます。
そのことを踏まえごらんください。

1,血尿がでた。

2,検診で血尿があると言われた。

3,オシッコが出にくい(排尿困難)

4,オシッコが近い

5,前立腺癌の数値(腫瘍マーカーPSA)が高いと言われた。

6,背中が痛く血尿が出る(尿管結石)

7,オシッコするときに痛みがある。

以上について、シリーズで連日投稿したいと思います。

2009.03.18
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オンラインHDFについて

前回述べましたように、HDFは多くの点でHDに比べ利点が多く、非常に有用な治療法だと言われています。しかし、現状では、コストがかかる治療であり、長期間透析をやったために合併症がたくさん生じてきた患者さんなどの限られた方しか対象としていません。

これだけ有用だと言われている治療法をできるだけたくさんの患者さんに提供できないかと言う観点から考えられた方法がオンラインHDFです。
オンラインHDFは、通常のHDFで使用するサブラットと言う注射液を使用せず、透析に使用する液を直接補充液として使用する方法です。

そのため、通常のHDFに比べてオンラインHDFは、補充液が大量に置換できるメリットがあります。
HDFはたくさんろ過すればするほど効果が上がると考えられ、通常のHDFでは置換液はせいぜい多くても10リットルまででなのに対し、オンラインHDFでは50リットル以上の補液が可能です。
当院でも、一番多く使用した人で1回に72リットルという方がいらっしゃいます。

それから、前希釈オンラインHDFとすることで、不均衡が無くなり血流量を上げることができ、透析効率を上昇できます。

しかし、透析液を補充液に使用できるのは、厳重な透析液の水質管理をしている施設だけです。
通常透析液はエンドトキシンという物質で汚染されています。しかし、オンラインHDFを行うためには、細菌やエンドトキシンを測定感度以下になるまで徹底的に清浄化させなくてはなりません。

通常、エンドトキシンを防ぐエンドトキシンカットフィルターという機器を取り付けて対応しますが、根本的には透析液を作る段階からの清浄化が必要となります。

援腎会すずきクリニックでは、東レ社製の最新の洗浄消毒方法を取り入れた「トータルクリーン化システム」を導入し、徹底的に水質管理を行っています。

今回、私が援腎会すずきクリニックを開院したいと考えたのは、このすばらしい治療法を限られただけの人ではなく、透析導入間もない、まだ合併症が強く出ていない人にも提供できるようにしたいと考えたからです。
そして、『透析はつらい』、『透析はなるべくやりたくない』から、『透析をやって元気になるんだ』と思えるようになってもらいたいからです。

オンラインHDFは全国的にはかなり行われている治療法です。福島県でも最近は少しずつやられるようになってきています。
しかし、通常HDFと同じように限られた人を対象としてるのが、現状のようです。
援腎会で透析を受ける患者さんについては、希望する患者さんすべてに提供する準備をしています。

以下に最近言われているオンラインHDF利点を示します。

1.透析患者さんの予後を改善させる。長生きができる。
2.心臓への負担が少なく、血圧の低い方に有効である。
3.腎臓にもやさしいため、尿が出る期間が延長する。
4.炎症マーカーが減少して、酸化ストレスが改善する。
5.貧血が改善する。
6.栄養状態が良くなる
7.アミロイドーシスが改善する。

オンラインHDFとは、 透析者の人生の質を大きく高め、寿命も延ばすことが証明されている治療なんです。

2009.03.18
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血液ろ過透析(HDF)について

みなさん。血液ろ過透析(HDF)とは、どんな透析かご存じですか。

透析は、血液と透析液の間にある半透膜を介して、その濃度差で物質の移動がおこり、尿毒素が血液から透析液に移動して血液をきれいにする方法です。
ただ、その場合には半透膜の孔を通りやすい小さな物質しか除去できません。

透析が始まった頃は、小さな物質だけを抜くだけでも効果があったのですが、長期間透析ができるようになると、もっと大きな物質を抜かないとずっと元気でいられないことがわかってきました。その大きな物質の代表が透析アミロイド症の原因物質であるβ2マイクログロブリンです。

