透析室のベットが30床になりました。
昨日の午後、クリニック透析室では、最後のベット及びコンソール(透析装置)の搬入が行われました。
これまで26床でしたが、最後に4台のベッド及びコンソールが入り、30床となりました。
開院当初は15床からスタートしました。
満床になりそうになると徐々にベッドを増やしてきたのですが、全てのベッドが入った風景を見ると更に心引き締まる感じです。
全てのベットとコンソールが入った風景です。
もっともっと頑張らねばと思った昨日でした。
追伸)
機械の設置のため遅くまで残ってくれたスタッフにもお礼を言いたいです。
HEARTこおりやま7月号
健康そして福祉を見つめる情報誌 HEARTこおりやま7月号の、Q&Aコーナーに前立腺肥大症の検査についての記事を載せてもらいました。
最近では、前立腺肥大症や過活動膀胱の治療が広まっていて、一般内科の先生からも処方されるようになっています。
その場合には、泌尿器科の検査を行わないで、内服となる事がほとんどだと思います。
当院には、薬は出されているがなかなか症状が改善しない方が受診されます。
そのような方への情報として、泌尿器科では前立腺肥大症を疑ったときにどのような検査を行うのか、記事として書きました。
興味が有る方はご覧になってください。
高透析量透析を行う上での問題点3
高透析量のオンラインHDFを開始してから10ヶ月間のGNRIの変化を示します。
GNRI (Geriatric Nutritional Risk Index)は、訳すと〝高齢者の栄養リスク評価〟です。
GNRI=14.89×血清アルブミン値+41.7×(現在の体重/標準体重)
の計算式で数値が出ます。
栄養評価の方法としてはMISを始めいくつかの方法が有りますが、透析患者さんでは、多くの方が毎月アルブミン値を測定していますので、簡便に評価できますので、使い安い評価法でも有ります。
一般的な評価基準は、
82-91 中等度栄養障害リスク
92-98 軽度栄養障害リスク
98< リスクなし
と言う分類ですが、
管理栄養士の山田先生が透析患者さん向けの指標として発表した91.2以上をリスクなし、未満をリスクありと言う評価を今回用いてみました。
GNRIは94.4から97.9と上昇しました。
ただ、期間が10ヵ月でしたので有意差は出ませんでした。
10ヵ月後に91.2未満の5名について注目してみました。
これは、高透析量オンラインHDFを開始したときにどの様な背景が10ヵ月後の栄養障害リスクに影響するか検討した結果です。
GNRI91.2以上の栄養リスクなし群と91.2未満の栄養障害リスクあり群を比較し、10ヵ月前の状況がどうだったかを検討しています。
p値は、有意差が有ったものを赤にしました。
糖尿病ありなしは全く差が無く、年齢は栄養リスクあり群が高いですが、差は出ませんでした。
透析歴、採血結果である高感度CRP、β2MGは差が有りませんでした。
蛋白摂取量の指標であるnPCR(標準化蛋白異化率)やアルブミン値は栄養リスクあり群で低かったですが、こちらも差が出ませんでした。
差が出たのは、血清リン値、ドライウエイト、そして開始時のGNRIでした。
どうしても食べられないとリン値は低いので、栄養障害の指標となります。
また、GNRIはアルブミン値と体重から算出しますので、体重が増えていかないとGNRIが低いままとなります。
腎不全でもあきらめない―強く明るく生きる三二人の物語
先日、本屋さんで医学書コーナーを見ていたのですが、
『腎不全でもあきらめない―強く明るく生きる三二人の物語』
と言う題名の本を見つけて、面白そうなので読んでみました。
元NHKにアナウンサーで腎臓サポート協会理事長の松村満美子さんという方が書かれています。
腎臓サポート協会が、「そらまめ通信」と言う会報を出しているのですが、この中に「一病息災」と言うコーナーが有ります。
「一病息災」では、毎回松村さんが患者さんと対談した内容が書かれています。
今回の本は、「一病息災」に書かれた32人の対談を1冊の本にまとめたものです。
そして、追加として2007年時点での対談者の現状も書かれています。
まず、保存期で頑張っている方たち
そして、20年、30年血液透析を受け続けている方たち
腹膜透析を受けていたり、血液透析を併用した腹膜透析を受けている方たち
在宅血液透析を受けている方たち
腎移植を受けた方たち
30年以上透析を受けてきて、自己管理がしっかりできている方から、「自己管理が大切、分かってるんですけどね」なんて言っている三遊亭円楽師匠の話も出ていて、味わいが有りました。
円楽師匠も昨年亡くなられましたが、亡くなられた病気は癌ですし、しかも76才まで10年近く透析を受けていますので立派です。
皆さんのインタビュー記事が淡々と書かれていますが、読みやすいのでどんどん読んでいってしまいました。
異論反論有るかもしれません。
透析治療を選ぶときに、その患者さんにとってどれが一番いい治療法なのかはとても難しい問題です。
我々は、自分の治療法が一番と考えて治療を行っていますが、その人の立場、状況によっては違った透析方法がいい場合もあります。
治療法が決まって援腎会すずきクリニックに来てくれた方に対しては、私が考えるできるだけの治療を提供したいと考えています。
これから透析がはじまる方や、治療方法で迷っている方は、一度この本を読んでみてもいいかもしれませんね。
高透析量透析を行う上での問題点4
最も差が出たのが開始時のGNRIです。
それで、10ヵ月前の開始時GNRIが91.2以上と91.2未満で分けてグラフトしてみました。
そうしたところ、91.2以上では、13名中13名の全ての患者さんがGNRI91.2以上で栄養障害リスクなしでした。
しかし、開始時91.2未満の10名では、高透析量オンラインHDFを行うたびに栄養状態が良くなって、10ヵ月後にGNRI100まで上昇している人もいますが、10名中5名は10ヵ月後もGNRI91.2未満のままです。
つまり、高透析量オンラインHDFを開始する時点で注意すべき点は、GNRI91.2の栄養障害が有る患者さんの中には、栄養障害が改善しない方が半数に見られるので注意が必要だということになります。
今回は山田が提唱している透析患者のGNRIの判定で91.2未満を栄養障害リスクしている分類を用いました。
10ヶ月間高透析量オンラインHDFを行ってみましたが、栄養障害が見られない患者さんの栄養状態が悪化した方はいませんでした。
しかも、栄養障害リスクありの患者さんでも、リスク無しに改善した患者が半数に見られました。
これは、高透析量オンラインHDFを行うことで、レプチンなどの食欲抑制物質が除去されて、食欲が増して栄養状態が改善していくからだと考えます。
しかし、栄養状態が悪い方の半数は加齢や合併症のため元々食べられない方なので、栄養状態が改善しないのではないかと考えました。
高透析量オンラインHDFを行う場合は、栄養状態が改善しない患者さんががいないか注意深く観察して、危ないと思ったら透析方法の変更を検討する必要があります。
結語です。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。