久しぶりに透析のお話
援腎会すずきクリニックでは、『透析をやって元気になろう』を目指しています。
そのために、十分な量の透析を行うことを心がけています。
透析の時間は長い方が優れていますし、血流量も多い方が良いと言われています。
とにかく多くの血液をダイアライザーを通して毒素をぬくことが大切なんです。
以前記事にした総血液処理量(一回の透析で、どのくらいの血液を処理しているか)を増やす事が大切であると言われています。
そして透析の方法は、通常の血液透析よりも濾過透析の方が優れていると言われています。
通常の透析は、血液と透析液の間にある半透膜を介して、その濃度差で物質を移動させ、尿毒素が血液から透析液に移動して血液をきれいにする方法です。ですから、半透膜の孔を通りやすい小さな物質しか除去できません。
透析が始まった頃は、小さな物質だけを抜くだけでも効果があったのですが、長い年月、透析を受けている人が多くなると、もっと大きな物質を抜かないとずっと元気でいられないことがわかってきました。その大きな物質の代表が透析アミロイド症の原因物質であるβ2マイクログロブリンです。
大きな物質を抜く方法で最も簡単なのは、孔を大きくすることですが、重要なタンパクまで抜いてしまいます。そのため考えついたのが、血液と透析液の間で水を大量に移動させることで、水と一緒に移動する性質の大きな物質を移動させて除去する方法です。これが血液ろ過なのです。
それでは、濾過透析にはどのくらいの効果があるのでしょうか。
1.普通の透析で取りきれない老廃物の除去
β2マイクログロブリンを除去し透析アミロイドーシスを改善させる他にも、手根管症候群、心臓などの各種臓器へのアミロイドの沈着、破壊性脊椎炎などの合併症を予防し、全身の痒み、下肢のいらいら感などの不愉快な症状、不眠、色素沈着を改善すると言われています。
かゆみが強く、濾過透析を希望して当院に移ってきた患者さんも2名ほどいらっしゃいますが、かゆみはかなり改善したとおっしゃっておられます。
2.透析中および普段の血圧の安定
濾過透析を行うことで、透析中の血圧が安定し、血圧が低下する透析困難症に有効だと言われています。そして、普段の血圧も落ち着いてきて降圧剤を減らせる場合があります。
3.貧血の改善
造血阻害因子の除去により貧血が改善すると言われています。
当院に転院してきた患者さんたちは、明らかにエリスロポエチンの使用量が減少しています。
4.食欲の改善
不必要な老廃物が除去されることで、調子が良くなり多くの方が食欲が出てくるといわれます。
これも、患者さんの声から実感できる事であると思います。
ドライウエイトを上げないと血圧が下がる患者さんがかなりいらっしゃるようです。食欲がまして、体重が増えてきたのだと考えています。
これだけ効果があると言われているのに、HDFが主流の方法とならない理由はなぜなんでしょうか。
HDFには専用の透析機械が必要であり、高価なため、普及していないという理由もあります。
そのため、透析をはじめてからの期間が長い患者さんで、手根管症候群、異所性石灰化による関節痛があってアミロイドーシスなどの問題を抱えている方や透析困難症で透析中に血圧が下がってしまう方だけに、HDFを行うことが多いようです。
援腎会すずきクリニックでは、当院で透析を希望する全ての患者さんに、濾過透析を提供できる体制を整えています。
施設見学も随時行っておりますので、お気軽にお電話ください。
透析液清浄化報告9月号
今月の当院で使用している透析液のエンドトキシン濃度及び、最近培養検査の結果が出ました。
ET活性値:0.4 EU/L未満
生菌数:0.1 CFU/mL未満
でした。
日本臨床工学技士会の出している透析液清浄化ガイドラインには、
透析用水生物学的汚染管理基準
ET活性値:50 EU/L未満 目標値 1 EU/L未満
生菌数:100 CFU/mL未満 目標値 10 CFU/mL未満
測定頻度:月1回以上測定
とあります。
当院では、2種類の細菌培養測定装置を使っています。
培養検査は臨床工学技士が行っていますが、取り方がちょっと雑だとすぐに細菌検査で陽性になってしまいます。
透析液を取り出す場所が汚れていると菌が出てしまうのです。
透析液をきれいにするだけでなく、きちんと検査が出来ているか確認する事も必要なんです。
陽子線治療
10月にクリニックに近い南東北病院で、陽子線治療センターが開設されるとのことです。
それに伴い、昨日、陽子線治療のセミナーがありましたので行ってきました。
陽子線治療は、癌の治療法で、放射線治療の一部です。
通常の放射線は、皮膚の部分が放射線の量が最も多く、身体の中に入っていってから徐々に減っていきます。そのため、皮膚から癌の部分までと癌より後ろの部分にもかかってしまい、副作用が生じます。
