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2010.06.12
診療
研究
その他(医療関連)

エリスロポエチン製剤 使用上の注意の改訂

先日、エリスロポエチン製剤を販売しているメーカーの担当者が来院し、使用上の注意の改訂が有った事を伝えに来ました。

改訂の主な部分はいかの通りです。

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腎性貧血の治療におけるヘモグロビン濃度に関連して、以下の臨床試験成績が報告されている。本剤投与中はヘモグロビン濃度あるいはヘマトクリット値を定期的に観察し、学会のガイドライン等、最新の情報を参考にして、必要以上の造血作用があらわれないように十分注意すること。

(1)心不全や虚血性心疾患を合併する血液透析患者において、目標ヘモグロビン濃度を14g/dL(ヘマトクリット値42%)に維持した群では、10g/dL(ヘマトクリット値30%)前後に維持した群に比べて死亡率が高い傾向が示されたとの報告がある。

(2)保存期慢性腎臓病患者における腎性貧血に対する赤血球造血刺激因子製剤による治療について、目標ヘモグロビン濃度を13.5g/dLに設定した患者注)では、11.3g/dLに設定した患者に比較して、有意に死亡及び心血管系障害の発現頻度が高いことが示されたとの報告がある。

(3)2 型糖尿病で腎性貧血を合併している保存期慢性腎臓病患者において、目標ヘモグロビン濃度を13.0g/dLに設定して赤血球造血刺激因子製剤が投与された患者注)とプラセボが投与された患者(ヘモグロビン濃度が9.0g /d Lを下回った場合に赤血球造血刺激因子製剤を投与)を比較したと ころ、赤血球造血刺激因子製剤群ではプラセボ群に比較して有意に脳卒中の発現頻度が高いことが示されたとの報告がある。

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(1)についてですが、数年前から大規模な調査によって報告されてきています。
透析前値でヘモグロビン濃度を14g/dLですと、透析後では17g/dLくらいまで上がる可能性があります。
若くて元気な透析者の方達でしたら問題ないでしょうが、合併症を持ち、動脈硬化の強い方ですと、只でさえ詰まりやすい動脈が血が濃いことで余計固まり安くなります。
そのような観点からももっともな事だと思います。

(2)は2006年11月16日のNew England Journal of Medicineに発表されたchoir試験のことです。
目標ヘ モグロビン値を11.3 g/dLとしてエリスロポエチンの投与を受けた患者に比べ,目標ヘモ グロビン値を13.5 g/dLとした患者で重篤かつ生命を脅かす心血管系 合併症のリスクが有意に増加したと言う試験です。

しかし、これはこの試験にエントリーした患者さんたちに心・血管系合併症を持つ患者が非常に多く含まれており、日本の患者背景とは異なっていて、簡単にCHOIR試験の結果を日本人に当てはめることはできないと言っている研究者もいます。

しかも、Gouvaらは、早期にエリスロポエチン製剤を使用してヘモ グロビン値を13 g/dLに維持した群が、9 g/dL未満のみにエリスロポエチン製剤を使用してヘモ グロビン値が10 g/dL程度となるように維持した群に比べ、有意に腎保護効果及び生命予後効果が有ると報告しています。

米国のFDA(食品医薬品局)が、米国で最も大規模に行われたCHOIR試験の結果を重視して、Hb値の上限を12 g/dLにとどめるように勧告しことが影響し、今回の使用上の注意の改訂となったようです。

もっと上げた方がいいのではないかと言う考えもありますが、今回の改訂により、保存期腎不全の治療で目標ヘモグロビン濃度は11g/dLくらいとなったと認識した方がいいようです。

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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