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- 2015.04.22
- 一般
PSA検診の有用性について
今日はPSA検診について書きます。
PSAは 前立腺特異抗原、prostate-specific antigen の略語で、前立腺の細胞から分泌される物質です。
PSAは精液中に分泌されますが、ごく微量が血液中に出てくるのですが、前立腺がんでは血液中に放出されるPSAが多く、PSAは前立腺がん診断に用いられます。
郡山市では昨年より前立腺癌を早期に発見する為、PSA検診を開始しています。
しかし、厚生労働省の研究班は、「現時点で、集団検診として実施することは勧められない」指針案を出して居ます。
検診での早期発見による死亡率の減少効果が不明な上、精密検査などによる合併症などのマイナス面が無視できないと言うのです。
検診を行っても行わなくても死亡率は変わらないと言うことと、検査・手術などで命を落とすリスクも高いと言う事からです。
これは、米国予防医学作業部会(US Preventive Services Task Force:USPSTF)がPSA検診による利益は曖昧で、不利益(過剰な検査や治療による有害事象)は明確であるとし、米国においては、前立腺癌を疑わせる症状のない男性を対象としたPSAを用いた前立腺癌検診は、年齢を問わずこれを行わないように勧めたことを受けての方針です。
しかし、日本泌尿器科学会では、USPSTFの勧告(案)を今のわが国に適用することは適切でないとしています。
その理由は
1)勧告案の分析がPSA検診の利益を過小に評価している
2)米国とわが国の前立腺癌診療の実態が大きく異なる
からです
4月10日の金曜日、郡山医師会前立腺癌委員会主催の勉強会がありました。
講師は、群馬大学泌尿器科準教授の伊藤一人先生でした。
伊藤先生は、PSA検診を推進する立場にいる方です。
日本でのPSA検診の有用性について詳しく解説してくださいました。
また、米国でのUSPSTFの主張は間違っていると言う事でした。
詳しくは下記サイトに書かれていますが、簡単に書きますと、USPSTFが根拠としている論文が間違っていると言う事になります。
米国でPSA検診を推奨しない方達は米国で行われたPLCO研究を、PSA検診の有効性が否定された研究として採用しています。
PLCO研究は前向きの研究で、対象者をPSA検診を受ける群と10年間PSA検診を受けない群(コントロール群)に振り分けています。
しかし、研究が行われた時点ですでに米国ではPSA検診が普及していました。
その為、コントロール群に入ってもらった方達でもPSA検診を受けた方がたくさんいたと考えられます。
このことから、PSA検診とコントロール群で死亡率に差が出なく、PSA検診は有用性が無いと言う結果にことになりました。
コントロール群で見つかった癌を調べると、転移癌が2.7%と非常に少なく、検診群の2.1%と差が有りませんでした。
日本での調査ですが、PSA検診が行われていない地域で見つかった前立腺癌に占める転移癌の割合は約35%と高値です。
PLCO研究のコントロール群と検診群の成績が変わらないのはこの様な理由となります。
http://www.com-info.org/ima/ima_20120620_itou.html
これに対し、スエーデンのイエテボリで行われた研究では、検診介入群がコントロール群と比較して、44%の死亡率低下効果が得られることが証明されています。
この研究はLancet Oncologyと言う厳しい審査のある雑誌に投稿されており、信頼性の高い研究です。
44%と言う大きな死亡率低下効果が証明されたPSA検診は推奨されるべきがん検診といえます。
現在、わが国ではまだまだPSA検診の普及率は悪く、前立腺がんの死亡数は増加しています。
これからもPSA検診が普及していくように記事としました。
プロフィール
こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。