尿糖について
援腎会すずきクリニックは泌尿器科ですので、診察前に尿検査を行います。
たくさんの方に検尿を行うと、時々尿糖が陽性(+)の患者さんがいます。
尿糖は、血糖値が160から170mg/dl以上になると、陽性となると言われています。
尿糖が陽性である患者さんの多くが糖尿科や内科で糖尿病の治療を受けていますが、時々、これまで血糖が高いと言われた事がない患者さんもいます。
健診を受けて、絶食で採血しても、血糖が高くないか、もしくは若干高い程度の方です。
(もちろん血糖値が正常でも尿に糖が出てしまう腎性糖尿の方もいらっしゃることは付け加えておきます。)
実は、そのような方を詳しく調べてみると、糖尿病でも正常でも無い耐糖能障害(Impaired Glucose Tolerance; IGT)と言う範疇に入る方がいて、空腹時血糖は正常でも、食後に高血糖となり尿糖が出てしまっているのです。
しかも、この食後高血糖が危険であると言うことが最近分かってきました。
このことは、10年ほど前に発表された舟形スタディという研究で報告されています。
舟形スタディは山形県舟形町の40歳以上の住民に糖負荷試験を行うことで糖尿病の有病率調査を行い、6年後にその住民の死亡率を調べた研究です。
この研究の結果では、死因を心血管疾患に限った場合にとても興味深い結果が出ました。
その当時のアメリカの糖尿病協会では、糖尿病の診断を空腹時血糖のみで行うこととして、そのために空腹時高血糖( IFG:Impaired Fasting Glucose )という用語を作り、糖尿病の診断を行っていました。
これは、正常空腹時血糖(NFG)と空腹時血糖異常(IFG)、糖尿病(DM)で生存率を比較した結果です。
糖尿病と診断された方は、心血管疾患の死亡率が高いという結果でしたが、空腹時の血糖だけを見ると、空腹時血糖正常とでは差が出ませんでした。
次に、糖負荷試験の2時間値を基に、正常耐糖能(NFG)、耐糖能障害( IGT)、糖尿病(DM)で比較した結果がこちらになります。
正常耐糖能に比べ、糖尿病では心血管疾患による死亡率が3倍高いことが分かりましたが、耐糖能障害( IGT)でも正常に比べ2倍高いと言うことが分かりました。
7年後には糖尿病と差が無くなってきていますね。
検診を受けた時点では正常でも、その後糖尿病になっていく人も多く、差が無くなっていくのでしょうね。
つまり、空腹時血糖が正常だと言うことは、それ自体だけではリスクを知ることができず、糖負荷試験を行い耐糖能障害の有無を知ることで心血管疾患のリスクが分かると言うことです。
耐糖能試験は、耐糖能を知る検査ですので、はっきりとした糖尿病では行いません。
それ以前の段階で行う検査となります。
だから、検診で血糖が高いと言われていない方で、泌尿器科を受診して食後に尿糖が出るような方では耐糖能試験を行った方がいいということが言えます。
タバコ窩内シャントについて
透析には内シャント手術が必要です。
通常は腕時計をする部分に近いところに作ります。
でも、タバコ窩内シャントと言って、母指を橈側外転させたときに手関節橈側遠位部に生じるくぼみに作る場合が有ります。
その理由は、閉塞するとより肘に近いところに作らなければならないシャントですが、通常の位置より遠い部分で作成できるので、手術をする部位が増えるという利点があります。
そのため、若くて今後長期間透析を行う可能性が高い患者さんには、タバコ窩で内シャントを作ることが増えてきました。
しかし、最近ではシャントPTAが良く行われるようになり、シャントのメンテナンスができるようになってきました。
そのため、タバコ窩の内シャントはあまり勧められないと最近では思っています。
その理由は、
・通常のシャントでも、PTAを必要時行うことで、シャントの開存期間が長くなったこと
・タバコ窩は手関節を超えるところで狭窄を起こしやすい。
・通常シャント部位に比べ、PTAが難しい(僕の印象ですが。)
・血管の発達が悪く、血流をなかなか上げられない方が多い傾向だ。
この様に考えています。
患者さんも、作ってから時間が経たないでつぶれてしまうシャントを作るよりも、メンテナンスをすることで長期間使用できるシャントを望んでいると思います。
最近、タバコ窩内シャントのPTAが難しい方が何人かいらっしゃいます。
しかもどうにか透析はできるのですが、十分な血流が取れず困っています。
ご本人も手術はしたくないので、どうにかこのまま頑張って欲しいとおっしゃるのですが、透析の効率は悪い状態です。
現在も積極的にタバコ窩内シャントを作成している先生方はご検討ください。