 大きな物質を抜く方法で最も簡単なのは、孔を大きくすることですが、重要なタンパクまで抜いてしまいます。そのため考えついたのが、血液と透析液の間で水を大量に移動させることで、水と一緒に移動する性質の大きな物質を移動させて除去する方法です。これを血液ろ過と言います。

血液がダイアライザーに入る前に点滴を多量に入れてその分の水分を引っ張る前希釈という方法と、引っ張った後に点滴を入れる後希釈という方法があります。
濾過だけでは小さな物質の除去が悪くなるので、ろ過と透析を併用した血液ろ過透析が主流です。

具体的には、透析で2kg増えてきた方の場合は、2kg分の水分を取り去らなければいけないので、ダイアライザーを通してポンプで2Kg分水を引っ張って取り去りますが、HDFを行うときは、この除水に加え点滴をたとえば8L行います。そうすると、ダイアライザーを通しては、2L+8Lの合計10L水を取り去ることになり、それに伴い、大きな物質が除去できることになります。

説明に適した図を持っていないので、言葉では一般の方には難しいと思います。
ここまでの部分は、ふーん。と言って、流し読んでください。

それでは、HDFにはどのくらいの効果があるのでしょうか。

1.普通の透析で取りきれない老廃物の除去

β2マイクログロブリンを除去し透析アミロイドーシスを改善させる他にも、手根管症候群、心臓などの各種臓器へのアミロイドの沈着、破壊性脊椎炎などの合併症を予防し、全身の痒み、下肢のいらいら感などの不愉快な症状、不眠、色素沈着を改善すると言われています。

2.透析中および普段の血圧の安定

HDFは透析中に血圧が低下する透析困難症に有効だと言われています。そして、普段の血圧も落ち着いてきて降圧剤を減らせる場合があります。

3.貧血の改善

造血阻害因子の除去により貧血が改善すると言われています。

4.食欲の改善

不必要な老廃物が除去されることで、調子が良くなり多くの方が食欲が出てくるといわれます。

これだけ効果があると言われているのに、HDFが主流の方法とならない理由はなぜなんでしょうか。

HDFには専用の透析機械が必要であり、高価なため、普及していないという理由がまず1つです。
そして、ボトルタイプの点滴を大量に使用するので、そのコストがかかり、現在の医療費削減の方向では、全ての患者さんに濾過透析を行ってしまうと、やり過ぎであると見なされてしまう可能性があり、施設の中でも限られた患者さんに対し行っているのが現状です。

そのため、透析をはじめてからの期間が長い患者さんで、手根管症候群、異所性石灰化による関節痛があってアミロイドーシスなどの問題を抱えている方や透析困難症で透析中に血圧が下がってしまう方だけに、HDFを行うことが多いのです。

2009.03.18
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目指す透析とは

透析は「腎臓の働きを補う治療」です。
それでは「一回4時間×週三回、血流量200 ml/分」の平均的な透析が、腎機能をどれだけ補っているでしょうか。

透析が腎臓の代わりとして出来るのは、尿素の様に小さく抜けやすい毒素について、本来の腎機能の10%強程度と考えられます。そして、尿素より大きな尿毒素は、さらに抜けにくいのです。
なおかつ、血液透析には「間欠的な治療」という欠点もあります。

さらに、広い意味の腎機能のうち、腎臓の内分泌機能は、全くといっていいほど補えていません。つまり腎機能を十分に補うのが「至適透析」であるのなら、現在の平均的な透析は、明らかに「透析不足」です。

そして、この平均的な透析、「一回4時間×週三回、血流量200 ml/分」の透析の成績は、5年生存率が60%程度、10年生存率が40%程度です。患者さんの平均年齢が65歳とすれば、患者さんの4割の方は70歳にならずに亡くなられるという状況を示しているのです。これは十分な治療成績といえるのでしょうか。

「二十年、三十年透析で元気に生きること」を想定し、二十年、三十年後の種々の透析合併症が出てくる様な時期に「最初からもっと抜いておけばよかった。」と患者さんが思っても、体に蓄積した尿毒素はもう抜けませんし、傷んだ体は元に戻りません。正に「後悔先に立たず」です。

