2008.04.06
診療

過活動性膀胱(OAB)について

昨日の記事で出てきた過活動性膀胱(OAB)について少しお話ししましょう。
過活動性膀胱は最近名前が付けられた病気で、以前は不安定膀胱とも言われていました。

過活動膀胱の症状は3つです。
1. 尿意切迫感〜急にトイレに行きたくなり、我慢することが難しい。
2. 頻尿(夜間頻尿)〜日中8回以上トイレに行き、夜間も1回以上尿意で起きる
3. 切迫性尿失禁(尿漏れ)〜尿意切迫感が強く、トイレまで我慢できずに尿が漏れてしまう。
これらの症状のうち、尿意切迫感だけでも、過活動膀胱と診断されます。

最近の調査では、日本の40歳以上男女の8人に1人が、過活動膀胱の症状を持っていることが分かっており、高齢になるほど頻度も高くなり80歳代では3割以上の方が過活動膀胱を持つと言われてます。

原因ですが、脳血管障害、パーキンソン病や脊髄の障害などの「神経因性」と、前立腺肥大症や骨盤底筋のトラブル、加齢、そして原因不明なものを含めた「非神経因性」があります。そして、原因の分からないものが一番多いです。

治療法は、抗コリン剤の内服が非常によく効きます。しかし、「口の乾き」「便秘」などの副作用が起こる場合が有ります。また、前立腺肥大症の方に安易に抗コリン薬を処方すると尿が出にくくなりますので、処方には注意が必要です。

薬物療法以外でも、膀胱訓練や骨盤底筋を鍛える骨盤底筋体操などの運動療法も有効です。さらには、低周波治療器を使って骨盤底筋の収縮力を強化する治療法もあり、健康保険が適応されています。
詳しくは専門医にご相談ください。

以上、過活動性膀胱についての説明でした。
かなり困っている方が多いのですが、本当に来院して薬を内服することで非常に良くなることが多く、困ったら特に泌尿器科でなくてもかまいませんので、医師にご相談ください。

 

2008.03.30
診療

7,オシッコするときに痛みがある。

今日で泌尿器科の診察シリーズは最後となります。
今回は、尿路感染症のお話です。

女性では膀胱炎。男性では尿道炎、膀胱炎、前立腺炎、精巣上体炎です。
ちなみに膀胱炎がひどくなって、尿管を逆流して腎臓まで炎症が及ぶと腎盂腎炎です。
腎盂腎炎、前立腺炎、精巣上体炎は熱がでますが、尿道、膀胱は管や袋なので、菌が粘膜の中の方まで及ばないので熱が出ません。

それで、女性は基本的に簡単です。
ほとんどが単純性膀胱炎です。オシッコの検査をして、オシッコが汚れていれば、抗生物質を飲んで、水分を沢山取れば直ります。
ただ、検尿をきちんと取れたかどうかがくせ者です。
女性の場合、きちんとオシッコを取らないと、膀胱尿がきれいでも、外陰部の雑菌がオシッコに混ざり、検尿でかなり汚いオシッコの結果になる場合があります。
どうしても判断が難しい場合は管を使ってオシッコを取る必要が出てきます。

男性では、若年者か高齢の方かで全然違ってきます。
基本的に、若い男性では前立腺肥大症が有りませんので、尿が汚れていれば、それは尿道炎のことが多く、性感染症を考えます。
淋病、クラミジア感染などで、放っておくと不妊症になる場合もあるますので、きちんと直るまで治療を行う必要が有ります。

高齢男性は、前立腺肥大症による排尿障害があって、それが原因で膀胱炎を起こしている可能性が高くなりますので、抗生剤による治療とともに、排尿障害の治療を開始する必要が有ります。

高齢男性で尿が汚れる場合は、泌尿器科専門医の診察を受けることをお勧めします。残尿がないかどうかの検査が必要です。
もし、残尿が一定以上多い場合は自己導尿と言って、管を使って、1日数回自分でオシッコを抜く必要が出てきます。

残尿が非常に多くて苦しんでいる患者さんに、この手技を覚えていただくと、『こんなにすっきりしたのはどのくらいぶりだろ』とたいへん喜んでくださることが多いです。
そして、内服治療がうまくいくと、重症の方以外は自己導尿を行わなくてよくなります。
以前は、重症の前立腺肥大症では、オシッコの管を尿道から入れてしまって、袋をぶら下げて歩かなければならなかったのですが、最近は、可能な方は積極的に自己導尿を勧めています。

