2011.11.17
診療
研究

HbA1cが変わるそうです。

昨日は、2件の講演会をはしごしていました。

共に同じホテルの2階と3階にあり、2階で行われた漢方研究会が19時からだったのに対し、3階の糖尿病の講演会の特別講演が20時だったため、19時から漢方研究会、そして20時から糖尿病の講演会とハードスケジュールでした。

漢方研究会では、風邪の漢方処方についての講演でした。
とても役に立つ内容でしたので、後日ここにも書きたいと思います。

今回は、糖尿病の研究会で聞いた2つの事を書きたいと思います。

一つは、来年4月1日よりHbA1cの値が0.4上がると言う事です。
国際的にはNational Glycohemoglobin Standardization Program値(NGSP)が使われていて、日本で使っているJapan Diabetes Society値(JDS値)とは0.4の差があり、これまでも問題となっていました。

今年の6月に行われた日本糖尿病学会で来年にはNGSP値に変更すると発表していたのですが、正式に4月1日と決まったようです。

現在、HbA1cが6.5の方は、4月になると6.9と言う値になりますので、注意が必要です。
HbA1cの目標値は、6.1でしたが、来年からは6.5となります。

もう一つは、一時期騒がれたアクトスの発がん性について。

フランスの行政当局が、アクトス服用で膀胱がんの発症リスクがわずかに高まるとの調査結果をもとに,糖尿病患者への新規処方を止める様に勧告して、日本でも話題になったことです。

アクトスは発売前の研究において,雄ラットで膀胱がんを増やす作用が報告されていました。
雌では確認されていなかったそうです。

フランスの疫学調査では、15万人のアクトス内服患者と133万の内服していない患者について調べたところ、男性において膀胱がんのリスクが有意に上昇していると判定されたということでした。

講演では、この研究が後ろ向きの研究であり、比較した人数に差がある事を問題と言っていました。

また、糖尿病自体に発癌のリスクがあり、アクトスよりもインスリンやSU薬の方が発癌リスクが高いと言われており、今回のアクトスを名指しにした勧告はおかしいと言う話でした。

ただ、膀胱癌の既往がある方では、使う事は勧めないと話していました。

現在、当院でもアクトスを処方している糖尿病の方がいます。
尿糖をチェックするついでに尿潜血も確認しており、血尿が有る方には処方しないようにしていますが、このような見解を聞いて少し安心した次第です。

2011.11.14
診療
研究

慢性前立腺炎とは

慢性前立腺炎とは

尿路性器に基礎疾患を有さず独立した前立腺疾患のなかで、頻尿、残尿感、排尿困難、会陰部痛や不快感、腰痛、下腹部痛などの多彩な症状を認める疾患群

と定義されています。

前立腺の病気で、頻尿、残尿感、排尿困難などの排尿症状と、会陰部痛や不快感、腰痛、下腹部痛などの痛みの症状を併せ持った病態です。

前立腺肥大症が60歳以上の高齢者を中心として発症するのに対し、慢性前立腺炎は30歳台、40歳台の方がかかる病気です。

意外に多く、全男性の10%がかかると言われ、米国では男性の50%が生涯に一度は前立腺炎の症状に悩まされるとも言われています。
当院でも、開院から3年間で170名の新患患者さんが来院しています。
決して恥ずかしい病気では無く、良く有る病気と考えてもらっていいと思います。

原因はまだ解明されていません。
細菌性のものと非細菌性の前立腺炎があり、細菌性の頻度は5〜10%程度と言われています。

また、初診後3〜6ヶ月後には約半数の方の症状が自然に改善すると言う報告もあります。
しかし、長期にわたって悩まされる方がいる事も事実です。

2011.11.13
診療
研究

慢性前立腺炎について

最近、忙しい日々が続いています。
先週は、医師会の座談会に参加し、震災時の透析がどの様に行われたかについて話し合ってきました。

今週は、とある研究会で慢性前立腺炎の発表をします。
慢性前立腺炎について論文を読んで調べたことと、過去3年間の当院の治療成績の集計を発表します。

来週は、某県の某病院で、『透析クリニックが被災して』と言う題名で講演をさせていただきます。
仲のいい副院長先生が先日郡山に激励に来てくれましたので、そのお返しに遊びがてら行ってきます。

