オシッコが近い
今回は、頻尿のお話です。
頻尿の原因を調べるためには、特に難しい検査はいりません。
まずは、検尿を行います。
検尿で、膀胱炎などの所見が有れば、抗生剤などを飲んでいただき、治療します。
膀胱炎がないとき、安易に頻尿の薬を出してはいけません。
前立腺肥大症などの排尿障害が有る方では、オシッコが出し切れず、残尿が多く残ってしまい頻尿となっている方も多くいらっしゃいますので、安易に出すと、オシッコが出せなくなり、苦しくなってしまう場合が有ります。
そのため、高齢の男性の場合はまず前立腺肥大がないかどうかから診察が始まります。
尿流量測定検査と残尿検査をすることで、排尿困難から残尿を生じ、頻尿となっている場合を調べることが可能です。
また、尿流測定装置がない場合でも、残尿が調べられれば、排尿障害による頻尿かどうかはわかります。
それ以外で、以前から頻尿が有る場合は、排尿の記録を書いてきてもらいます。
朝起きたときから次の朝まで24時間の間に、何回トイレに行って、カップでどのくらいの尿をしたか計る検査です。
これは、医療機関を受診しなくても自分で検査できますので、もしこのブログを見た方で頻尿の方はやってみてください。
通常、1日の尿量は1から1.5リットルくらいです。
1日尿量が2リットル以上なら、水分の取りすぎによる頻尿を考えましょう。
1回の尿量が100mlくらいしかない場合は、薬の治療が必要となります。排尿障害がない方では、坑コリン剤が有用です。
お年寄りで、夜頻回にオシッコに起きる方では、夜間多尿による夜間頻尿の場合もあります。
などです。
また、最近では、頻尿と尿意切迫感(それまで何もなかったのに、突然オシッコに行きたくなり、我慢することが難しい症状)をがかなり沢山の人に有ることがわかってきており、過活動性膀胱と言う病名が名付けられています。
40歳以上方では、8人に1人が過活動性膀胱であると言われており、年齢が進むにつれて、その症状を持つ人は増えるようです。
原因をきちんと調べ、坑コリン剤というお薬や、膀胱を訓練することで十分に症状の改善が見込めます。
是非泌尿器科専門医を受診してみてください。
オシッコが出にくい
今回はオシッコが出にくいという場合のお話で、高齢男性でよく起こる前立腺肥大症のことです。
一般には、オシッコに夜何回も起きるとか、出し切れない、すっきりしないなどの症状で来院されます。
まずは問診です。
いつからオシッコが出にくくなったのですか。
オシッコした後残った感じがありますか。
など、聞きますが、現在は国際前立腺症状スコア(IPSS)と言う問診票を用いることで、排尿の状態が客観的に評価できます。
既往歴として、排尿障害を起こすような病気を持っていないかや、これまでにかかった病気、内服薬などを問診します。
他にも、糖尿病を患っている方や直腸、子宮などの病気で大きな手術をした方では、神経が原因で排尿困難を起こす場合もあります。
また、高齢男性では前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAを採血し、前立腺の診察と前立腺の超音波を行います。
おしりから指や装置を入れるので、違和感は有りますが、特に強い痛みは有りません。ただ、痔のある方は注意して行う必要が有ります。
前立腺の超音波では、前立腺の大きさ、かたちが問題ないかなどを調べます。
次に、尿流量測定装置でオシッコの勢いがどのくらいか検査し、超音波で残尿検査を行います。
これは、正常の尿の勢いに比べ、どのくらい弱いかが一目瞭然でわかりますので、患者さんも結果のわかりやすい検査だと思います。
また、頻尿のある方は排尿の記録を書いてきてもらいます。
以上より、前立腺肥大症の重症度を確認してから、お薬を処方します。
基本的にはきちんと状態を把握してから薬は出しますが、症状の強い方や希望される方は初診時からお薬を処方いたします。
通常α1ブロッカーという種類の薬を初めに処方いたします。
また、他の症状が有る場合は別の薬も処方いたします。
検診で血尿を指摘されたら
今回は、検診や人間ドックで尿潜血が陽性であると言われた場合の診療についてお知らせします。
肉眼的にオシッコが赤くなくても、顕微鏡で尿を観察し、血液の成分である赤血球が正常よりも多く出ている場合を顕微鏡的血尿と言います。
正常は、顕微鏡の強拡大(400倍)で、1視野に4個以下です。
検診の場合は、顕微鏡等で検査せず、簡易的に尿の潜血反応を調べることが多いですが、性格に診断するためには潜血反応と顕微鏡検査はセットで行います。
それでは、当院の診療方針として、一番わかりやすい、尿中の赤血球数で説明します。
当院で、検診血尿で行う検査は次の5つです。(追加検査は除く)
これは僕の今まで行っていた診療方針であり、先生によって違ってくると言うことを初めに言っておきます。
患者さんの負担の少ない順に
1,尿細胞診
オシッコにがん細胞が混ざっているかを見る検査。
これはオシッコを出すだけなので、痛みは全くありません。
結果は一週間くらいかかります。
この検査では、悪性度の高いがんは高率に見つけられますが、悪性度の低いがんは見落とす可能性があります。
初期の膀胱がんで、悪性度が高いものは上皮内がんと言って、粘膜が赤くなるだけで、超音波では発見できなく、尿細胞診で見つかることが多いです。
2,超音波検査
腎臓、膀胱、男性では前立腺を超音波(エコー)で調べます。
腎臓結石、腎臓がん、水腎症、膀胱がん、前立腺肥大症などがわかります。
尿細胞診でわからなかった悪性度の低い膀胱がんは膀胱超音波でわかる場合が多いです。