高齢男性で膀胱炎や尿閉を起こすというのは重症なので、専門医のしっかりした診察が必要であり、しっかりとした治療により、症状は改善可能であることを知っていただければと思い、記載しました。

2008.03.30
診療

泌尿器科の診療方針について

本日から、シリーズで当クリニックでの泌尿器科の診察についてお知らせします。

『泌尿器科をどの様な症状で受診するか』

まずは、患者さんの症状を聞くことから診療は始まります。
病名ではありません。

患者さんが来院するときは、自分はどういう病気だと言って来院するわけでなく、症状を言って来院するのだと言うことです。
つまり、どの様な症状の場合、どの様な検査と治療が行われるのかが、実際に知りたいこととなるかと思います。

それで、最初にお話ししますが、おおざっぱな話になります。
多数の方は、同じ診療の方針でいけますが、症状や既往歴、飲んでいる薬などから、これはちょっと病気が違うようだと考えられた場合には、方向性が違ってきます。
そのことを踏まえごらんください。

1,血尿がでた。

2,検診で血尿があると言われた。

3,オシッコが出にくい(排尿困難)

4,オシッコが近い

5,前立腺癌の数値(腫瘍マーカーPSA)が高いと言われた。

6,背中が痛く血尿が出る(尿管結石)

7,オシッコするときに痛みがある。

以上について、シリーズで連日投稿したいと思います。

 

2008.03.30
診療

1,血尿がでた。

前回もお話ししましたが、診療中に、症状やその他の要因から、診療の方向性が違ってくる場合があることをご理解ください。

血尿には、ある日突然真っ赤なオシッコが出たと言う肉眼的血尿と、検診、人間ドックで見つかった顕微鏡的血尿があります。
顕微鏡的血尿については、次回お話しいたします。

肉眼的な血尿が出た場合、症状があるときと無いときでは、考え方が変わってきます。
背中が痛むとか脇腹が痛む場合は尿管結石。
オシッコするときに痛みがある場合は膀胱炎。
などが考えられますが、症状が無い場合でも、重大な病気が隠れていることもあります。

症状が出ないので、放置しておく人がいますが、非常に危険ですので、血尿が出たらすぐに泌尿器科を受診してください。

膀胱がんの初診時の症状で一番多いのが、無症状の血尿です。
他にも、腎盂がん、尿管がんの場合でも、血尿を初発症状とする場合があります。
血尿を放置してしまい、取らなくてもすんだ膀胱を取らなくてはならなくなった患者さんをいっぱい知っています。

この場合は、膀胱のカメラを行うことで膀胱内に病気があるかどうか確認できます。
ただ、通常行われている硬性鏡による膀胱鏡はかなり苦痛のある検査です。男性では、事前に尿道に麻酔液を入れて行いますが、かなりの苦痛を伴います。

でも、当院に来院された患者さんには、柔らかく痛みの少ない軟性膀胱鏡を使用しますので、ご安心ください。
カメラの間、本を読んで過ごしている患者さんもいるくらいです。

そして、その他に行う検査ですが、
前立腺がんの腫瘍マーカーや腎機能を見る血液検査
腎臓にできるがんや石を診るために超音波検査
尿管にがんや石が出来ていないか確認するための腎盂造影検査
オシッコのどこかにガン細胞が出ていないかを確認する尿細胞診
などがあります。

通常は、尿細胞診の結果が出るのに一週間くらいかかりますので、予約検査である腎盂造影検査を一週間後に予定して再診となります。
以上の検査でもはっきりしない場合は、逆行性腎盂造影等の詳しい検査が必要となる場合があります。

ただ、初診時の検査ですぐに病気が見つかり、入院、手術が必要となる場合には、太田西ノ内病院をはじめとする近隣の病院へご紹介いたします。

以上、今回は肉眼的血尿についてご説明いたしました。

2008.03.30
診療

2,検診で血尿があると言われた。

今回は、検診や人間ドックでオシッコに血が混ざっていると言われた場合の診療についてお知らせします。

肉眼的にオシッコが赤くなくても、顕微鏡で尿を観察し、血液の成分である赤血球が正常よりも多く出ている場合を顕微鏡的血尿と言います。
正常は、顕微鏡の強拡大(400倍)で、1視野に4個以下です。
検診の場合は、顕微鏡等で検査せず、簡易的に尿の潜血反応を調べることが多いです。
当院は、泌尿器科を専門とするクリニックですので、来られた患者さんで検尿が必要な方は、可能な限り顕微鏡で検鏡するつもりです。

