透析総会行ってきました。1
今週の木曜日午後、福島空港から出発し、金・土・日と透析総会に出席し、昨日日曜日の夕方に郡山に戻ってきました。
金曜日の午前中には、『オンラインHDFを併用した高透析量透析での栄養に関する検討』と言う題名で発表させていただきました。
演題発表時も多くの質問をいただきましたが、セクション終了後のロビーでも数人の先生方から質問があり、反響の大きさを感じました。
分かる範囲でお答えできたかと思いますが、自分のやっている仕事が少しずつでも認められている様な気がしてとてもうれしかったです。
話は変わりますが、今回の透析総会に出席して思ったことは、
『なんなんだよ。何が正しいんだよ。』
ということを感じた総会でした。
長時間透析や隔日や週4回透析、家庭透析のセッションで発表を聞いていると、5時間6時間は当たり前の透析で、オーバーナイト透析だとか、連日頻回透析の話とかが話題です。
そうすると、最終的にはいかにリン値が下がらない様にするかとかの話になっています。
患者さんにとにかく食べる様に。リンが高いまめなどをたくさん食べるように。
なんて、話題がたくさん出てきます。
そのセッションが終わり、別のセッションに出てみると、
『現在の医療状況では、週3回4時間の透析以上の透析をすることは不可能です』
なんて、普通に発言されています。
週3回4時間血流200というのが大前提で話がされており、透析量を増やすという議論は全くされないのも不思議です。
そして、栄養のセッションでは、透析導入後も0.5g/kgくらいの蛋白制限をすると、透析の回数が減らせるんだとかの議論がなされています。
片方では、とにかく高タンパクの食事をとりなさいと言う演題を発表していて、もう片方では、できるだけ蛋白を減らしなさいと行っているのがおかしいですよね。
普通は、有る程度本質というものがあり、多くの人からコンセンサスを受けていて、その基準を元に議論がされるのが普通ですが、ここでは大前提が全く違ったり、考え方が180度違ったりしていて、議論にならない考え方の大きな違いも感じました。
本当は、透析はやればやるほどいいという事は分かっているのでしょうが、都会で地価が高い所で透析を行っている施設では、コスト的に時間延長は難しいのでしょう。
また、地方でも医師不足で疲弊しているような所でも同じような考えとなっているのかもしれません。
だから、そのような状況を完全に否定する事は出来ないんですよね。
なかなか難しいと思います。
まあ、皆さん自分の信念に基づき、患者さんがいい状態になるように考えての上での発表かとは思いますが。。。
第55回日本透析医学会総会
明日から神戸で、第55回日本透析医学会総会が開催されます。
今回は、クリニックの透析治療の成績を演題として発表する事としました。
明日6月18日金曜日、9:30から第2会場 で、
【O-0273】 オンラインHDFを併用した高透析量透析の栄養に対する検討
と言う演題で発表します。
そのため、本日午後の飛行機で移動します。
日曜日には学会より戻りますので、先日の福島腎不全研究会の演題とともにブログで紹介したいと考えています。
エリスロポエチン製剤 使用上の注意の改訂
先日、エリスロポエチン製剤を販売しているメーカーの担当者が来院し、使用上の注意の改訂が有った事を伝えに来ました。
改訂の主な部分はいかの通りです。
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腎性貧血の治療におけるヘモグロビン濃度に関連して、以下の臨床試験成績が報告されている。本剤投与中はヘモグロビン濃度あるいはヘマトクリット値を定期的に観察し、学会のガイドライン等、最新の情報を参考にして、必要以上の造血作用があらわれないように十分注意すること。
(1)心不全や虚血性心疾患を合併する血液透析患者において、目標ヘモグロビン濃度を14g/dL(ヘマトクリット値42%)に維持した群では、10g/dL(ヘマトクリット値30%)前後に維持した群に比べて死亡率が高い傾向が示されたとの報告がある。
(2)保存期慢性腎臓病患者における腎性貧血に対する赤血球造血刺激因子製剤による治療について、目標ヘモグロビン濃度を13.5g/dLに設定した患者注)では、11.3g/dLに設定した患者に比較して、有意に死亡及び心血管系障害の発現頻度が高いことが示されたとの報告がある。
(3)2 型糖尿病で腎性貧血を合併している保存期慢性腎臓病患者において、目標ヘモグロビン濃度を13.0g/dLに設定して赤血球造血刺激因子製剤が投与された患者注)とプラセボが投与された患者(ヘモグロビン濃度が9.0g /d Lを下回った場合に赤血球造血刺激因子製剤を投与)を比較したと ころ、赤血球造血刺激因子製剤群ではプラセボ群に比較して有意に脳卒中の発現頻度が高いことが示されたとの報告がある。
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(1)についてですが、数年前から大規模な調査によって報告されてきています。
