造影剤腎症
土曜日に透析医会福島支部で、秋田大学腎置換医療学講座の教授である佐藤滋先生の講演が有りました。
その中で、造影剤腎症(Contrast-induced nephropathy: CIN) についての話がありました。
造影剤腎症は、造影剤投与後48時間以内に生じた血清クレアチニンレベルの25% 以上の上昇で定義されます。
以前より、腎機能が悪化している患者さんに造影剤を使用した場合には、造影後に透析をする方が望ましいと言われてきました。
ただ、最近では点滴を行い、利尿をつける方がいいという考え方が主流になってきています。
最近発表された論文の紹介が有りました。
血清クレアチニンが3以下の方に造影剤を使用した時の検討で、造影剤使用直後から補液により利尿をつけた患者さんの方が、造影後に透析を行った患者さんよりも有意に造影剤腎症の頻度が少なかったそうです。
しかも、利尿をつけた場合の造影剤腎症の発生率は非常に低かったとのことです。
今までの常識を覆す様な内容でした。
ただ、血清クレアチニンが3以上ではやはり透析を行った方が良さそうで、造影剤は現在一般的に使用されている低浸透圧造影剤を使用して、造影剤の量も100mlくらいまでだそうです。
心臓カテーテル検査などの大量に使う場合は透析を行う方が望ましいとのことです。
また、透析患者さんに造影剤を使用した論文の紹介も有りました。
造影剤100mlを透析患者さんに3148回投与したが、次の透析までに緊急透析が必要となるような重篤な有害事象は無かったと言う内容です。
こちらも非常に参考になりました。
現在当院でもシャントPTA後の透析は、乏尿の方の場合行っておりませんが、少し不安に思っていました。
間違っていることをしてないと分かり安心しました。
当院における透析患者の栄養管理6
透析歴が長く合併症が多い方では、なかなか食事摂取量を増やすことが出来ません。
そうするとやっぱりやせが問題となってきます。
なかなか改善できない方が多いです。
なんとか少しでも摂取量が増えるように、ご家族に対してもお願いしたりしています。
最後に、転院してきたばかりの方です。
この方の場合、GNRIで栄養障害リスクと出たのですが、MISではリスクなしとなりました。
このような方もいらっしゃるので、GNRIでスクリーニングしてMISを行う方法は有用だと思います。
11月に評価して対象となる患者さんを選び、カンファランスを開いて積極的な栄養介入と透析方法の変更を行ったところ、若干ですが栄養障害リスクのある患者さんのGNRIが上昇しました。
まとめです。
当院における透析患者の栄養管理5
GNRIの結果からMISを行い、栄養を改善する試みを行った方について書きます。
この方は、GNRIが90以下が続いている方です。
MISの結果でも9点と中等度栄養リスクとなります。
管理栄養士の話では、偏食が強いのが問題だそうです。
お酒も飲むし、本人は食べているといいますが、しっかりとした栄養素が取れていないと言うのです。
そのため、アルブミンが低下しています。
当院では、大量置換前希釈オンラインHDFを行っていましたが、この場合4型のポリスルフォン膜を使いますので、アルブミン漏出量が多くなります。
そこで、栄養に関しては優れていると言われているPMMA膜を使用したオンラインHDFとして、さらにIDPNを併用することとしました。
栄養指導は、初回指導以外は、ベッドサイドで毎月行ってきましたが、仕事で忙しく来院できない奥様へ管理栄養士から手紙を書いて少しでも偏食が改善するような努力をしています。
こちらの方もGNRI90以下が続いています。
この方は、当院に転院してからとても体調が良くなったと話してくれました。
体調が良くて、運動が出来るようになったと喜んでいました。
毎日数キロの散歩をするそうです。
我々も喜んでいたのですが、どうも痩せてきている事が分かってきました。
原因は、透析量を増やし、オンラインHDFを行った事と、そのため、体調が良くなり十分な運動が行えるようになった事でした。
通常は、体調が良くなり食欲もわき、どんどん太っていきます。
糖尿の方も多い当院では、食べ過ぎないように指導する事もしばしばです。
でも、この方の場合、元々の糖尿病の食事療法を厳格に続けていて、透析が開始してからもその食事を変えておらず、転院後に透析量増加させても食事量を増やさなかったため、痩せてしまったと言うことです。
繰り返し栄養指導を行いましたが、一度固まった食事に対する考え方を変えることはなかなか困難であり、オンラインHDFを一時中止することとしました。
その後、徐々に食事摂取量が増加し、GNRIも上昇したので、現在では再びオンラインHDFを行っております。
高齢者では、一度決まってしまった食事摂取量を増やす事は容易でないです。
この部分は気を遣う所です。
当院における透析患者の栄養管理4
当院で現在行っている栄養管理の方針は、1次スクリーニングで当院の患者さん全員にGNRIを行っています。
ドライウエイトとアルブミンを入力するだけですので労務的にはたいしたことは有りません。
そして、GNRI値91未満だった方に対しMISを行っています。
MISは当院管理栄養士が計算してくれています。
最終的にMISで栄養不良患者と判定できた方について、定期的な栄養カンファランスで治療方針を決めています。
この方法は、日本腎臓財団の山田康輔先生の論文を読んで開始した方法です。
山田先生の論文では、血液透析患者の栄養スクリーニングではGNRIが最も簡便かつ正確性が高いと書かれています。
ちなみに、〝管理栄養士山田のホームページ〟の栄養スクリーニングツールと言うところに、SGAフォーマット、GNRI式、MISフォーマットがそれぞれ載っています。
昨年11月に行った当院でのGNRIの結果です。
30名中、91以下の中等度栄養障害が4名、重度栄養障害が1名でした。
エクセルにDWとアルブミン値を入れると、リスクなし、軽度、中等度、重度と言う評価まで出てくるようにスタッフが作ってくれて便利です。
次回は、栄養指導を行い2次判定のMISを行って、その結果から栄養カンファランスを行った方について示したいと思います。
当院における透析患者の栄養管理2
透析患者さんの栄養評価法として、代表的なSGA(主観的包括的アセスメント)、MIS(Malnutrition Inflammation Score)、GNRI(Geriatric Nutritional Risk Index)を挙げました。
それぞれ説明していきたいと思います。
SGは、実際に患者さんを観察することで栄養状態を評価しようとするものです。そのため、評価する人間が実際に患者さんを診た主観で評価されます。
基本的にアセスメントに使用する項目は、病歴と身体計測値だけで行えます。
そのため、NSTのメンバーなどの熟練な医療関係者が行うにはいいのですが、沢山の業務の1つとして行っている我々にとってはちょっとハードルが高いです。
SGAは初診時の評価に適しており、病歴の聴取と簡単な診察で行えて、採血などの客観的評価が行えにくい在宅患者の栄養スクリーニングを行うのに有用と言われています。
当院でもSGAを栄養障害が疑われる患者さんに行う為に試行錯誤しましたが、これまで主観的な評価をしたスタッフが1人もいないため、1人の評価を行うのにかなり時間が掛かってしまいました。
さらには、主観的な評価ですので、定期的に採血を行い、データの蓄積が有る透析患者さんにはあまり向いていない栄養評価方法かもしれません。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。