引き続き治療法です。
昨日に引き続いて、過活動膀胱の治療法です。
まずは、一番手っ取り早く誰でも出来るのが、 膀胱訓練です。
膀胱訓練は、尿意を感じても、少しだけ我慢しよう、最初は5分ぐらい我慢しよう。だんだん10分、15分と、我慢する時間を延ばしていくことで、おしっこを溜めることが出来るようになっていくという治療法です。
実は、僕も以前より過活動膀胱の症状があり、頻尿で急におしっこがしたくなることがよくありました。
でも、以前つとめていた太田西ノ内病院の外来は大変混雑しており、なかなかトイレに行けない状態でした。
そのため、トイレに行くのを我慢することが多くなっていたところ、自然に尿意切迫感はよくなっていました。
これは、必要に迫られてやった膀胱訓練と言うことになります。
このように、膀胱訓練は今すぐ出来る治療法ですので、一番お勧めの治療法だと思います。
そして、低周波治療器を使って骨盤底筋の収縮力を強化する治療法も、かなり有効な方法ですので、お話しいたします。
その理由は、
1,骨盤底筋体操を継続して行うのが難しいこと。
2,薬物治療が行えない方がかなりいること。
です。
尿失禁に対し、骨盤底筋体操が有用だと以前から言われています。いわゆるおしりをつぼめる訓練を一日数回行うことです。
ただ、つぼめる場所を覚えるのが難しく、なかなか習得するのが難しいと言われています。
そして、毎日忘れないで続けていくことも大変だと言われています。
そのため、機械を使ってつぼめる方法を習得する訓練を行ったり、集団で集まって一緒に骨盤底筋体操を行い効果を上げようとしているところもあります。
そのような状態ですので、外来で骨盤底筋体操のパンフレットを渡すだけでは、なかなか効果が出るようになるのは難しいようです。
低周波治療器ですと、定期的に外来通院することで、骨盤の筋肉を鍛えることが出来ますので、効果的に継続できると思います。
それから、過活動膀胱に非常によく効く抗コリン薬が、口渇や便秘などの副作用が出てしまい、使えない方がいらっしゃいます。
また、前立腺肥大症の方では、抗コリン剤を飲むとオシッコが出なくなってしまう方もいらっしゃいます。
このような方達には、副作用が全くない低周波治療器は有効な治療法といえます。
過活動性膀胱(OAB)について
以前にも一度記事にしたことがありますが、前回お話ししたウロマスターに関連した話題で、最近よく話題になっている過活動性膀胱(OAB)についてお話しいたします。
1. 尿意切迫感〜急にトイレに行きたくなり、我慢することが難しい。
2. 頻尿(夜間頻尿)〜日中8回以上トイレに行き、夜間も1回以上尿意で起きる
3. 切迫性尿失禁(尿漏れ)〜尿意切迫感が強く、トイレまで我慢できずに尿が漏れてしまう。
このような症状がある方は、過活動膀胱の可能性があります。
特に、「尿意切迫感は重要で、頻尿でしかも、急な尿意でトイレまで我慢するのがやっとです。」という人は、明らかに過活動膀胱のかたです。
だいたい、40歳以上の8人に一人は持っているという病気ですので、かなり一般的なものです。また、高齢になるほど頻度も高くなり80歳代では3割以上の方が過活動膀胱を持つと言われてます。
原因ですが、脳血管障害、パーキンソン病や脊髄の障害などの「神経因性」と、前立腺肥大症や骨盤底筋のトラブル、加齢、そして原因不明なものを含めた「非神経因性」があります。
実は、原因の分からないものが一番多い病気なのです。
治療法は、抗コリン剤の内服が非常によく効きます。
しかし、「口の乾き」「便秘」などの副作用が起こる場合が有ります。また、前立腺肥大症の方に安易に抗コリン薬を処方すると尿が出にくくなりますので、処方には注意が必要です。
薬物療法以外でも、膀胱訓練や骨盤底筋を鍛える骨盤底筋体操などの運動療法や、前回記事にしたウロマスターも有効な治療法です。
これらの薬物療法以外の治療については、長くなりそうなので、次回説明するようにいたします。
尿失禁・頻尿治療器
今日は、久しぶりに院内設備の説明です。
当院では、尿失禁・頻尿治療器であるウロマスターを装備しています。
1,日中おしっこが近い。夜もトイレに行くために何回も起きる。
2,咳・くしゃみをしたり、重いものを持つとおしっこが漏れる。
3,おしっこをトイレまで我慢するのがつらい。
4,水道で手を洗うとトイレに行きたくなり漏れそうになる。
この装置は、これらの頻尿や尿失禁などの症状を改善するのに有効な装置です。
一般的によくある尿失禁として、
・出産後に多い腹圧性尿失禁
・トイレに間に合わなくて漏れる切迫性尿失禁
・そしてその両方がある混合性尿失禁
があります。
腹圧性尿失禁が重症なら手術が有効ですが、程度の軽い場合は、なかなかよい治療はありません。
骨盤底筋体操という肛門を締めることを繰り返す運動がありますが、継続が難しいと言われています。
また、切迫性尿失禁では抗コリン剤という薬が有効ですが、口が渇く事や便秘という副作用があります。
そこで、電気や時期で骨盤にある筋肉を刺激してそのような症状を改善できないかという観点から開発されたのが、干渉低周波装置です。
