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2013.06.17
診療
研究
仕事 / 職場

温故知新Vol8

人工透析を含めた体外循環療に関する製品を販売しているガンブロ社というメーカーがあります。
当院でもAN69膜という透析膜を使用しています。

ガンブロ社よりAN69 膜を使用した臨床研究集が定期的に発行されています。

http://www.gambro.com/en/japan/Products/Hemodialysis/Dialyzers/Crystal-ST-and-H12-plate-dialyzers/AN-69-/

今回、温故知新Vol8に文章を書いて欲しいと依頼がありました。
それで、今回『しっかり透析、時々積層型』
と言う文章を載せて頂きました。

 

現在、週3回4時間、血流200ml/分の治療が標準的な透析として行われている。ただ、これでは明らかに透析不足であり、生きていく為に最低限の治療であって厳しい食事療法や薬物療法が必須となる。

そこで、患者の生命予後を改善させるために①【透析時間を延長させる】②【血流量を増加させる】③【透析液清浄化の上オンラインHDF】を行うなどの方法が取られている。さらに、施設によっては【週4回透析】や【隔日透析】を行っている施設もある。これらは、元仙台社会保険病院の鈴木一之先生(現かわせみクリニック)が出版した『しっかり透析のヒケツ』にも書かれており、私も、透析時間延長、血流量増加、オンラインHDFを『しっかり透析』と名付け頑張っている。

開院当初、転院してきた患者は全て4時間もしくは4時間未満の透析患者ばかりであった。時間延長のメリットを繰り返し説明、説得し、時間延長を促してきた。転院患者のほとんどが高齢新規導入患者であったこともあり、透析時間延長のメリットを快く理解しても貰えることはなかった。4時間から4時間半に延ばしたら、「残りの30分で具合が悪くなる」とか、月曜日に除水量が多いので、透析時間を延ばせば、「月曜日は時間が長いから具合が悪くなる」などと言われてしまう。

何度も説得し、宥め、妥協させ、なんとか現在では全患者の平均透析時間が4.7時間となった。当院では患者送迎も行っているが、送迎の受け入れは5時間以上の患者のみとしており、そのことはHPにも記載している。

以前は、待合室で雑談している患者に声をかけると、後ろから『時間延ばされるぞ!』なんてヤジを飛ばされていたが、現在は5時間透析の患者が多くなり、そんなヤジも少なくなった。

透析時間を延長することで生命予後が改善する事は周知の事実であり、血圧も適正に低下し、栄養状態は改善され、腎性貧血のコントロールも良好となる。

我々は、患者に対し『減塩をしなさい』『水分を控えなさい』『リンに気を付けて』と日々教育している。それは、患者の状態を良くする為に必要なことだからだ。同様に『透析時間を延ばす』ことは、患者が質の高い生活をする為に大切なことである。透析時間は決して4時間とは決まっていないので、是非とも時間延長を患者に勧めて欲しい。

当院は当初から高血流透析を目指してきた。1,2年前までは最大300ml/分だった血流も、15Gや14Gの穿刺針を使用するようになってからは、400 ml/分の患者も増加してきた。このため、透析時間延長と高血流との効果でKt/Vの平均値が2を越えるまでになった。

過去には6時間透析していた患者もいたが、殆どが5時間にもどるか、週4回に移行している。もちろん、透析時間は長いほど良いと考えているが、高血流を行うことで患者が6時間透析のメリットを感じてくれないのかもしれない。

このしっかり透析は高齢患者に対しても同様に行っている。高齢者は活動量が少ないので透析量を下げても・・・と言う意見も聞くが、私は反対である。高齢者でもしっかり透析を行えば食欲が増加し体調が改善する患者もたくさん観てきた。例を挙げれば、80才を越える女性で転院後にドライウエイトが5kgも増加した患者を経験している。

ただ、高齢透析患者の場合、常に注意を促していないと急激に具合が悪くなることがある。特に、栄養状態が悪化する場合が多い。以前は、急激な栄養状態の悪化が見られた場合は、アルブミン漏出量の少ない透析膜に変更したり、栄養状態を保持すると言われているPMMA膜等に変更する事で対応していた。しかし、一度状態が悪くなった患者はすぐには改善しない。最近では栄養状態が悪くなった患者に対してはAN69膜を使用している。AN69膜で何事も起こらない透析を十分に行なってから、徐々に透析膜や条件を元に戻していく方法を取っている。AN69は炎症を下げ栄養を改善する効果があると聞く。炎症が治まらなければ栄養は改善しない。AN69膜は、高齢透析患者の栄養状態を短期間で改善するToolとしてはとても便利な膜なのである。多くの患者がAN69膜に切り替えた後、食欲(栄養状態)も戻り、オンラインHDFや、しっかり透析に戻っていった。

当院でのAN69膜は、“困った時の神頼み”的存在であり、今後もしっかり透析を続けて行く上で、重要な透析膜であると改めて認識している。

 

温故知新Vol8は、第58回日本透析医学会学術集会・総会のガンブロ社のブースで配布されるとのことです。
学会に参加される方は是非ともご覧になってみてください。

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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