これに対して、陽子線はエネルギーが強い部分を決められるので、その部分だけ強いエネルギーを出すことが可能だと言うことです。
そのため、通常の放射線に比べて副作用が少なくなり、副作用が心配で今まで強い治療が出来なかったものに対しても、強い治療が出来るようになったとのことです。
これまで一番よく用いられてきたのが前立腺がんの治療と言うことですので、泌尿器科には朗報です。
前立腺のすぐ後ろには大腸があり、大腸に放射線がかかると副作用が出る恐れがあります。
周囲への影響が少ない治療はとてもいい治療となるでしょう。
ただ、保険適応がなく、現時点では300万円くらいの費用がかかるようです。ただし欧米ではその3倍の費用がかかる治療で、設備投資を考えるとかなり安価な治療費だという話でした。
治療方法に選択肢が増えることはいいことだと思います。
この様な治療が、早く保険適応になってくれるといいですね。
夜間頻尿について
前回夜間頻尿の原因に夜間多尿があることを記事にしました。
それで、今回は夜間頻尿について詳しく説明したいと思います。
夜間頻尿は、毎日1回以上排尿のために起きなければならない状態を言います。
症状は、加齢と共に増えていき、高齢者では半数以上の方が症状を有していると言われています。
それでは、夜間頻尿によってどの様な不具合が生じるのでしょうか。
まずは、睡眠障害をを生じることが上げられます。
そして、夜間転倒や目覚めた後のふらつきが起こり安くなります。
高齢者の転倒の3割近くは夜間トイレに行くときに生じると言われ、大腿頚部骨折の10%は夜間排尿時に起こると言われています。
著しくQOLを悪くする症状であると言えます。
原因としては、次の3つの場合があります。
1,膀胱容量減少
2,夜間多尿
3,1と2の混合
前立腺肥大症や過活動膀胱により1を生じている場合は、α1ブロッカーや抗コリン剤などの有用な薬があり、治療によって改善する場合が多いですので、是非とも泌尿器科の受診をお勧めいたします。
それで、夜間多尿ですが、睡眠中の尿量が1日尿量の35%を超える場合と定義されています。
原因としては、様々なものがあります。
まずは、高血圧や動脈硬化、心不全によりホルモンバランスが変化して夜間多尿となる場合。糖尿病や内服している薬による影響。睡眠時無呼吸症候群でも夜間多尿を生じると言われています。
治療としては、まずは水分の取りすぎを是正しましょう。
よくテレビの健康番組で寝る前の水分摂取が脳梗塞や心筋梗塞を防ぐと言われていますが、そのような根拠を示すデータは無いようです。
夜間の転倒のリスクなどを考えますと、夜間頻尿のある方ではお勧め出来ないような気もします。
夜間多尿の場合、夕食後の水分を控えることが有効です。特にお茶やコーヒーなどの利尿作用のある飲み物は避ける方がいいでしょう。
お薬ですが、少量の利尿剤を午後から夕方の早めの時間に内服することで、寝る前に尿を出してしまい夜間の尿量を減らす方法があります。
また、原因となる糖尿病や睡眠時無呼吸症候群の治療を行うことも重要です。
以上、夜間頻尿について徒然に書いてみました。
困っている方は、どうぞ泌尿器科を受診してみてください。
排尿記録を付けてみませんか。
援腎会すずきクリニックは、泌尿器科のクリニックですので、頻尿を訴えて来院される方も多いです。
超音波やオシッコの勢い検査、そして採血などの検査をしてお薬を出しますが、患者さんにお願いして家でやって来てもらう検査があります。
それが、排尿記録です。
コップをお渡しして、朝起きたときから次の朝起きたときまでの排尿の時間と尿量を記録してもらいます。
患者さんにとっては、仕事で出かけるときに行うのが難しく、ちょっと面倒な検査になりますが、排尿の状態を把握するには非常に大切な検査です。
まず、一日の全尿量が分かります。
本人は気づかなくても、頻尿の原因が水分の取りすぎだったという場合もあります。
そして、1回排尿量が分かります。
1回尿量が常に200ml以下の場合は、膀胱自体に問題があり、尿が貯められないことが考えられます。
そして、夜間頻尿で来院された患者さんでこの検査を行うと、夜寝ている間の尿量がかなり多い方がいらっしゃいます。
夜間多尿と言う状態で、夜間の合計の尿量が1日尿量の35%以上の場合と定義されます。
夜間多尿があると、ある程度の尿をためる能力が膀胱にあるのに、それ以上の尿が作られてしまい、夜中にオシッコに行くようになるのです。
高齢者の方では、半数以上の方に見られるとも言われています。
この様に、排尿記録は頻尿の診断には非常に有用です。
しかも、目盛りの付いた大きめのコップがあれば、自宅ですぐに行えます。
是非やってみてください。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。