「透析クリニックが被災して」を口演してきました。
『透析クリニックが被災して』 を20回に分けて記事として、厚かましくも、スライドを使ってお話に伺いますと書き込みましたところ、早速、相模原市の橋本クリニック、櫻井先生が声をかけて下さいました。
櫻井先生と言えば、先日行われた第17回日本HDF研究会で大会顧問をされ、HDFに関しては第一人者のような方です。
とても恐縮しましたが、ここは頑張りどころと考え、10月9日の日曜日に、相模原とその周辺地区透析談話会で、「透析クリニックが被災して」のスライドを口演させてもらいました。
この会は、相模原周辺で透析に従事している先生、技師さん、看護師さん達向けの談話会です。
講演は4つあり、先ず最初は北里大学の小久保先生が、透析での物質除去についてお話されました。
とても内容が高度でしたが、非常に解りやすくお話して下さいました。
二つ目の講演は、北里大学泌尿器科の石井先生が、北里大学で行っている腎移植についてお話して下さいました。
東京では、女子医大が有名ですが、北里大学も女子医大と肩を並べるくらいの移植を行っており、素晴らしい成績を残していると知りました。
そして、3番目に僕が話させてもらいました。
以前、製薬会社で一度同じ内容を話させてもらいましたが、その時は1時間かけてゆっくり話した内容です。
かなり、スライドはコンパクトにしましたが、それでも30分で終わらせるには、ちょっと忙しくなってしまいました。
何とか伝えたい事は伝えられたのではないかと思いますが、まだまだ改良の余地は有りそうです。
最後に、北里大学腎臓内科教授の鎌田貢壽先生の講演が有りました。
同じ震災の話でしたが、やはり年期が全く違うと言う印象です。
当たり前ですが、鎌田先生の講演を聞くと、ぼくのはやっぱり口演くらいにしておかないといけないのではと思います。
これは、質問にお答えしている時の写真を撮っていただいた者です。
どのような質問かというと、もっとたくさん要介護の方がいるときに被災したらどうだったでしょうかと言う質問でした。
今回は15名の患者さんがいるなかで被災しましたが、介護が必要な車いすの方は1名だけで、その方は僕が担いで階段を下りましたと言う話をしたからです。
その時は、想像したくないとお答えしてしまいました。
本当は、想像はしたく無いですが、多数の要介護の患者がいてたとえ時間がかかっても同じ事をしたでしょうというのが、質問の回答だったと思います。
やるしかないでしょうね。
市内にあり、2棟の片方が全壊した星総合病院では、5階の連絡通路が揺れで落下してしまいました。
それでも、職員は歯を喰いしばって患者さんを脱出させました。
5階では渡り廊下を見ると空が見える状況ですので、本当に怖かったと思います。
車いすの方は、エレベーターが止まっていてもみんなで担いで行けば階段を下りることは出来ます。
当院でも、震災でエレベーターが使えなかった間は、車椅子はみんなで担いで持ち上げました。
怖いけど、やらなければならない時には歯を食いしばって頑張れるのが我々日本人だと思います。
と、最後はかっこよくまとめて終わりにいたします。
追伸)
冷静になって考えてみれば、当院は耐震問題が起こってから改正された建築基準法を郡山で一番にクリアしたクリニックです。
震度7まで耐えられますので、本当は逃げる必要も無いのです。
β2マイクログロブリンの後値
β2マイクログロブリンの前値と除去率を書きました。
せっかくなので、後値も掲示します。
目標は5以下ですが、おおむね10以下となっているので、まあままの結果です。
1人だけ20以上の方がいます。
この方は、他の全ての膜でショックを起こしてしまい、積層型のダイアライザーのみ問題無かった方です。
やはり積層型のダイアライザーはβ2マイクログロブリンの抜けが悪いようですが、他のダイアライザーが使用出来ないので仕方がありません。
この方には時間延長を勧めています。
たまに本業の事も書きます。
最近、放射線の話ばかりしているので、たまには本業の話をしなければなりません。
先日のHDF研究会でRestless Legs症候群を改善させるためには、α−1マイクログロブリンの除去率を35%以上とすると言う話が有りました。
当院ではどうだろうと思い、現在いる70名で除去率を計ってみました。
5型のダイアライザーを使用して、5時間透析、血流400ml/minの前希釈オンラインHDFの方が35%を越えていますが、やはりα−1マイクログロブリンを十分に抜くのは大変なようです。
それならば、β2マイクログロブリンはどうかという事で、年に数回行っている測定で除去率を見てみました。
