2010.02.17
診療
開業 / 病院経営
研究

限局性前立腺がんの低侵襲治療3

今回は小線源療法です。
小線源療法とは、放射線治療の1つの方法です。

一般的は放射線療法は、外照射と呼ばれ、体の外から患部に放射線を照射します。
そのため、どうしても前立腺の周囲組織へも放射線が照射され、放射線に特に弱い直腸や膀胱の粘膜、皮膚などで放射線障害が起こることがあります。

小線源療法は、ヨード125と言う放射線物質を長さ4mmくらいの筒型容器に入れて、超音波ガイド下に前立腺内に80個から100個程度挿入することにより、放射線治療を行う治療法です。

英語ではブラキテラピー(brachytherapy)と言われています。
ブラキ(brachy)とは短いという意味で、放射線源と照射目標で有る前立腺との距離が短いことから呼ばれています。

通常の外部照射では1回の治療時間は10分程度と短いものの、全部で6-7週間以上の治療期間が必要とします。
それに対して小線源治療では、挿入してしまえば治療は終了と鳴ります。
その挿入した小線源が徐々に放射線を出し続けて、前立腺がん組織を死滅させるのです。

放射線源が前立腺の中に直接存在しますので、外照射に比べると合併症が起こりにくい治療です。
 適応となるのは、転移や浸潤がなく、がんが前立腺内に限局している早期がんです。
適応は限られますが、有用な治療法だと思えます。

この治療の一番の利点は、たった1回の刺入で全ての治療が終了するため、入院・治療期間が短い事です。
さらに、他の治療に比べ、性機能が維持されやすく、QOLを低下させない治療であると言えます。

県内で行っている施設は知りませんが、東京や仙台では積極的に行っている施設があります。

当院では、この様な治療を行うことはできないのですが、適応に有った施設を提示する事ができます。
患者さんそれぞれの状況から、どの治療が適しているかを提示することが僕の使命だと考えております。

迷っている方は、一度ご相談ください。

 

2010.02.14
診療
研究
その他(医療関連)

限局性前立腺がんの低侵襲治療2

今回はIMRTとトモセラピーです。

これまで行われてきた放射線治療では、しっかりと放射線を当てようとすると、周囲の臓器にも放射線が当たっていました。
逆に、周囲の臓器に影響を与えないようにすると対象とする癌の治療が十分でなくなっていました。
前立腺がんで言うと、前立腺にはしっかり放射線を当てたいが、直腸には当てたくないという事になります。

最新の放射線治療器では、、強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy: IMRT)という、コンピュータの助けを借りて腫瘍部分のみに放射線を集中して照射できる画期的な新照射技術を併用して治療が行われます。
これによって、従来法では不可能であった理想的な放射線治療が可能となり、十分な線量でしかも合併症が軽減されます。

さらに、今までは最初に患者さんをCT撮影室で画像診断して、それから放射線治療室で治療を行っていました。
この方法だと別々の装置で治療を行うために放射線の照射の位置が、がん病巣から外れる可能性が有ります。
また、1回だけの撮影で、その後の治療を続けて行くと、実は、治療ごとに無視できないくらい前立腺の位置はずれているそうです。

前立腺の腹側には膀胱があり、尿が貯まっていると前立腺は圧迫され、若干移動します。
また、前立腺の後面には直腸があり、直腸内にガスが貯まっていると前立腺は圧迫されて移動します。
このずれは、数cmあり、前立腺が皮一枚で直腸と接している子とを考えると、無視できないずれだというのです。

このことに対して開発された装置がトモセラピーです。

トモセラピーとは、「トモ(Tomo=tomogram)」(断層写真)と「セラピー(therapy)」(治療)を合わせた造語で、アメリカの医療機器メーカーTomoTherapy社が2003年に開発したそうです。

トモセラピーは、コンピューター断層撮影法(CT)診断装置と放射線治療が同時に出来て、装置の外観はCT装置とにています。

TomoTherapy 外観

トモセラピーの場合は、毎回CT撮影を行い治療部位を決めて照射しますので、より正確な照射が可能となるのです。

治療成績では、手術と変わらないと言われています。
低侵襲な治療法ですので、これまでは手術の対象とされなかった高齢者や合併症のある方でも治療が可能です。
治療費についても、現在は保険の適応となっています。
これらのことから、今後も前立腺がんの治療として広まっていくのではないかと考えています。

現在、福島県では北福島医療センターと福島医大で行われていますが、郡山市内でも治療を計画している施設も有ります。

2010.02.14
診療
研究
その他(医療関連)

