これからの前立腺がん治療
昨日、東京で前立腺肥大症と現在研究中の前立腺がん治療薬についてのセミナーがあり、行ってきました。
最先端の研究としてがん遺伝子の研究が紹介されましたが、内容が高度なので、ただただ圧倒されていました。
研究の内容は高度なのですが、研究をされている先生方は何度も何度も失敗を重ねながら結果を出したとのことです。
自分が大学時代に研究していた事を思い出しました。
ところで、話は変わりますが、前立腺は内腺と外腺から出来ています。
内腺から肥大症が生じ、外腺に癌が出来ます。
肥大症から癌に変わることはありません。
でも、どちらも食生活が欧米化して、動物性タンパク質や脂肪を多く摂取するようになったことが関与している病気です。
前回記事にした尿路結石症もそうですし、どんどん食生活が関与する病気が増えてきているようですね。
セミナーの後は、いつものように関連病院の先生方と一杯やって帰途につきました。
結石の予防について
最近診察した患者さんで、結石に対する食餌療法として、カルシウムを制限するようにしている患者さんがいらっしゃいました。
以前の食事指導では、カルシウムを制限することが大切と言われていましたが、現在では全く逆で、カルシウムをどんどん取る方がいいと言われています。
10年くらい前から変わってきたと思います。
現在では、カルシウム不足になるとシュウ酸の吸収が増えて尿中に排泄する量が増え、結石が出来やすいことが分かってきています。
また、長期にわたりカルシウム制限をすると、骨粗鬆症を起こす可能性があることも言われています。
結石の多くが、シュウ酸カルシウム結石や、シュウ酸リン酸カルシウム結石ですので、結石を生じないためには、シュウ酸を取らないことが重要です。
それで、シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、タケノコ、チョコレート、紅茶、大根など)を制限した方がいいのですが、食べ方を変える事でも予防可能です。
シュウ酸が吸収される前に、カルシウムと結合させてしまうことで、シュウ酸自体の吸収を抑制するのです。
たとえば、シュウ酸の多いほうれん草はあくを抜く事でシュウ酸が減り、カルシウムの多い鰹節をかけることでシュウ酸の吸収が減ります。
紅茶にミルクを入れること。チョコレートを食べるときには、ミルクを飲むこと。大根もちりめんじゃこを混ぜて食べることが有用と言われています。
今回はシュウ酸とカルシウムの話となってしまいましたが、結石予防の基本は、飲水です。
尿量が1日1リットル以下では結石になりやすいと言われています。尿量が2リットル以上になるように十分な飲水を心がけてください。
それから、脂肪の取りすぎや、塩分・糖分も控えめにと言うことです。
偏った食生活や過食、運動不足になると結石が出来やすいと言われています。
と言うことは、尿路結石も生活習慣病なのですね。
食餌療法を行わない場合の結石の再発率は、5年で60%ですが、食事療法を行った場合は、20%程度ですので、結石の方は是非心がけてください。
病診連携
援腎会すずきクリニックでは、6つの病院と病診連携を結んでいます。
6つの病院と交わした病診連携の証書をやっと診察室入り口に飾ることが出来ました。
僕が所属していた太田記念病院。
そして、メインで仕事をしていた太田西ノ内病院。
それから、同じ太田病院ですが、磐梯熱海温泉にある太田熱海病院。
そして、星総合病院、南東北病院、寿泉堂綜合病院です。
いずれの病院の泌尿器科も、我々福島県立医科大学泌尿器科の同門です。
もちろん、全ての病院の泌尿器科で診療を行ったことが有ります。
実は、援腎会すずきクリニックは太田西ノ内病院と南東北病院の真ん中に有り、直線距離で両方とも1km位になります。
また、星総合病院とも1.5kmくらいの距離で、交通の便からは星病院が一番近くなる環境です。
こういう環境ですので、病診連携を密にして診療を行っていきたいと考えております。
早期血液透析導入のパラドックス
先日東北腎不全研究会で聞いた話です。