昨日2201アクセスでした。
先日m3ブログのピックアップブログに載っているのを発見しました。
以前も一度載せていただき、その時点では記録的な1000アクセス以上を記録しました。
今週はゴールデンウィークですので、m3ブログをご覧になる方も少ないはずなのですが、ピックアップブログに載っているのでアクセス数が気になっていました。
そうしたところ、昨日のアクセス数が2201アクセスを記録していました。
初めての2000アクセス越えです。
本日の時点での月間ブログアクセスランキング28位でした。
一ヶ月で37390アクセスです。
でも、2008.08.29を最後に終了した、〝ななのつぶやき〟のここ一ヶ月のアクセス数が、48463アクセスですので、まだまだ遠く及ばないなあと思います。(偉大なブログと比べる方が失礼です。でも、2年近く経っても変わらぬ人気はすごいです。)
最近は生活ネタが多かったのですが、このブログの主旨は透析治療はどの様にあるべきかをアピールすることだと思っています。
ですので、もっともっとお勉強ネタを記事にしていきたいです。
開業医になると、診療以外の様々な仕事が出てきてしまいます。
また、外来だけでしたら勉強しなくてもこれまでの蓄積で何とかできてしまうかもしれません。
でも、医学はどんどん進んでいっています。
昨日の常識が今日の非常識というのは良くあることです。
自分の診療の質を落とさないために、これからもいろいろな本や雑誌を読んでこのブログに書き込んでいこうと思っています。
これからもよろしくお願いします。
第98回日本泌尿器科学会総会
4月27日から本日30日まで岩手県盛岡市で、第98回日本泌尿器科学会総会が行われています。
これまで、泌尿器科学会総会はウィークデーに行われていましたので、出席することは諦めていました。
でも、今回は祝日である29日を挟んだ開催となっていました。
そこで、患者様の協力の下、今週の透析を
月水金→月水土
火木土→火金日
に変更させていただき、学会出席させていただきました。
泌尿器科学会でも、透析に絡んだ講演や発表はありますが、今回は泌尿器科の最先端を学ぶという目的で行ってきました。
盛岡に到着したのが28日夕方でしたので、学会参加は実質29日のみでしたが、性機能障害診療 、前立腺癌再燃後の治療、蓄尿障害の最先端研究などの講演を聞いて勉強してきました。
もちろん、夜はこれまで一緒に研究してきた福島医科大学泌尿器科の仲間たちと楽しい時間を過ごしてきました。
本日からの診療に役立てたいと思います。
透析者の虚血性心疾患3
透析者の虚血性心疾患のお話に戻ります。
糖尿病を持つ患者さんでは、冠動脈に病変がある方が多く、透析導入時にすでに58%の患者で冠動脈病変が認められるそうです。しかも、その冠動脈病変は、重症の2枝3枝病変が35%もあるとのことです。
糖尿病を持たない方でも39%の患者が冠動脈病変があるそうですが、2枝3枝病変は13%と比較的少ないようです。
透析導入時にこれだけ冠動脈病変が多くて、しかも除水過多によって透析後半に血圧が下がると透析中の無痛性心筋梗塞が多いというのは分かるような気がします。
スクリーニングとしては、心電図や心エコーなどになるのでしょうが、心エコーを常に行える施設は限られてしまいます。
透析中の血圧低下が時々見られる透析者の方では、機会が有ったときに総合病院や循環器内科で心エコーをしてもらうことをお勧めします。
心電図や心エコーで異常が有った場合には、
1.冠血管造影coronary angiography(CAG)
2.マルチスライスCTでのCT coronary angiography (CTCA)
3.薬剤負荷心筋血流シンチグラフィ
が有ります。
冠血管造影は、動脈にカテーテルを挿入し行う検査ですので、侵襲の有る検査と言えます。
そのため、最近では造影CTで冠動脈造影ができるCTCAを行う機会が増えてきている様です。
しかし、透析者の場合、全身の石灰化が進んでいることが多く、冠動脈が石灰化している場合には、病変が特定できないことが有るようです。
最近では、侵襲が少なく感度も一般人と比べ劣らない薬剤負荷心筋血流シンチグラフィが有用だと言われています。
ただし、シンチグラフィーは高額な検査ですので、透析導入する患者さん全てに行うことはできず、必要な方のみに行う検査であり、できる施設も限られています。
現状では、循環器専門医が必要と考えた場合に行うべき検査であると考えています。
以上、透析者の虚血性心疾患について書いてみました。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。