2010.08.26
診療
研究

EDの危険因子

EDの危険因子を8個上げました。

先ず、加齢ですが、前回お見せしたスライドでも示しましたが、年齢が上がるにつれてEDの方は多くなり、70代では71%が中等
度ないし完全EDであると報告されています。

次に、喫煙です。
喫煙は血管内皮障害を起こします。
そのため、一般人のED罹患率が28%なのに比べ、喫煙者では40%と有意にEDの方が多くなっています。
しかも、喫煙量に依存性してEDのリスクも高まるそうです。

若いうちから長く吸っていると良くないと言うこともあり、中学・高校生の男子には, より良い性機能を保つという目的のために、タバコを吸わないこと,吸っている のならただちに禁煙することを啓蒙する必要が有ります。

高血圧ですが、一部のEDは降圧剤の副作用で生じます。
ただ、高血圧も血管内皮障害を起こしますので、高血圧によるEDの多くは、陰茎血管や海綿体の構造変化と内皮の障害によって生じています。

糖尿病
これは、大変です。
ED罹患率は26~35%くらいなのですが、全く勃起しない完全EDのリスクは非糖尿病患者さんにに比べ3倍あるそうです。

糖尿病患者さんでは,無痛性心筋梗塞の頻度が高いことが知られています。
実は他に合併症がない糖尿病の患者さんがEDを持つ場合、88.2%の方が無痛性心筋梗塞を起こしているそうなんです。

高血圧も脳梗塞も何もないけど、糖尿病にはかかっていると言う方がEDとなったの場合、9割近くの方が無痛性心筋梗塞を起こしていると言うことは、かなりショックなことですよね。
これが大変だという理由です。

EDは合併症のない糖尿病患者の無痛性心筋梗塞の予知マーカーとして重要であり,糖尿病患者さんがEDを訴えて来院した場合、治療する前に運動負荷心電図検査を行った方が良いと言われています。

次に高脂血症です。
これも動脈硬化に関連します。
海外では高脂血症があれば、EDの方が多いという報告が有るようですが、日本では現在のところ関連は強くないと報告されています。

肥満
これは、後でスライドにしますが、肥満はEDと関連し、肥満を是正することでEDも改善すると言われています。

うつ病
うつ病とEDが関連していることはこれまでにも報告されています。
また、ED治療薬を内服することで、うつ症状が有意に改善するとも言われています。

最後に前立腺肥大症です。
これは、加齢に伴うものだと考えられていましたが、実は同世代で比べても肥大がある方ではEDである方が多くなります。
肥大症の症状に骨盤内の虚血が関与していて、EDも骨盤内の虚血に影響を受けている為と考えられます。

2010.08.25
診療
研究

EDとは

前回と一緒で少し内容が固いのですが、我慢して下さいね。

ED(Erectile Dysfunction)勃起障害の定義は、

満足な性交渉をするために十分な勃起を達成できない、あるいは維持できない状態であり、少なくとも3ヵ月以上の期間そういう状態であること

です。

その患者数はとても多く、推定1130万人であり、40~70歳の男性の半数以上が何らかの原因でEDになっていると考えられています。

何らかの原因と書きましたが、
大まかに分けると、

EDは、おおまかに器質性EDと機能性のEDに分けられます。

まずは、陰茎の病気によるもので、事故・手術などで物理的に陰茎が傷害されて起こるものです。
そして、脳血管障害や神経の障害で起きるもの。
これは、脳から送られる性的刺激を伝達する神経の障害によっておきます。

次に、血管の病気によって生じるもの
海綿体内にある血管の動脈硬化や内皮障害によって起きる動脈性のEDと、勃起時の静脈閉鎖機構の機能障害が原因となる静脈性のEDが有ります。

最近では、循環器疾患とEDが密接に関連することが分かってきていますが、これは動脈硬化と血管内皮障害が原因となっています。
加齢や生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病)も動脈性EDと関連しています。

そして内分泌障害から来るED
これは、精巣から分泌される男性ホルモンの分泌が阻害されることが原因の勃起障害で、男性ホルモンの分泌が低下することで、勃起・射精を促進させるドーパミンと言う物質が増えないためにEDが生じると言われています。

薬剤によるEDもあります。

機能性EDは日常的なストレス・不安など心理的原因
が原因となるものです。

2010.08.24
診療
研究

勃起とは

通常の状態では、陰茎動脈から陰茎海綿体に血液が流れ込み、同じ量の血液が静脈を通って戻っていきます。
通常は動脈からはいる血液流入量と静脈から出る排出量がつり合っているのですが、性的な興奮が有ると勃起神経から指令が出て、陰茎海綿体の内皮細胞という細胞が活発に活動し始めます。

この内皮細胞はとても重要ですので、覚えておいて下さい。

内皮細胞よりNOと言う物質が出され、サイクリックGMPという物質が海綿体の中で増加します。
このことによって、海綿体の動脈の壁にある平滑筋という筋がゆるんで広がり動脈が広がって血液がどんどん海綿体に流れ込んできます。

すると、海綿体を包む白膜という硬い膜が広がります。
この硬い膜が広がると柔らかい静脈は圧迫されて、静脈から血が出て行かなくなります。
そして、ペニスにどんどん血が溜まっていき、勃起状態となります。

つまり勃起とは、陰茎海綿体の平滑筋の収縮や弛緩の減少を見ているもので、血管の中で起こっている血液循環の変化を見ていることと同じと考えても良いことになります。

このことはとても重要なことで、勃起が循環器疾患と密接にかかわっていると言う事実の元になります。

2010.08.24
診療
研究

メンズヘルス診療

最近、忙しい日が続いていました。

第一回クリニック勉強会を開催しましたので、そのスライド作りに精を出していました。
今週末には東北腎不全研究会で発表するのでその準備もしていました。
実は他にも某薬品会社で透析とは全く関係ない内容の講義を行っていました。

そのお題が、『メンズヘルス診療』でした。

これは、壮大なテーマで、スライドも57枚作りました。

初めは、ED(Erectile Dysfunction)=勃起障害の話で、勃起とはから始まり、成因、実際の診療、そしてEDがとても大切な症状であるということを話しました。

次に、最近話題になっている男性更年期障害とLOH症候群の関係について話しました。

最後は、EDとLUTS(Lower Urinary Tract Symptoms: 下部尿路症状)の関係について触れました。

今回、枚数が多すぎるのでどうしようかと思っていますが、今回の講義の内容をブログでも紹介しようと思います。

最初は勃起とそのメカニズムからです。

2010.08.18
診療

創生期の透析導入

透析歴40年の患者さんで、のりさんと言う方がいらっしゃいます。
のりさんが12才の時に透析導入となったそうで、その時は治療費が公費ではありませんでした。
月々の治療費20万を用意できる人だけが透析治療を受ける事が出来た時代です。
その当時の大卒初任給が4万円くらいの時代です。

のりさんのお父さんは公務員で収入が安定していて、上司や保険組合も協力してくれたので、なんとか透析治療を受ける事が出来る様になりました。
そして、現在まで40年以上血液透析を受けています。

その当時の様子をのりさんがご自身のブログに書いています。

http://dialysis40.blogspot.com/

子どもが病気になり、どんなことをしても助けてあげたいと言う親の気持ちがひしひしと感じられて2人の子を持つ親としても泣けてきました。

田畑を売ってなんとか透析を受けたという話しはこれまでも聞いていますが、実際にその当時に透析導入となった方が書かれているものを初めて読みました。

このブログですと直リンクすることは出来ないのですが、是非ともコピー&ペーストしてご覧になってください。

 

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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