一般的に透析の導入は透析導入基準を満たした場合に行うが、糖尿病の方や高齢で合併症のある方の場合は、早期導入した方が予後がいいと言われています。
これは、腹膜透析でも同じであり、早い段階で透析導入を行うと、残腎機能が保持されて、非常にメリットがあると言われています。
オシッコが出ない場合、水分制限はかなりきついものであり、透析毎に大量に除水を行う事で、身体の負担も大変あります。
早期導入を行い、残腎機能を保護するような十分な透析を行うことで、通常は半年くらいで出なくなってしまう尿が数年持つと言われています。
それで、世界レベルの研究で、透析導入がクレアチニンの数値で8以上と8未満で、生命予後がどれだけ違うかを調査したそうです。
もちろん、誰もが早期導入となるクレアチニン8未満の方が予後がいいと考えたようです。
ところが、結果は反対の結果であり、クレアチニンが8以上での導入の方が生命予後は良かったとのことです。
まさに、早期血液透析導入のパラドックスです。
理由ですが、透析導入まで元気でいた人は、ぎりぎりまで我慢できてしまうために、クレアチニンが10以上で透析導入となることが多くなりますが、元々元気ですので、導入が遅くても予後がいいことが多いからではないか。
それに対し、糖尿病や合併症の多い高齢者では、クレアチニンが低い段階で具合が悪くなり導入するので、元々の状態が悪いので、予後が悪くなるのではないかとおっしゃっていました。
なんだか、どれが本当なのか分からなくなるような研究でしたね。
これからは、前向きな研究での早期導入について研究を望むと縁者の先生はおっしゃっていました。
つまりは、状態が同じくらいの人で早期導入する場合とぎりぎりまで待って導入する場合を比べる必要があるとのことです。
動脈硬化
すみません。
昨日の続きです。
それで、講演の話なんですが、まず前振りから。
透析患者さんはオシッコが出ない人が多いですから、透析をすることで、前回の透析から増えた分の水分を除去しなければなりません。
透析前の体重測定では、基準体重(ドライウエイト)から何キロ増えてきたかを計算し、その分の除水を行います。
たとえば、2kg増えてきたときに4時間の透析を行うとすれば、1時間あたり500gの除水を行います。
一般的には、時間あたりの除水量は体重の1.2%程度に抑えておいた方がいいと言われています。
つまり、60kgくらいの人では、一時間あたり700gくらいになるのです。
ただ、全く尿の出ない患者さんで、びっくりするほど増えてくる方が時々いらっしゃいます。
そうすると、一時間あたりの除水量もかなり多くなってしまいます。
それで、やっと講演で聞いた動脈硬化の話に戻ります。
透析患者さんの血管は、石灰化が進んで、まるでガラス管の様な動脈になっていきます。
このときに、石灰化のない動脈でしたら、除水を多くして血管内の水分をどんどん引いていっても、動脈がそれなりに縮んで対応しますが、石灰化の強い動脈だと、大量の除水を行っていくと、透析後半に急激に血圧低下を起こしたりするのです。
ひどいときは、170から90mmHgとか落ちてくる場合があります。
この様な急激な血圧低下の何が悪いかと言いますと、狭心症発作を起こす可能性があるようなんです。しかも、透析患者さんの狭心症は胸痛などの症状がないことが多いと言われています。
特に問題なく経過していたのに、急激に肺に水がたまっていて、心不全になっていた時は、こういうケースが多いそうです。
それではどうすればいいかと言うことですが、
1.無理な除水がないように、しっかり水分制限を行うこと。
(水分制限の基本は塩分制限です。塩分を控えれば水分は自ずと制限されます。)
2.長時間の緩やかな除水を行うこと
3.石灰化が起こらないような十分な透析を行うこと
この様な事が必要となってきます。
1.2に関しては、患者さんの努力によるものが多いですが、3は我々が努力すべき事です。
当クリニックでも、常に十分な透析を行うことを心がけております。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。