前回の発表からさらにスライドを充実しましたので、僕の知っている知識をなるべく多くの皆さんに広めるため頑張ってきたいと思います。

その次の週は、市内の先生にお願いされ、『メンズヘルス診療』と言うことで、講義をする予定です。

『メンズヘルス診療』については、昨年ブログで紹介しているかと思います。

http://blog.m3.com/ennjinnkai/20100824/1

そして、12月になると福島県腎不全研究会があります。
当院では、演題を2題出す予定ですが、さすがに大変なので、スタッフに発表してもらう予定です。

さらに、来年の透析療法学会総会の締め切りもありますので、年末まで忙しい日々が続くようです。

ブログでは、福島県特有の問題に関する話題ばかりとなってしまい、全国の皆さんにはまたかと感じてしまっているかもしれません。

それで、慢性前立腺炎についてまとめたスライドをブログでもご紹介したいと思います。

またシリーズで行いますので、楽しみにしていて下さい。

2011.10.29
診療
研究
仕事 / 職場

時間延長の為に必要なこと

https://enjinkai.com/society/2011/06/56.html

今年の日本透析医学会総会で、透析量を増やすと血圧が下がると言う事を報告しています。
透析量を増やす為に最も重要な要素は透析時間です。

これまでも長時間透析の良好な治療成績は、たくさんの施設から報告されてきています。
多くの方が時間を延ばすことで体調の良さを自覚して、再度時間が短くなることに抵抗するようになります。
5時間透析をしている方に震災直後は3時間透析をしなければなりませんでしたが、多くの方が早く時間を5時間に戻して欲しいと訴えました。

しかし、時間を延ばすことを勧めてもなかなかOKを出してくれない方もいます。
単に時間が長いという事を苦痛に思う方もいるかもしれませんが、透析中に耐えがたい症状が出てきてしまうため、時間を延ばす事をいやがる方もいます。

だから、透析時間を延ばすためにとても大切なことは、透析中の愁訴を取って上げる事です。
もちろん、時間を延長すれば多くの場合愁訴も取れるのでしょうが、毎回調子が悪くなるような方には酷な話かもしれません。

透析中にむずむず足の症状が出てくる方は、早く終わってくれと訴えます。
時間延長を勧めるのは難しいです。
透析中に生じる頭痛などもそうです。
一つ一つ何が原因となっているかを考え、なんとかそのような愁訴がない透析が出来ないかを考えます。

レストレスレッグ症候群に対しては、先日のHDF研究会で橋本クリニックの櫻井先生が、α-1マイクログロブリンを積極的に除去する方法を報告しました。
当院でも最近試みていますが、効果があるようです。

透析後半、毎回のように頭痛が生じる方がいます。
注意深く観察すると、除水を停めると良くなるようです。
毎回の体重増加は1.5kgと多くありません。
この方には、透析前半で除水をしてしまい、後半は除水を停めることとしました。
グリセオールの使用もいいかもしれません。

このぐらいは仕方が無いのではと言う妥協はなるべくしたく有りません。
その部分と戦うのが透析医の力量ではないかと考えています。

透析中の症状を取ってあげる方法を考えて、上手くはまって訴えが収まって、これなら時間を延ばしても大丈夫と言われれば、しめた者です。

透析医の醍醐味でしょうか。
無愁訴透析をめざし頑張ります。

追伸)
これは、実は常に患者さんを診ているスタッフに取っても同じで、最も大切なことです。
MEさんにとっては、ダイアライザーを変えること、除水方法をかえること、透析液を変えることなど、たくさんの方法をもっていますよね。
実は医者よりたくさんの手段を持っているかもしれません。

注意深く観察して、その方が何が困っているのか、どうしたら良くしてあげられるのかを考えてみて下さい。

2011.10.29
診療
開業 / 病院経営
仕事 / 職場

震災直後に給水車が来た理由は!

土曜日に郡山救急医療談話会が郡山消防署でありました。

これまで一度も参加したことが無かったのですが、講演の内容が、

「東日本大震災をふりかえって」
           双葉郡医師会長 井坂 晶 先生
「東日本大震災における郡山市保健所の対応について」
           郡山市保健所所長 阿部 孝一 先生

でしたので、話を聞きに行ってきました。

井坂先生のご講演は以前も聴いたことが有りましたが、避難途中、そして避難所であるビックパレットでのご苦労は何度聞いても大変だったなと感じます。

阿部先生のお話は初めて聞きましたが、震災後の放射線に対する対応や避難所の感染対策など、とてもご苦労された事を聞きました。
また、災害時の透析治療についても注目してくださり、ありがたく感じました。

その後の質問で、医師会長の菊池先生の発言ですが、水道局から給水車を病院に行かせたら良いかと言う相談が来て、先ず透析施設に行ってくれと言ったと言う話を聞きました。

それは、震災後の病院が救急患者の受け入れで大変な状況になっている時に、透析困難となった透析患者が集まってしまったらさらに厳しい状況になるという判断だったそうです。

思い返せば、震災後、透析を再開するための準備をしていた日曜日の朝、呼んでもいないのに給水車がやって来ました。
たまたま、水道管は大丈夫だったのですが、その時点では実は水道が止まっているかは分からなかったのです。

だって、19トンもの貯水槽があるのですから、水道の蛇口をひねればいくらでも水は流れるのです。
しかも、その他の事で精一杯でしたから、水道が通っているか確認もしていませんでした。
でも、実際には本当に大丈夫なのか分からなかったのです。

給水車が来たときに初めて気づいて、慌てて貯水槽を見に行きました。
洗浄を行った後で貯水槽の水が減っていなく、水道管が破裂していない事が解りました。

通っていなければ、その後水集めに奔走したでしょう。
たまたま幸運にも水道管は通っていましたが、まずは透析施設に給水車を行くように話して下さって、本当にありがとうございました。

本当にありがたいと感じています。

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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