ただ、尿潜血はで3+となのに、顕微鏡であまり出ていない場合もあります。そう言う場合は腎臓で出血して、排尿するまでに赤血球が壊されている場合もありますので、一般的に潜血反応と顕微鏡検査はセットで行います。

それから、タンパクが出ている場合や、円柱という物質が出ている場合などは、腎臓病の可能性も考えます。

だんだん、書いていくにつれて、あれもこれもと欲張ってしまいますね。
それでは、本題に戻りますが、当院の診療方針として、一番わかりやすい、尿中の赤血球数で説明します。
これは、尿タンパクが出たり、オシッコが汚れていて、白血球が出たりなどの場合を除いて、純粋に血が混ざっているだけの場合ですが、検診で血尿を指摘されたほとんどの人が当てはまります。

当院で、検診血尿で行う検査は次の5つです。(追加検査は除く)
これは僕の今まで行っていた診療方針であり、先生によって違ってくると言うことを初めに言っておきます。

患者さんの負担の少ない順に

1,尿細胞診
オシッコにがん細胞が混ざっているかを見る検査。
これはオシッコを出すだけなので、痛みは全くありません。

この検査では、悪性度の高いがんは高率に見つけられますが、悪性度の低いがんは見落とす可能性があります。
初期の膀胱がんで、悪性度が高いものは上皮内がんと言って、粘膜が赤くなるだけで、超音波では発見できなく、尿細胞診で見つかることが多いです。

2,超音波検査
腎臓、膀胱、男性では前立腺を超音波(エコー)で調べます。
腎臓結石、腎臓がん、水腎症、膀胱がん、前立腺肥大症などがわかります。
尿細胞診でわからなかった悪性度の低い膀胱がんは膀胱超音波でわかる場合が多いです。

装置を身体に当てるだけですので、痛みは有りません。
おしりから入れる場合で痔のある方は痛みが出る場合が有りますので、相談ください。

また、当院では、前立腺専用の経直腸カラードップラー超音波検査装置を導入しています。おしりから、超音波プローベを挿入することで、お腹からでは観察が難しい前立腺が詳細に調べられます。カラードップラーによって前立腺に向かう血流が観察され、前立腺がんの診断の精度が高まります。

3,採血
尿にタンパクが混ざっていたりして腎臓病が疑われる場合や、高齢男性で前立腺がんを疑っている場合に行います。
また、次の腎盂造影前に腎臓の機能を確認するためにも採血します。
針を刺されるので、その分の痛みが有ります。

4,腎盂造影
造影剤という薬を点滴して、何回かお腹のレントゲン線撮影を行う検査です。造影剤が腎臓から尿管を通って膀胱に流れる状況を調べます。
腎臓結石、水腎症、腎盂がん、尿管がん、尿管結石症、尿管狭窄、膀胱腫瘍などがわかります。

針を刺して点滴するだけの検査ですが、造影剤にアレルギーが有る方が時々いますので、十分に問診を取ってから行わなければなりません。また、腎臓の機能が悪い方は造影剤でさらに悪化しますので、事前に腎機能を採血で調べる必要が有ります。
写真がきれいに写るように事前に下剤を飲んで、絶食で行いますので、予約検査になります。

5,膀胱カメラ
尿道に麻酔をした後に、内視鏡を使って膀胱内を見る検査です。膀胱がん、膀胱結石など膀胱の病気がはっきりわかります。
その他、血尿で来院された方で、血尿がどこから出ているかを調べるためにも有用です。
ただ、昨日も書きましたが、痛みがかなりある検査です。
当院は痛みの少ない軟性膀胱鏡を使用いたします。

以上が行っている検査になります。
そして、診察の時の尿検査の結果によって、行う検査を決めています。

潜血のみで赤血球が正常の時は、患者さんと相談ですが、
腎、膀胱(男性では前立腺も)の超音波検査を行います。

赤血球が1視野に5から9個では、
尿細胞診、超音波、高齢男性でPSAの採血

赤血球が1視野に10以上では、
尿細胞診、超音波、腎盂造影、高齢男性でPSAの採血

赤血球が1視野に多数(100以上)では、
尿細胞診、超音波、腎盂造影、膀胱カメラ、高齢男性でPSAの採血

となります。
血尿で来院された方には、これらの説明を書いた紙を診察前にお渡しして、検尿の結果が出るまでの待ち時間に読んでいただき、診察中にわからないことについて説明したいと思います。

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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