透析前値でヘモグロビン濃度を14g/dLですと、透析後では17g/dLくらいまで上がる可能性があります。
若くて元気な透析者の方達でしたら問題ないでしょうが、合併症を持ち、動脈硬化の強い方ですと、只でさえ詰まりやすい動脈が血が濃いことで余計固まり安くなります。
そのような観点からももっともな事だと思います。
(2)は2006年11月16日のNew England Journal of Medicineに発表されたchoir試験のことです。
目標ヘ モグロビン値を11.3 g/dLとしてエリスロポエチンの投与を受けた患者に比べ,目標ヘモ グロビン値を13.5 g/dLとした患者で重篤かつ生命を脅かす心血管系 合併症のリスクが有意に増加したと言う試験です。
しかし、これはこの試験にエントリーした患者さんたちに心・血管系合併症を持つ患者が非常に多く含まれており、日本の患者背景とは異なっていて、簡単にCHOIR試験の結果を日本人に当てはめることはできないと言っている研究者もいます。
しかも、Gouvaらは、早期にエリスロポエチン製剤を使用してヘモ グロビン値を13 g/dLに維持した群が、9 g/dL未満のみにエリスロポエチン製剤を使用してヘモ グロビン値が10 g/dL程度となるように維持した群に比べ、有意に腎保護効果及び生命予後効果が有ると報告しています。
米国のFDA(食品医薬品局)が、米国で最も大規模に行われたCHOIR試験の結果を重視して、Hb値の上限を12 g/dLにとどめるように勧告しことが影響し、今回の使用上の注意の改訂となったようです。
もっと上げた方がいいのではないかと言う考えもありますが、今回の改訂により、保存期腎不全の治療で目標ヘモグロビン濃度は11g/dLくらいとなったと認識した方がいいようです。
IgG4関連疾患
今日は腎疾患の勉強会が有りました。
そこで、『IgG4関連疾患 』と言う病気の話がありました。
難しい病名ですが、実は泌尿器科に関連が有る疾患でしたので、ちょっと書いてみます。
IgG4関連疾患は、免疫グロブリンであるIgGのサブタイプである
IgG4が血清中で高値を示して, IgG4陽性形質細胞 やリンパ球が膵臓,涙腺,唾液腺,後腹膜,腎臓などに浸潤し, 臓器の腫大や炎症や組織の線維化を来たす全身性疾患と定義されています。
治療はステロイド療法が有効だということです。
自己免疫膵炎, 糖尿病, 原発性硬化性胆管炎類似の胆管病変などを呈する他に、泌尿器科で時々遭遇する後腹膜線維症なども起こす全身性疾患だそうです。
後腹膜線維症は後腹膜の線維化と炎症起こす疾患であり、原因が特定できない疾患と考えていました。
これまでにも時々、原因不明の両側水腎症に我々は遭遇して、原因となる癌などの病気が見つからない場合には、後腹膜線維症と言う病名でステロイドによる治療を行っていました。
我々が後腹膜線維症として治療してきた一部にはIgG4関連疾患が含まれている可能性があるようです。
今後は、後腹膜線維症の中にはIgG4関連疾患が含まれていることを知りましたので、後腹膜線維症を見かけたときにはガンマグロブリンをチェックする必要が有ると知りました。
開業してからは、泌尿器科以外の病気の勉強をする機会が増えています。
違った視線で見ることで、今まで自分が考えてきた疾患像がころっと変わることが有るかもしれません。
最近忙しいです。
援腎会すずきクリニックでは、しっかり透析を実践して頑張っています。
具体的には、透析時間を4.5時間以上にすることと、血流を毎分300ml以上として透析量を増加させ、さらに大量置換オンラインHDFを併用することです。
昨年も、福島腎不全研究会でこれらの事を発表しましたが、今年も福島腎不全研究会や透析学会総会、そして東北腎不全研究会で発表を予定しています。
今週の土曜日、6月12日に第82回福島腎不全研究会が郡山市で行われ、
『高透析量透析を行う上での問題点
〜しっかり透析を行う上で注意すること〜』
と言う演題で発表いたします。
まあ、25日までに東北腎研の演題を出して、25日夜は大至のちゃんこライブで打ち上げしようと考えております。
来週は、6月18日金曜日に神戸で行われる第55回日本透析医学会総会に
『オンラインHDFを併用した高透析量透析での栄養に関する検討』
と言う演題で発表いたします。
似たような演題となってしまいましたが、しっかり透析と栄養管理が現在の目標であり、そのことに則した演題となっています。
発表後、ブログにスライドを載せたいと思います。
さらに、その次の週末6月25日(金)が東北腎不全研究会の演題締め切りで、現在かなり忙しい状態です。
なかなかブログの更新が出来ないのですが、学会終了後には学会報告をきちんと行いたいと思いますので、ご容赦ください。
東北腎研の演題を25日までに提出し、25日のちゃんこライブに行くのが現時点での目標です。
頑張ります。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。