膀胱を見るために、オシッコを貯めて来院してもらい検査します。
3,採血
尿にタンパクが混ざっていたりして腎臓病が疑われる場合や、高齢男性で前立腺がんを疑っている場合に行います。
4,腎盂造影
造影剤という薬を点滴して、何回かお腹のレントゲン線撮影を行う検査です。造影剤が腎臓から尿管を通って膀胱に流れる状況を調べます。
腎臓結石、水腎症、腎盂がん、尿管がん、尿管結石症、尿管狭窄、膀胱腫瘍などがわかります。
針を刺して点滴するだけの検査ですが、造影剤にアレルギーが有る方が時々いますので、十分に問診を取ってから行わなければなりません。
また、腎臓の機能が悪い方は造影剤でさらに悪化しますので、事前に腎機能を採血で調べる必要が有ります。
5,膀胱カメラ
尿道に麻酔をした後に、内視鏡を使って膀胱内を見る検査です。膀胱がん、膀胱結石など膀胱の病気がはっきりわかります。
その他、血尿で来院された方で、血尿がどこから出ているかを調べるためにも有用です。
ただ、昨日も書きましたが、痛みがかなりある検査です。
当院は痛みの少ない軟性膀胱鏡を使用いたします。
以上が行っている検査になります。
そして、診察の時の尿検査の結果によって、行う検査を決めています。
潜血のみや赤血球が50個以下の場合では、
初診時に尿細胞診や高齢男性でPSAの採血を行います。
おおよそ尿細胞診の結果が1週間かかりますので、次の診察でオシッコを貯めて来院していただき、腎臓と膀胱の超音波を行います。
ただ、必要に応じて、腎盂造影、膀胱カメラを追加しています。
また、尿たんぱく陽性の方の場合、朝一番の尿を持ってきていただき検査することも行っています。
赤血球が1視野に50個以上では、
尿細胞診、超音波、腎盂造影、膀胱カメラ、高齢男性でPSAの採血
となります。
血尿で来院された方には、これらの説明をパソコンのスライドで説明し、診察を行っています。
血尿がでたら
血尿には、ある日突然真っ赤なオシッコが出たと言う肉眼的血尿と、検診、人間ドックで見つかった顕微鏡的血尿があります。
顕微鏡的血尿については、次回お話しいたします。
肉眼的な血尿が出た場合、症状があるときと無いときでは、考え方が変わってきます。
背中が痛むとか脇腹が痛む場合は尿管結石。
オシッコするときに痛みがある場合は膀胱炎。
などが考えられますが、症状が無い場合でも、重大な病気が隠れていることもあります。
症状が出ないので、放置しておく人がいますが、非常に危険ですので、血尿が出たらすぐに泌尿器科を受診してください。
これまでの調査では、肉眼的血尿が出た場合、何らかの病気が見つかる確率は90%以上も有ります。
膀胱がんの初診時の症状で一番多いのが、無症状の血尿です。
他にも、腎盂がん、尿管がんの場合でも、血尿を初発症状とする場合があります。
血尿を放置してしまい、取らなくてもすんだ膀胱を取らなくてはならなくなった患者さんをいっぱい知っています。
この場合は、膀胱のカメラを行うことで膀胱内に病気があるかどうか確認できます。
ただ、通常行われている硬性鏡による膀胱鏡はかなり苦痛のある検査です。男性では、事前に尿道に麻酔液を入れて行いますが、かなりの苦痛を伴います。
でも、当院に来院された患者さんには、柔らかく痛みの少ない軟性膀胱鏡を使用しますので、ご安心ください。
カメラの間、本を読んで過ごしている患者さんもいるくらいです。
そして、その他に行う検査ですが、
前立腺がんの腫瘍マーカーPSAや腎機能を見る血液検査
腎臓にできるがんや結石を診るために超音波検査
尿管にがんや石が出来ていないか確認するための腎盂造影検査
オシッコのどこかにガン細胞が出ていないかを確認する尿細胞診
などがあります。
通常は、尿細胞診の結果が出るのに一週間くらいかかりますので、予約検査である腎盂造影検査を一週間後に予定して再診となります。
以上の検査でもはっきりしない場合は、逆行性腎盂造影等の詳しい検査が必要となる場合があります。
ただ、初診時の検査ですぐに病気が見つかり、入院、手術が必要となる場合には、太田西ノ内病院をはじめとする近隣の病院へご紹介いたします。
以上、今回は肉眼的血尿についてご説明いたしました。
泌尿器科診療のこと
4月になって、泌尿器科のことも書かなければと考えます。
ブログって書いて1年位すると埋もれていってしまうんですよね。
昨年開院前に一度記事としましたが、再度、シリーズで泌尿器科の病気の事を書きます。
まずは、患者さんの症状を聞くことから診療は始まります。
病名ではありません。
患者さんが来院するときは、自分はどういう病気だと言って来院するわけでなく、症状を言って来院しますよね。
つまり、どの様な症状の場合、どの様な検査と治療が行われるのかが、実際に知りたいこととなるかと思います。
それで、最初にお話ししますが、おおざっぱな話になります。
多数の方は、同じ診療の方針でいけますが、症状や既往歴、飲んでいる薬などから、これはちょっと病気が違うようだと考えられた場合には、方向性が違ってきます。
そのことを踏まえごらんください。
1,血尿がでた。
2,検診で血尿があると言われた。
3,オシッコが出にくい(排尿困難)
4,オシッコが近い
5,前立腺癌の数値(腫瘍マーカーPSA)が高いと言われた。
6,背中が痛く血尿が出る(尿管結石)
7,オシッコするときに痛みがある。
以上について、シリーズで連日投稿したいと思います。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。