2009.08.10
診療
研究
その他(医療関連)

蛋白尿について

検診の検尿で蛋白尿を指摘される方が時々来院されます。
今回は、蛋白尿について書いてみます。

CKD(慢性腎臓病)診療ガイドに詳しく記載されていますが、慢性腎臓病を考えた場合、もっとも重要な検診での検査項目は蛋白尿となります。

検診で蛋白尿を初めて指摘される患者さんの割合は、0.5%くらいと低いです。
しかし、蛋白尿と血尿が両方とも陽性(1+以上)の方では、10年間で約3%の方が透析導入となると言われています。

そして、蛋白尿は多いほど予後が悪く、17年の経過観察によると尿蛋白3+で16%、2+で約7%が透析導入していると報告されています。


CKD(慢性腎臓病)診療ガイド2009より

これを見ると一目瞭然ですが、尿蛋白陽性の患者さんのうちで、2+以上が予後が悪いです。
蛋白尿1+は±、−とさほど変わらないのですが、2+以上になると急に悪化することが分かります。

検尿を行ったときに、尿蛋白2+以上の結果があった場合には、専門医に相談することをお勧めいたします。

2009.08.06
診療
開業 / 病院経営
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シャント狭窄について

透析を受けていく上で、十分な透析量を確保することが大切だとこれまで書いてきました。
そのためにはしっかりした血流量が取れる内シャントを持つことが必要です。

初回手術時に、十分に血流が取れる動脈に静脈をつなぐことが大切ですが、手術がうまくいっても、シャントが詰まってしまうことはよくあります。

一番詰まる原因として多いのが、血管の一部が狭くなる狭窄です。
この狭窄を発見する為に、Beathardと言う人が、『血管狭窄の臨床指針』と言うものを提唱しています。

①静脈圧が上昇する
②血栓が繰り返えし出来る
③止血に時間がかかる
④穿刺が困難である
⑤シャントに痛みがある
⑥シャント肢が腫れている
⑦再循環が起こり、効率が悪い

これらの症状が見られる場合には、シャントに狭窄が出来ている可能性があります。

これらの項目は、スタッフだけでなく、患者さん自身が自覚出来ることも多いので、是非とも覚えていて、そのようなことが起こっていないか常に気にするようにしてください。

現在は、シャントトラブルスコアリングというものが出来ています。
活用することで、未然にシャント閉塞を防ぐ試みがされています。

当院でも、高血流の透析を行うためにシャント管理にも重点を置いています。
こまめに血管をチェックして、必要な方に対しては経皮的血管形成術(PTA:手術でなく、風船を血管の中で膨らませて狭窄の治療を行う)を行っています。

幸いなことに、開院以来、15か月の間、詰まってしまったため手術となった方はいらっしゃいません。

今回はシャント狭窄について書いてみました。

2009.08.01
診療
研究
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掻痒が強くなると死亡率が上がる

先日届いた透析学会雑誌に載っていた論文の考察に、

透析患者に掻痒が伴うと死亡率が17%高くなると言う報告があり、Naritaらも透析患者に伴う掻痒はその予後に大きく影響すると報告している。これらの報告からも掻痒の治療は透析患者の予後を改善する上でも重要な問題であると言える。

と言う文面がありました。
これは本当なんだろうかと思いました。

というのは、僕が思うのは、

掻痒がある=透析不足

だからです。
当院で、大量置換のろ過透析を行っていると、ほとんどの方がかゆみを訴えなくなります。
大量置換ろ過透析で、血流を上げ、時間延長も行っていますので、透析量は多いです。

もちろん、十分な透析を行えば、予後がよくなり死亡率が下がります。
だから、  掻痒がある→予後が悪い
ではなく、 掻痒がある→透析不足→予後が悪い
ではないかと思うのです。

考察では、かゆみが睡眠障害を起こし、生命予後が悪くなっているとまとめていますが、本当にそれだけ17%も違うのでしょうか。

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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