2010.02.14
診療
研究
その他(医療関連)

限局性前立腺がんの低侵襲治療1

昨日、福島市で限局性前立腺がんの低侵襲治療についての講演会が有りました。
演題は、
1、HIFU(ハイフ)療法
2,トモセラピー
3,陽子線治療
でした。

どれも非侵襲的な早期の前立腺がんに対する治療です。
放射線治療としては、他に小線源療法という治療法があります。
今回は、これらの治療法について書いてみます。

まずは、HIFU(ハイフ)療法からです。

高密度焦点式超音波(HIFU:ハイフ)療法とは、肛門から入れた機械から強力超音波が前立腺に向けて照射されて、そのエネルギーで癌を凝固壊死させる装置です。


A:HIFU本体
B:超音波発生プローブ
C:プローブ先端
D:超音波が照射される範囲(イメージ)
公立藤田総合病院ホームページから

当初は前立腺肥大症の治療法として研究されたのですが、あまり成績が良くなく、10年前より前立腺がんに対して行うようになり、低侵襲な治療法として注目されてきています。

焦点領域の温度は80~100℃に上昇するのですが、周囲の臓器にほとんど影響を与えなく、抗凝固剤(血液サラサラの薬)を一時的に中止しなくても治療できるのが特徴です。
麻酔は腰椎麻酔で行うことができるそうですが、抗凝固剤を飲んでいる方では、全身麻酔で行うことになります。

HIFU療法の治療成績では、前立腺内に限局する悪性度の高くない癌の場合の非再発率は80-90%くらいあり、早期がんでは開腹手術に匹敵する治療法と言われています。
しかし、病気が進行した高リスク癌の成績は極端に低くなり、有効性は低いようです。

また、一度だけしかできない開腹手術や放射線治療と異なり、患者さんによっては残存がんに対し複数回の治療が可能です。
さらに、開腹手術や放射線治療後の局所再発に対しHIFU療法を施行することも可能です。

合併症としては、最も多いのが尿道狭窄で、約15%と言われており、術後は一定期間尿道カテーテルを留置しておく必要が有ります。そして、もっとも重篤な合併症は膀胱直腸ろうですが、ほとんどが初期の装置で起こっているようです。
尿失禁は、術後一時的なもので、勃起障害も3割くらいと、前立腺全摘術に比べ非常に低率です。

この治療法は、開腹手術に比べ明らかに術後合併症が少ないため、基礎疾患があり開腹手術に耐えられない方や、75歳以上の高齢者にも可能です。

この様に、HIFU療法は、早期癌の患者さんであれば、特に年齢制限は無く、手術の合併症である勃起障害や尿失禁も少ない治療法であり、入院期間も短い治療法です。

福島県内では、公立藤田総合病院で昨年1月より行っており、当院でも希望された方をご紹介しています。

 

2010.02.09
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研究
生活 / くらし

血液透析患者の死因は2割が心臓突然死

成人で透析を受けている方の死因の約2割が心臓突然死であることが、今年の日本疫学学会で発表されたと言う記事が日経メディカルオンラインに載っていました。

発表された公衆衛生学の先生によると、
「血液透析患者において心臓突然死による死亡率は非常に高く、また発見が遅れるケースも少なくないことが分かった。
この調査結果は、血液透析患者に対する注意深い経過観察の必要性と、血液透析患者における心臓突然死を防ぐための対策が必要であることを示している」とコメントされています。

僕自身としては、これほど多いのかとびっくりしたのが正直な感想です。
それと共に思ったのが、〝血液透析患者における心臓突然死を防ぐための対策〟とはなんなのかと言うことです。

心臓突然死の半数以上が目撃されずに死に至っていたと言うことも記載されていましたが、できるだけ早期発見ができる体制を作る事でしょうか。

透析患者さんでは一人暮らしの方もかなりいらっしゃいますので、その方たちが常に緊急連絡とれる体制というのもなかなか大変ではないかと思います。

この様な話になると、どうしても何か有ったときの対策というのが注目されます。
でも、本当は何か起こらないための対策が大切だと思います。

一般の方では、これほどまでの突然死と言うことは起こりません。
そしたら、何が違うのでしょうか。

一番は動脈硬化です。
透析患者さんでは、高リン血症により異所性石灰化がおこり、動脈の弾力性がなくなり硬い動脈になります。
動脈のプラークも増えて脳梗塞や心筋梗塞も起こしやすい状態になります。