70−75%抜けている方が一番多かったようです。
90%以上の方がいてちょっとビックリでした。
除去率も重要ですが、前値が低ければ除去率も下がります。
前値の目標は20と考えていますが、なかなか難しいようです。
少なくとも20台を目指しています。
前値のグラフです。
おおむね30未満なんですが、40以上の方がいました。
当院でも4時間透析の方が20%近くいます。
積層型の人もいますし、アルブミンの漏出量を減らすような膜を使っている方もいます。
そのような方かなと思ったのですが、なんとビックリ。
実は、α−1マイクログロブリンの除去率を35%以上の方でした。
この方は、5型のダイアライザーを使用して、5時間透析、血流400ml/minの前希釈オンラインHDFの方です。
除去率は90%超えています。
前値が高く、後の値が低いので除去率が大きくなっています。
ちなみに、前回までのβ2マイクログロブリンはどうかというと、平均すると25くらいの数値でした。
なんで今回だけ高いのだろう、水は綺麗なのに、なんて考えていつも仕事しています。
たまに、放射線の事も考えていますが、多くの時間は患者さんの事を考えて診療を行っています。
ちょっと本業の事を書かせていただきました。
福島の医師、12%が自主退職…原発から避難?
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110928-OYT1T00658.htm
東京電力福島第一原発事故後、福島県内の24病院で常勤医師の12%に当たる125人が自主退職していたことが、県病院協会の調べでわかった。
原発事故からの避難などのためとみられ、看護師の退職者も5%に当たる407人(42病院)に上った。県内の病院では一部の診療科や夜間救急の休止などの影響が出ている。
調査は7月下旬、県内の医師らの勤務状況を調べるため、全139病院のうち、同協会に加盟する127病院を対象に実施。54病院から回答を得た。
主な市町村で、原発事故前の医師数に占める退職者の割合が高いのは、南相馬市の4病院で46%(13人、警戒区域の1病院1人を含む)、いわき市の5病院で23%(31人)、福島市の6病院で9%(41人)、郡山市の4病院で8%(25人)。
看護師では、南相馬市の4病院で16%(44人、警戒区域の1病院2人を含む)、いわき市の7病院で8%(113人)、福島市の9病院と郡山市の6病院は4%でそれぞれ68人、54人減少した。
(2011年9月28日14時33分 読売新聞)
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これが福島の現状です。
浜通りは別として、福島や郡山では子育てをしている若い医師を中心に退職が増えています。
しかも、妻子を県外に避難させて仕事をしている医師もたくさんいます。
ずっと妻子と離れた状態でいることは辛いです。
放射線量が下がらなければ、家族が一緒に生活する為にもっと医師は県外に出て行ってしまいます。
しかも、研修医が福島での研修をさけていく可能性も有ります。
一番にやられるのは救急です。
これは、問題化してからでは遅いことです。
何とかして欲しいといつも考えています。
透析クリニックが被災して 終わり
特集 『透析クリニックが被災して』 を20回に分けて記事としました。
このほかにも原発事故後の対応についてなどもスライドとして作成しましたが、あまりにも長くなってしまい、間も空いてしまいましたので、今回のシリーズは一度終了といたします。
先日、某メーカーさんの勉強会で、この『透析クリニックが被災して』のスライドを披露させていただきました。
1時間くらいの話となりましたが、おおむね好評だったのではと考えています。
今回、震災時の状況、緊急離脱について、震災の対策とその検証、震災後に必要なインフラについて、透析クリニックの視点からまとめてみました。
最初は、これほどの経験をしたのだから、今後の事も考えて形に残しておかないと行けないと思いスライドを作りました。
でも、沢山の応援を頂いて、是非皆さんに今回の被災に際しどの様に対応したかを示すことで恩返しをしなくてはと思い、ブログで紹介いたしました。
もし、ご希望の方がいらっしゃいましたら、あまりあまり遠くで無ければこのスライドを使ってお話に伺います。
希望される方がいらっしゃいましたら、クリニックホームページの問い合わせにでも書き込んで下さい。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。