透析治療に慣れる時期、あるいは透析生活に慣れる時期、そういった期間だけ限定で、多少緩やかな透析をすることは必要です。

 しかし、その透析患者さんが「二十年、三十年透析で元気に生きること」を前提とした維持透析をするのなら、現在の血液透析の欠点は、一回4時間という比較的短い時間に体液の量・性状が急に変化することです。これを少しでも生体腎に近づけようとするならば、「頻度を高くすること」が最も大事です。

しかし、現在の保健医療では月に15回以上の透析は認可されていません。それならば、「一回透析時間を長くすること」が重要です。

3時間では全然足りません。
4時間でも足りません。
やはり、5時間以上の透析を目指して行うべきでしょう。
長い時間の透析を行うことがいいことはよく知られていることです。

当院でも、開院以来時間延長のメリットを患者さんたちに説明してきましたが、なかなか多くの方が時間延長は難しいと話されます。
やはり、長い時間寝ていることが苦痛のようです。
時間延長を勧めている方には、なるべく透析中座って過ごしてもらい、テレビを見たり、本を読んだりして過ごすよう話しています。

時間延長が難しい方でも、少しでも効率を上げる治療を提供できたらと考えています。それで、透析時間の次に考えることは、透析量を増やすことになります。
透析の血流を上げて、血液濾過透析を行うことが透析量を上げる一番の方法かと思います。

そこで、当院で行っているのが、大量補液をダイアライザーの前で行うことで不均衡が少なくなり、血流量を上げて透析量を上げることが出来る前希釈オンラインHDFです。

オンラインHDFは、β2MGを代表とする大きな物質を効率良く除去することでき、『透析することで元気になる』が実現できると考えています。

当院では、可能な方は全てオンラインHDFを行っています。

2009.03.18
診療
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まず、透析の考え方です。

最初に掲げたのが、透析診療における三つの柱です。

1. 透析専門医がじっくり時間をかけて診療いたします。
2. 高度な水質管理を行い、全台オンラインHDF対応です。
3. 『透析をやって元気になろう』を目指します。

透析の診察は、月一回は診察室での時間をかけた診察を行いたいと考えています。
と書きました。

これは、開院当初より現在まで続けています。
一時期、月2回の面談を行っていましたが、透析が終わった後に少し待ってもらったりするので、やっぱり月1回でやろうと言うことで、現在は月1回の面談をしています。

すごく落ち着いていて、特に話すことも無い方もいらっしゃいますが、レントゲン写真やデータをきちんと説明し、困っていることが無いかを確認する良い時間になっています。

月1回では、栄養指導も月1回行っています。それは、とても重要なことだと思っています。

初回は、個室でじっくり時間を取って行いますが、その後は透析中のベッドサイドで、直近の検査データも含めて、管理栄養士が説明してくれます。

患者さんのデータや状態は刻々と変わってきます。
当院では、糖尿病の方が多いのでなおさらです。
数年前にやった栄養指導が、現在の状況に合っていることの方が珍しいのでは無いでしょうか。

次の透析液清浄化ですが、この点については、当院の優秀な技師たちに任せっぱなしです。
透析液が清浄化されていると言うことは、透析治療の土台になることですので、絶対に守らなければならないことです。

もちろん、清浄化をきちんと確認するために、エンドトキシンおよび細菌検査を月1回欠かさず行っています。
これは、ホームページや更衣室前の掲示板に載せていますが、きちんと清浄化されていることを示すことは大切だと思います。

これによって、全台オンライン濾過透析可能となっています。
それで、全ての患者さんに大量置換の濾過透析が行えるようになってます。

大量置換オンラインHDFの効果だと思いますが、当院に移られた患者さんの多くの方が、かゆみが良くなったとおっしゃっています。
そして、半年以上観察した患者さんのほとんどの方が心胸比が小さくなっています。

リンの値も下がり、炭酸カルシウムの内服量が減ったことは、昨年の福島腎不全研究会で報告させていただきました。

オンラインHDFの利点であるアミロイド症に対する効果は、長期透析の患者さんがいないためによく分からないのですが、透析が終わって帰られる患者さんと、これから透析を受ける患者さんの区別がつかないほど、透析後の患者さんたちは元気に帰って行きます。

もちろん、オンラインHDFの最大の利点である透析量は、全ての患者さんで増加することが出来ています。

当院に転院してきた患者さんは、全ての方が『元気で長生き出来る様になる』ということが、現在のクリニックの目標です。

 

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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