男性不妊
先日、ある患者さんが当院を受診されました。
話をよく聞いてみると、今回の症状と関係ないのですが、不妊症としてとある産婦人科医院で治療中で、精子数が少ないので人工受精を勧められていると聞きました。
精液検査の異常が有ると言うことですが、泌尿器科的な診察を受けたことが有りますかと聞いたところ、今まで受けたことがないとおっしゃっていました。
そのため、精巣の大きさ、精索静脈瘤の有無、前立腺炎がないかなどの泌尿器科的診察をさせていただきました。
不妊症では、男女ともに原因が有るのが25%、女性に原因が有るのが40%、男性に原因が有るのが25%だそうです。
福島医大病院で診療を行っていた頃は、毎週の様に産婦人科から頼まれて、男性不妊症の患者さんに対し、精巣から精子を採取してました。
ちょっと懐かしい気がしました。
ただ、人工受精を行う前には、必ず泌尿器科的な病気で精子数が少なくなってないか十分に診察を行っていました。
なぜなら、泌尿器科的な治療で良くなる不妊症がかなり有るからです。
男性不妊の中で、精管が詰まっているための無精子症や、精索静脈瘤による不妊症は、手術で良くなると言われています。
特に精索静脈瘤は、男性不妊患者の約20~40%に認められ、触診ですぐに分かる病気です。
精子数が少ないと言われている患者さんも、一度泌尿器科を受診することをお勧めいたします。
福島腎不全研究会
土曜日に郡山で福島腎不全研究会が行われました。
特別講演の他に、10題の腎不全に関する発表が有ったのですが、我が援腎会すずきクリニックでは、今回3題の発表をさせていただきました。
まずは、臨床工学士の鈴木が『透析装置における地震対策』という演題で、当院が行っている地震対策について発表させていただきました。
そして、ぼくは、
『当院の治療成績〜透析量の増加と濾過透析の効果〜』という演題で、当院で行っている透析液清浄化と総血液処理量を増やすこと(時間延長と血流量上昇)、そしてオンラインHDFを行って得られた効果を話させていただきました。
具体的には、透析量を増やすことで、貧血の治療薬であるエリスロポエチンの使用量が半減したことや、リンの吸着剤の使用量が減ったこと、かゆみが改善したことなどを発表させていただきました。
そして、もう一題、『透析中の運動療法〜電動サイクルマシンEscargotの使用経験』では、透析中に行う運動療法の有用性について話させていただきました。
これからも、クリニックの考え方をアピールできる機会が有れば、どんどん発表していきたいと考えています。
情報誌HEART再び
『健康・福祉』をテーマとした専門情報誌、HEART12月号にクリニックの紹介が載りました。
今回は、健康探訪のコーナーです。
編集室のお兄さん。前回の鈴木さんと今回のクリニックと、取材をしていただきありがとうございました。
これからもクリニックのことをアピールしていきたいと考えています。
副作用:便秘薬の酸化マグネシウム
毎日新聞より
便秘や胃炎に広く使われている医療用医薬品「酸化マグネシウム」の服用が原因とみられる副作用報告が05年4月~今年8月に15件あり、うち2人が死亡していたことが、厚生労働省のまとめで分かった。高齢者に長期間処方しているケースも多いことから、厚労省は血液中のマグネシウム濃度の測定など十分な観察をするよう、製薬会社に使用上の注意の改訂を指示した。
酸化マグネシウムは腸の中に水分を引き寄せて腸の運動や排便を助ける効果があり、各製薬会社の推計使用者は年間延べ約4500万人に上る。
15件の副作用は、服用が原因で意識障害や血圧低下などにつながった可能性が否定できないケースで、全員が入院。うち認知症などの病気を持ち、他の薬と併用して長期投与を受けていた80代の女性と70代の男性が、ショック症状などを起こし死亡した。15人中13人は、服用を半年以上続けていたとみられる。
酸化マグネシウムは市販薬にもある。厚労省はこの成分を含む製品を副作用の危険が最も低い3類から、薬剤師らに情報提供の努力義務が課せられる2類に引き上げることを決めた。市販薬での副作用報告は今のところないという。【清水健二】
http://mainichi.jp/select/science/news/20081128ddm041040019000c.html
先日、便秘の治療について記事を書いたばかりですが、今日こんなニュースが飛び込んできました。
年間4500万人の方が酸化マグネシウムを飲んでいて、酸化マグネシウムと因果関係が否定できない高マグネシウム血症が15名の方で起こり、2名の方が亡くなられたと言うようです。
重症となったり亡くなられた方は、精神病や認知症で自分で症状をうまく伝えられなくて具合が悪くなったようです。
長期に飲んでいる方もいらっしゃると思いますが、酸化マグネシウムの内服により副作用として悪心・嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、筋力低下、傾眠などの症状があります。
そのような症状があり、心配な方は、マグネシウムの採血を受けられた方がいいと思います。
ただ、4500万人が飲んでいる薬ですので、それほど危険性は高くないと思います。
ちょっとおかしいと考えた場合には、漠然と飲み続けるのではなく、副作用のことを思い出してみてください。
この薬は腎臓が悪い場合には代謝されず、副作用が出やすいと言われています。
血液透析を受けている方の場合は、より注意して内服すべきですので、気をつけてください。
前立腺がん検診について2
これだけPSA検診が有用だと言われているのに、なぜ厚生労働省は『死亡率減少効果の有無を判断する証拠が現状では不十分』と言っているのでしょうか。
実は、世界的にも未だに評価が分かれているのも事実です。
その理由が、前立腺がんが非常にゆっくりと進行する癌であり、発癌から癌で亡くなるまでに40年以上の経過が必要だと言われているからです。
つまり、生前癌と診断されず、亡くなった後に解剖することで確認される『潜在癌』がとても多く、70歳以上で40%以上いると言われているからです。
つまりは、「前立腺がん検診が普及した場合におこる前立腺がん死亡率低下の中で、過剰診断、過剰治療を被っている受診者がいるのではないか」という点を指摘しているのです。
厚生労働省が危惧しているのはこの点であり、前立腺がん検診を行うことによる無駄な医療費を作りたくないと言う考えがあるのかも知れません。
それから、最近では後期高齢者医療制度も出来てから、いろいろな論議が起こっていますが、前立腺がんが非常に進行が遅い癌であり、図でも示しました様に、後期高齢者で増え続けている癌であるという特徴があります。
国が積極的にがん検診を行うのは、働き盛りの方の癌を減らすことを目的としています。
そう考えると、後期高齢者に多い前立腺がんは、積極的に検診を行う必要のない癌であると考えられているのかもしれません。
ただ、我々泌尿器科医が、何もしていないわけでは有りません。
世界的には、死亡やQOLの低下に影響しない癌を治療前に選別して、治療を行わず、経過観察を行う方法も行われています。
我々も、PSAが4以上であっても、症状がなく直腸診で進行した前立腺がんが疑われなければ、高齢者では十分な説明をした後に、積極的な検査を行わず、経過を見ることも行っています。
泌尿器科学会でも、近い将来は、必要のないと思われる方への検査や治療の問題も解決していき、検診の有用性もこれまで以上に高くなるのではないかと記載しています。
厚生労働省の研究は、調査に基づく研究です。
我々は、目の前で苦しんでいる前立腺がんの患者さんと接しています。
現場の声として、50歳以上の男性には、是非とも前立腺がん検診を受けてほしいですし、検診が受けやすくなるシステムを確立していきたいと考えております。
今回、この記事を書くにあたって、一般の方に分かりやすく書くために、用語がちょっとずれてしまっているところがありますが、ご了承ください。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。