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2013.04.07
診療
研究
生活 / くらし

甲状腺超音波検査講習会

 

4月7日の日曜日、県内の医師及び臨床検査技師を対象として行われた甲状腺超音波検査講習会に行って来ました。

この講習会は、県民健康管理調査の詳細調査である小児の甲状腺超音波検査で県内の医師が参画出来るようにする為の講習会です。
当院では、小児の甲状腺超音波検査を行う予定はありませんが、県内で診療を行っていく立場として、被曝による甲状腺癌についてしっかりした知識を得ることは重要と考えておりますので、参加してきました。

午前・午後と昼休みをはさんでの4時間の講演と、超音波検査の実践講習がありました。

内容としては、福島医大副学長の山下俊一先生が座長で、

1 甲状腺癌の病理・診断
2 小児期によく見られる甲状腺疾患
3 甲状腺超音波検診
4 県民健康管理調査の甲状腺検査の実情

について講演がありました。

講演の内容を箇条書きに書きます。

チェルノブイリでは、5000人の小児甲状腺癌が発生し、15名が死亡している。
しかし、癌が進行して死亡したことを確認したのは1名のみである。
多くの患児が他の原因で亡くなった。
手術合併症である両側反回神経麻痺による死亡や交通事故死、そして癌を苦にした自殺

チェルノブイリで甲状腺癌が発生した小児の平均被曝量は500mSVであることに対し、福島では最大でも50mSVであり、チェルノブイリがヨード欠乏な地域である事に対し、日本のヨード摂取量はWHOが必要としているヨードの10倍くらいあるため、癌が発生する可能性は低いのではないか。

広島長崎の外部被爆とチェルノブイリの内部被曝、どちらも100mSV以上の被ばくで甲状腺癌の発生リスクが高まることが知られている。
現段階で得られている福島の外部被曝線量は、大人も子供も含め3mSV未満が99%で、最大は25 mSV1名である。
また、内部被曝の調査でも汚染された食品のみを食べても年間0.244 mSV程度の被曝量と言う計算であり、内部被曝量はとても低い状況にある。

放射線被ばく後の甲状腺癌は、被ばく後から発生までの期間が異なることによって癌の形態が異なる。60年経過して変化が出てくる可能性もある。
小児期に被ばくするという事は生涯リスクを負うということになり、継続的な観察が必要である。

有病率と発見率は異なるものである。
これを同じとして話してしまうことは問題である。
これまでに報告されている小児甲状腺癌の発見時点でのサイズは、日本では4.1cmなのに対し、ベラルーシでは1.4cmである。
これは、ベラルーシでは小児甲状腺癌が甲状腺エコー検査で発見されるため、早期に発見されるためである。
韓国では、甲状腺癌が日本の14倍発見される。これは、韓国で甲状腺のスクリーニング超音波検査が普及しているためであり、治療の必要が無い甲状腺癌を見つけてしまうことが問題となっている。

甲状腺癌は、ラテント癌(何らかの原因で死亡した者への剖検により,はじめて発見される癌)が多く、フィンランドの調査では35%、日本では11-28%であり、その多くが10mm未満の微少乳頭癌である。

一般に小児甲状腺癌は15歳程度に多く発生する。
それに対し放射線被ばくによる甲状腺癌では、被曝年齢が0-4歳で発生しやすい
また、チェルノブイリで多く見られた甲状腺癌は乳頭癌亜型であり、多発性である。
今回、福島で見つかった3例の甲状腺癌は、15才くらいであり、3例とも一般的な乳頭癌である。

以上のことから、今回見つかった3名の甲状腺がは高精度の検診を行ったことによって、通常成人で認められていたような甲状腺癌が小さいうちに発見された可能性が高い。
これが福島の子供達のベースラインの甲状腺癌の頻度となる。

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印象に残った話を箇条書きにまとめました。
放射線被曝については、少しの被ばくでも問題だという意見から、この程度なら問題無いと言う意見まで、様々な意見が有ります。

僕は、郡山でも十分に子育て出来ると思っています。
ただ、所々線量が高い場所があり、どこでも遊んで良いと言う状況では無いと考えています。

放射線ヨウ素に関しては、郡山でも震災直後に空間線量がかなり高い時期がありましたが、これまでの調査からそれほど心配することは無い様です。

今回の講演では、福島で見つかった小児甲状腺癌が放射線被曝によるものよりも一般的な小児甲状腺癌の形態を示していることもわかり、安心出来ました。
このような機会がありましたら、また出かけて勉強してきます。

 

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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