透析の仕組みとオンラインHDF4
何で、そんなに良い治療なのに皆さんに行うことが出来ないのでしょうか。
ろ過透析は、透析液の入り口とろ過用の点滴の入り口があり、出口は一つです。
2カ所の入り口から入る透析液と補液を厳密な除水管理下に一つの出口から排出させなければ行かないため、ろ過透析専用の機械が必要となるのです。
専用の装置は一般の装置に比べ高価ですので、施設内で装置をそろえるのは大変です。
さらに、サブラットという点滴の液を用意するのですが、サブラット自体も価格が高く、しかも何本も使用します。
通常はサブラットは2リットルですから、10リットルのろ過を行う為にはサブラットが5本必要となります。
そうすると、ろ過透析の保険点数も高くなり、只でさえ高額な透析の医療費をさらに高くしてしまいます。
実際に、ろ過透析を行っている患者さんの保険請求額は、通常透析を行っている方に比べて一月で数万円高くなります。
現行の医療保険では限られた患者さんを適応とせざるを得ないのです。
そこで、ろ過透析を安価に提供できないかと言う観点から考え出されたのがオンラインHDFです。
透析の仕組みとオンラインHDF3
濾過透析の特徴です。
一般的な小分子である尿素は、拡散を主とする血液透析の方が血液ろ過よりも除去率が高いです。
しかし、拡散で除去しにくいβ2マイクログロブリンは、血液ろ過の方が血液透析よりも除去率が高くなります。
ですから、両方であるろ過透析が最も効率がいい透析方法となります。
ちなみに、生体腎は大量の血液をろ過して尿を出しています。
一日量にろ過される量は180リットルで、大部分の尿が尿細管から再吸収されて尿として出されるのは約1.5Lくらいです。
大量のろ過を連日行っていますので、ろ過だけで老廃物の除去が出来ます。
一般的なろ過透析(HDF)の適応は、通常の透析では改善しがたい症状が対象となり、以下のような症状が有る方に行われています。
透析アミロイドーシスの骨・関節症状
皮膚のかゆみ、色素沈着
いらいら感、不眠
むずむず足症候群
末梢神経障害
エリスロポエチン不応性貧血
透析低血圧
などです。
通常透析では、なかなか改善できないような症状がHDFでは改善されるのです。
- 2010.03.22
- 診療
透析の仕組みとオンラインHDF2
次にろ過についてです。
ろ過というのは、圧力をかけることで液体ごとそのまま半透膜の孔を通しています。
そのため、移動する物質は半透膜を通る物なら、大きさに関係なく通ります。
ただし、圧をかけて通すのですから、効率は悪くなります。
血液ろ過はどうしても効率が悪くなるので、小分子の抜けが悪いです。
ただ、生体腎ではろ過により尿毒素や水分の排泄が行われていますので、実はろ過が最も生理的な方法です。
そこで、一般的に行われているのが拡散とろ過を同時に行うろ過透析です。
これならば、抜けにくい物質は濾過で、効率は拡散で行う事が出来ます。
通常の透析でも、体重増加分の水分を引きますので、体重増加分のろ過を行っています。
ただ、ろ過透析HDFは積極的に補液をすることで、ろ過量を増やした治療法と言えます。
透析の仕組みとオンラインHDF1
これまで幾度となく書いてきましたが、再び透析の仕組みとオンラインHDFについて書いてみたいと思います。
血液透析の原理です。
透析は、外側が透析液で、内側が血液が流れる構造で行われます。
そこで電解質補正であったり、水分補正であったり、不純物の除去を行っています。
この中空糸には、老廃物が通れるくらいの穴が多数空いています。
もちろん水分も通ります。
ただ、血液や大きな蛋白は通れません。
透析の原理は、拡散とろ過、吸着で行われます。
物質の移動に一番関係しているのが拡散で、次にろ過です。
吸着は一般的な膜ではそれほど多くないですので、今回は考えないでおきます。
拡散というのは、半透膜と言う小さな孔を介して物質が移動する事です。
子供の頃学校で習ったかと思います。
ダイアライザーにある孔も同様に物質が移動します。
特徴としては、濃度の差で物質が移動しますので、効率が良いです。
そして、小さい物質が移動しやすいが大きな物質は通りにくい事もあります。
何で孔よりも小さいのに大きめの物質は通りにくいのでしょうか。
川も同じですが、液体が流れると中心部は流れが良く、辺縁は流れが悪くなります。
実は辺縁には境膜という層が出来て、物質の流れが悪くなるのです。
ただ、小さい物質の場合は受ける影響は少なくなり、十分に拡散されるのですが、大きな物質では境膜を超えるのが大変になると言われています。
透析で血流を上げると効率が良くなるのは、境膜が薄くなるからではないかと思います。
肺炎球菌ワクチンの効果
読売新聞のニュースで以下の記事が有りました。
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肺炎球菌ワクチン効果 高齢者「臨床」で確認
三重大グループ
三重大は15日、国内では使用例が少ない肺炎予防の「肺炎球菌ワクチン」について、竹井謙之・医学部教授のグループが多数の高齢者を対象に臨床研究を行った結果、高い予防効果があることが分かったと発表した。研究をまとめた論文は世界4大医学誌の一つ「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」の電子版に掲載された。
グループは2006年以降、三重県内の高齢者施設23か所の入所者1006人(55~105歳)の協力を得て、502人に肺炎球菌ワクチン、504人に生理食塩水を投与し、3年間経過を見守った。投与後、高齢者が重症化しやすい肺炎球菌を原因菌とする肺炎に51人が感染。生理食塩水の投与者は37人で、うち13人が死亡したが、残るワクチン接種者14人に死者はいなかった。
政府が接種を推奨している米国では高齢者の70%が接種済み。新型インフルエンザの合併症対策から予防ワクチンが注目されているが、国内では公費助成が進んでいないこともあって普及しておらず、接種率は8%にとどまっている。
中心となって研究を進めた同大の丸山貴也臨床研究医は、「多数の高齢者を対象にした本格的な調査、研究は世界でも例がない。日本人の死亡原因4位の肺炎を予防すれば、医療費削減にもつながり、公費助成は有効」と話している。
(2010年3月16日 読売新聞)
http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/100316_4.htm
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透析患者さんも免疫力が落ちていますので、肺炎球菌による肺炎にかかり安いでしょうから、接種していない方は13人が死亡し、接種した方で死亡した方はいなかったということはすごいことです。
肺炎球菌ワクチンも5年経過すれば再接種が可能となってきましたので、接種を希望される方が増えるといいですね。
一部の自治体では公費助成が有りますが、通常は脾臓摘出者以外は全額自費となります。
当院では7000円で行っております。
ご希望の方はお知らせください。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。