そして高血圧です。しかも、早朝高血圧があると脳卒中、心筋梗塞を起こすリスクが数倍に高くなります。

これらを回避するための唯一の方法は、十分な透析を行うことです。
たとえば、長時間透析を行っている方では、高血圧の頻度が非常に少なくなります。
そして、リンの値も低くなるので、異所性石灰化も起こりにくくなります。
さらには、透析中に無理な除水を行うことがなくなるので、透析中のショック状態を回避し、昇圧剤を減らすことができて、透析中に起こり問題である無痛性の心筋梗塞も起こす可能性が低くなります。

現状の週3回4時間血流200の透析でも、日常生活を過ごすためには何とか透析量は足りているのかもしれません。
でも、10年、20年後に突然死を起こさない為には、しっかり透析を受けると言うことが大切ではないかと僕は思っています。

 

2010.01.31
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透析量の基準

時々他施設の患者さんを診察する機会が有ります。
透析を診療の中心にしている歴史が古い施設でも、透析導入してから数年経過しているのに、週3回3時間透析だったり、週2回で4時間未満の透析を受けている方がいらっしゃいます。

いろいろ事情が有ると思います。
たとえば、送迎の関係から週3回は連れてくることができないとか、仕事の関係上4時間はできないとかあると思います。

ただ、そのような方では他の患者さんよりも早い段階で体調不良を訴える場合が多いようです。
体調不良は急にやってきます。
それまで大丈夫だと思っていても、突然具合が悪くなる方が多いようです。
それは、何とか耐えていた身体が耐えられなくなったからではないかと思うのです。
透析不足なのですから当然だと思うのですが。

現在、透析量を計る基準は、KT/Vだったり、除去率だったり、クリアスペースだったりいろいろあります。
でも、透析不足であるかどうかを判断する基準は無いようです。

CAPDですと、自尿と透析排液を合わせたWeeklyCCrやKT/Vで一定以下となると透析不足だと判断できますが、血液透析ではそのような指標は有りません。
もしくは、僕が知らないだけかもしれませんので、このブログを見た方で知っている方がいらっしゃったら教えてください。

そのような指標が無いことが、透析不足を生んでいる1つの要因となっているのではないかと思うのです。

2010.01.31
診療
開業 / 病院経営
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透析食

援腎会すずきクリニックでは、郡山市内にある株式会社商工給食から透析食を宅配してもらっています。

開院当初より、透析患者様の栄養管理が重要であると認識していました。
また、透析時間の延長を勧めて行く上で、透析後に昼食を取るのでは昼食の時間が遅くなってしまう状態が問題であると考えていました。

近隣のお弁当屋さんにお弁当を頼むことも検討していたのですが、塩分制限の有る腎不全の方たちに一般のお弁当を出すことがいいのか悩んでいました。

昨年、たまたま商工給食が来院し、塩分2gの透析食を仕出ししていて他の施設でも実績が有ると言うことを聞きました。

現在は、毎日10名程度の患者様がオーダーしています。

一食500円です。
実は、肥満の院長も塩分を気にしているので、週3回このお弁当を食べています。
料金のやりとりは、商工給食が持ってくる食券を患者様が買う仕組みですので、当院はその仲介をしているだけです。

また、当院管理栄養士が月1回試食を行い、皆さんが家庭で自炊して作る食事の目安になっているかについて検討してくれています。
そして、3ヵ月に1回は商工給食の管理栄養士と面談して問題点をお知らせしています。

塩分2gの透析食を週3回食べることは、家庭での食事の指標となること、昼食の時間が不規則にならないことから、とても大切だと考えていおります。

2010.01.28
診療
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インボディ(体組成計)を購入しました。

以前、インボディという体液測定装置の事を記事に書きました。
高額な機械なのですが、身体の中の水分、体脂肪量、筋肉量が計れる装置です。

透析後にインボディで浮腫値(ECW/TBW)を計れば、ドライウエイトが適正であるか判断できます。
また、体脂肪量や筋肉量を見ることで、栄養障害が有るかどうかを判断することができます。

以前より是非とも購入したいと考えていましたが、今回やっと決心して注文いたしました。

栄養状態の管理は、透析患者さんを診ていく上で最も重要なポイントの1つですので、ドライウエイトの管理と合わせ、とても頼もしいヤツという感じです。

是非ともこれからの診療に役立てていきたいと考えています。

 

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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