2008.02.02
診療

オンラインHDFってなあに2

前回述べましたように、HDFは多くの点でHDに比べ利点が多く、非常に有用な治療法だと言われています。しかし、現状では、コストがかかる治療であり、長期間透析をやったために合併症がたくさん生じてきた患者さんなどの限られた方しか対象としていません。

これだけ有用だと言われている治療法をできるだけたくさんの患者さんに提供できないかと言う観点から考えられた方法がオンラインHDFです。
オンラインHDFは、通常のHDFで使用するサブラットと言う注射液を使用せず、透析に使用する液を直接補充液として使用する方法です。

そのため、通常のHDFに比べてオンラインHDFは、補充液が大量に置換できるメリットがあります。通常のHDFでは置換液はせいぜい多くても10リットルまでですが、オンラインHDFでは50リットルまで可能です。つまり、たくさんろ過すればするほど効果が上がるということになります。
それから、前希釈オンラインHDFとすることで、血流量を上げて透析の効率を良くすることも可能であると言われています。

しかし、透析液を補充液に使用できるのは、厳重な透析液の水質管理をしている施設だけです。
通常透析液はエンドトキシンという物質で汚染されています。しかし、オンラインHDFを行うためには、細菌やエンドトキシンを測定感度以下になるまで徹底的に清浄化させなくてはなりません。
通常、エンドトキシンを防ぐエンドトキシンカットフィルターという機器を取り付けて対応しますが、根本的には透析液を作る段階からの清浄化が必要となります。
援腎会すずきクリニックでは、東レ社製の最新の洗浄消毒方法を取り入れた「トータルクリーン化システム」を導入し、徹底的に水質管理を行っていく予定です。

この治療法は、現時点で保険では認められておらず、そのコストはクリニックの大きな負担となります。しかし、オンラインHDFが通常のHDに比べ優れていることがわかっているため導入を決断いたしました。

今回、私が援腎会すずきクリニックを開院したいと考えたのは、このすばらしい治療法を限られただけの人ではなく、透析導入間もない、まだ合併症が強く出ていない人にも提供できるようにしたいと考えたからです。
そして、『透析はつらい』、『透析はなるべくやりたくない』から、『透析をやって元気になるんだ』と思えるようになってもらいたいからです。

オンラインHDFは全国的にはかなり行われている治療法です。福島県でも最近は少しずつやられるようになってきています。
しかし、通常HDFと同じように限られた人を対象としてるのが、現状のようです。
援腎会で透析を受ける患者さんについては、希望する患者さんすべてに提供する準備をしています。
現在言われている透析患者さんのあり方は、
『どんどん食べて、どんどん運動して、そしてたくさん透析をすること、それが長生きの秘訣です。』
以下に最近言われているオンラインHDF利点を示します。

1.透析患者さんの予後を改善させる。長生きができる。
2.心臓への負担が少なく、血圧の低い方に有効である。
3.腎臓にもやさしいため、尿が出る期間が延長する。
4.炎症マーカーが減少して、酸化ストレスが改善する。
5.貧血が改善する。
6.栄養状態が良くなる
7.アミロイドーシスが改善する。

オンラインHDFとは、 透析者の人生の質を大きく高め、寿命も延ばすことが証明されている治療なんです。

 

2008.02.02
診療

オンラインHDFってなあに1

血液ろ過透析(HDF)についてご存知でしょうか。
血液と透析液の間にある半透膜を介して、その濃度差で物質の移動がおこり、尿毒素が血液から透析液に移動して血液がきれいになるのが透析です。ただ、その場合には半透膜の孔を通りやすい小さな物質しか除去できません。

透析が始まった頃は、小さな物質だけを抜くだけでも効果があったのですが、長期間透析ができるようになると、もっと大きな物質を抜かないとずっと元気でいられないことがわかってきました。その大きな物質の代表が透析アミロイド症の原因物質であるβ2マイクログロブリンです。

 大きな物質を抜く方法で最も簡単なのは、孔を大きくすることですが、重要なタンパクまで抜いてしまいます。そのため考えついたのが、血液と透析液の間で水を大量に移動させることで、水と一緒に移動する性質の大きな物質を移動させて除去する方法です。これを血液ろ過と言います。
血液がダイアライザーに入る前に点滴を多量に入れてその分の水分を引っ張る方法と、引っ張った後に点滴を入れる方法があります。現在では、ろ過と透析を併用した血液ろ過透析が主流です。

具体的には、透析で2kg増えてきた方の場合は、2kg分の水分を取り去らなければいけないので、ダイアライザーを通してポンプで2Kg分水を引っ張って取り去りますが、HDFを行うときは、この除水に加え点滴をたとえば8L行います。そうすると、ダイアライザーを通しては、2L+8Lの合計10L水を取り去ることになり、それに伴い、大きな物質が除去できることになります。

それでは、HDFにはどのくらいの効果があるのでしょうか。

1.普通の透析で取りきれない老廃物の除去
β2マイクログロブリンを除去し透析アミロイドーシスを改善させる他にも、手根管症候群、心臓などの各種臓器へのアミロイドの沈着、破壊性脊椎炎などの合併症を予防し、全身の痒み、下肢のいらいら感などの不愉快な症状、不眠、色素沈着を改善すると言われています。

2.透析中および普段の血圧の安定
HDFは透析中に血圧が低下する透析困難症に有効だと言われています。そして、普段の血圧も落ち着いてきて降圧剤を減らせる場合があります。

3.貧血の改善
造血阻害因子の除去により貧血が改善すると言われています。

4.食欲の改善
不必要な老廃物が除去されることで、調子が良くなり多くの方が食欲が出てくるといわれます。

これだけ効果があると言われているのに、HDFが主流の方法とならない理由はなぜなんでしょうか。

HDFには専用の透析機械が必要であり、高価なため、普及していないという理由もあります。
そして、最近はダイアライザーが進歩しているため、高性能のダイアライザーを使うことだけで、効率の良い十分な透析ができるとの意見もあります。

そのため、透析をはじめてからの期間が長い患者さんで、手根管症候群、異所性石灰化による関節痛があってアミロイドーシスなどの問題を抱えている方や透析困難症で透析中に血圧が下がってしまう方だけに、HDFを行うことが多いようです。

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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