原理は、下腹部とおしりに貼った電極から、周波数の近い電流を2種類出すと、骨盤内の刺激したい部分で電流が交差して干渉波を出すそうで、その干渉波がじわじわと広がり、骨盤底筋を収縮させ、排尿に関する神経も刺激するとのことです。
説明を聞くだけで、効きそうでしょう。
1回の治療は約20分間で、服を着たまま受けられ、痛いということはほとんどありません。
もちろん、副作用もありません。
保険が適用されますので、治療の自己負担は数百円だけです。
3週間で6回、それ以降は2週に1回の治療になります。
ただ、治療をやめてしまうと、再び症状が出るようになるのが、欠点です。
以上、ウロマスターの説明をしましたが、お薬で副作用が出るので使えない方や、高齢者や身体の弱い方でも安全・簡単に治療が行えます。
残尿検査
昨日に引き続き、残尿検査についてお話しいたします。
残尿検査の方法は、尿道からカテーテルを入れて尿を抜いて実測する方法と、超音波検査で膀胱に残っている尿を画像上から計算して見る方法の二通りがあります。
当院では、痛みのない超音波で調べる方法をとっています。
「下部尿路機能ポケットマニュアル」西澤 理(信州大学医学部泌尿器科)監修、メディカルビュー社より引用
なぜこの検査が必要かを説明します。
勢いが悪くても、どうにか出し切れるなら、それは排尿障害があっても、許容範囲であると考えられるからです。
しかし、尿が出し切れず、残尿を生じるまで前立腺肥大症が悪化しているなら、治療が必要な状態であるといえます。
まず始めに行う治療は、α1ブロッカーという種類の薬の投薬になります。
これは、尿道を広げてオシッコを出しやすくする薬です。
この薬が出るようになってから、前立腺の手術が劇的に減ったと言われています。
α1ブロッカーを飲んでも、残尿が常時100CC以上であるなら、内視鏡的な前立腺を削る手術や、手術が出来ない場合には、細い管を使って自分で尿を抜き取る自己導尿という方法を選択する必要が出てきます。
なぜ、残尿が多いと問題なのでしょうか。
それは、前立腺肥大のため尿が出し切れなくなると、膀胱がどうにか尿を出そうとしますので、かなりの負担がかかるようになります。
そのような状態が長く続くと、膀胱は徐々に変形していき、オシッコを排出する力が無くなっていき、尿閉という状態を繰り返すようになります。
慢性的な尿閉状態が続くと、腎臓への尿の逆流が生じ、腎臓の機能が悪くなる場合があります。
実際に、それが原因で腎不全となり、透析が必要となってしまった人を時々見かけます。
また、常に残尿がある状態が続くと、細菌が付きやすくなり、腎盂腎炎や前立腺炎、精巣上体炎などを起こす事もよくあります。
そのような場合には、しばしば高熱を出します。
そして、腎盂腎炎を頻回に繰り返すと、腎臓の機能が次第に悪くなっていきます。そのような状態は逆流性腎症と言う病名で言われており、こちらも悪化すると腎不全となり透析が必要になる疾患です。
このように、残尿検査は尿流測定検査とともに重要な検査なのです。
是非とも残尿検査を受けられると事をお勧めします。
尿流測定検査
援腎会すずきクリニックは、2階で人工透析治療を、1階では泌尿器科と内科の診療を行っています。
泌尿器科の病気で、もっとも代表的な疾患は前立腺肥大症です。
前立腺肥大症になると、オシッコが出にくくなる、オシッコが近くなる、残った感じがするなどの症状が出てきます。
患者さんが来院されると、国際前立腺症状スコアというアンケート用紙を書いてもらい、前立腺肥大症の症状を点数として評価してします。
次に前立腺をおしりから入れる経直腸超音波で調べます。ただ、痔があったり、希望しない方はお腹から超音波を当てるようにしています。
そして、次に行う検査が、尿流測定検査です。
かなり、前振りが長くなったとおもいますが。。。これが、今日の本題です。
当院の尿流測定装置(多目的トイレの中にあります。)
尿流量測定装置(ウロフロメトリー)は、センサーのついたカップにオシッコをすると、排尿を感知して時間あたりの排尿量を計算する装置です。
よくウロフロと言っていて、次に行う残尿検査と合わせ、ウロフロ残尿と読んでいます。
この検査をやることで、
・排尿量
・排尿時間
・最大尿流量率(オシッコの勢いが一番いいときの数値)
・平均尿流量率(オシッコの勢いの平均を取った数値)
などを調べます。
測定したデータは数値とグラフで表示されますので、尿の勢いなどが一目でわかるしくみになっています。
アステラス製薬 前立腺.comより引用
正常の人は、排尿が開始すると尿流率が上昇しますが、前立腺肥大症の方では、尿の出し始めから終わりまで、ほとんど勢いがなく、排尿時間が長いグラフになります。
この検査を行うことで、客観的な数値で排尿状態を評価できます。
たとえば、薬で治療する前後に行うことで、どのくらい治療効果が出ているのかが判断できます。
以上が尿流測定検査についての説明ですが、この検査の後には、必ず残尿検査を行っています。
残尿検査については、長くなりましたので、明日続きを記事にします。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。