限局性前立腺がんの低侵襲治療1

昨日、福島市で限局性前立腺がんの低侵襲治療についての講演会が有りました。
演題は、
1、HIFU(ハイフ)療法
2,トモセラピー
3,陽子線治療
でした。

どれも非侵襲的な早期の前立腺がんに対する治療です。
放射線治療としては、他に小線源療法という治療法があります。
今回は、これらの治療法について書いてみます。

まずは、HIFU(ハイフ)療法からです。

高密度焦点式超音波(HIFU:ハイフ)療法とは、肛門から入れた機械から強力超音波が前立腺に向けて照射されて、そのエネルギーで癌を凝固壊死させる装置です。


A:HIFU本体
B:超音波発生プローブ
C:プローブ先端
D:超音波が照射される範囲(イメージ)
公立藤田総合病院ホームページから

当初は前立腺肥大症の治療法として研究されたのですが、あまり成績が良くなく、10年前より前立腺がんに対して行うようになり、低侵襲な治療法として注目されてきています。

焦点領域の温度は80~100℃に上昇するのですが、周囲の臓器にほとんど影響を与えなく、抗凝固剤(血液サラサラの薬)を一時的に中止しなくても治療できるのが特徴です。
麻酔は腰椎麻酔で行うことができるそうですが、抗凝固剤を飲んでいる方では、全身麻酔で行うことになります。

HIFU療法の治療成績では、前立腺内に限局する悪性度の高くない癌の場合の非再発率は80-90%くらいあり、早期がんでは開腹手術に匹敵する治療法と言われています。
しかし、病気が進行した高リスク癌の成績は極端に低くなり、有効性は低いようです。

また、一度だけしかできない開腹手術や放射線治療と異なり、患者さんによっては残存がんに対し複数回の治療が可能です。
さらに、開腹手術や放射線治療後の局所再発に対しHIFU療法を施行することも可能です。

合併症としては、最も多いのが尿道狭窄で、約15%と言われており、術後は一定期間尿道カテーテルを留置しておく必要が有ります。そして、もっとも重篤な合併症は膀胱直腸ろうですが、ほとんどが初期の装置で起こっているようです。
尿失禁は、術後一時的なもので、勃起障害も3割くらいと、前立腺全摘術に比べ非常に低率です。

この治療法は、開腹手術に比べ明らかに術後合併症が少ないため、基礎疾患があり開腹手術に耐えられない方や、75歳以上の高齢者にも可能です。

この様に、HIFU療法は、早期癌の患者さんであれば、特に年齢制限は無く、手術の合併症である勃起障害や尿失禁も少ない治療法であり、入院期間も短い治療法です。

福島県内では、公立藤田総合病院で昨年1月より行っており、当院でも希望された方をご紹介しています。

 

2010.02.12
生活 / くらし
グルメ / お酒

深谷ねぎが送られてきました。

実家から深谷ねぎが送られてきました。
2週間前に送られてきたねぎが下仁田ネギで、間違って送ったので今度は間違いなく深谷ねぎを送るからと両親に言われたのですが、本当に送られて来ました。
ちょっと来たのが早かったかもしれません。

下仁田ネギが消費し切れていない我が家の昨日の夕食は、下仁田ネギとキノコのなべと、焼き深谷ねぎでした。
焼いて食べるのは、下仁田ネギより深谷ねぎの方がちょっと上かなと思います。

ネットで調べてみると、長ネギダイエットという物が有るようです。
ちょっと頑張ってみようかな。

 

2010.02.09
診療
研究
生活 / くらし

血液透析患者の死因は2割が心臓突然死

成人で透析を受けている方の死因の約2割が心臓突然死であることが、今年の日本疫学学会で発表されたと言う記事が日経メディカルオンラインに載っていました。

発表された公衆衛生学の先生によると、
「血液透析患者において心臓突然死による死亡率は非常に高く、また発見が遅れるケースも少なくないことが分かった。
この調査結果は、血液透析患者に対する注意深い経過観察の必要性と、血液透析患者における心臓突然死を防ぐための対策が必要であることを示している」とコメントされています。

僕自身としては、これほど多いのかとびっくりしたのが正直な感想です。
それと共に思ったのが、〝血液透析患者における心臓突然死を防ぐための対策〟とはなんなのかと言うことです。

心臓突然死の半数以上が目撃されずに死に至っていたと言うことも記載されていましたが、できるだけ早期発見ができる体制を作る事でしょうか。

透析患者さんでは一人暮らしの方もかなりいらっしゃいますので、その方たちが常に緊急連絡とれる体制というのもなかなか大変ではないかと思います。

この様な話になると、どうしても何か有ったときの対策というのが注目されます。
でも、本当は何か起こらないための対策が大切だと思います。

一般の方では、これほどまでの突然死と言うことは起こりません。
そしたら、何が違うのでしょうか。

一番は動脈硬化です。
透析患者さんでは、高リン血症により異所性石灰化がおこり、動脈の弾力性がなくなり硬い動脈になります。
動脈のプラークも増えて脳梗塞や心筋梗塞も起こしやすい状態になります。

そして高血圧です。しかも、早朝高血圧があると脳卒中、心筋梗塞を起こすリスクが数倍に高くなります。

これらを回避するための唯一の方法は、十分な透析を行うことです。
たとえば、長時間透析を行っている方では、高血圧の頻度が非常に少なくなります。
そして、リンの値も低くなるので、異所性石灰化も起こりにくくなります。
さらには、透析中に無理な除水を行うことがなくなるので、透析中のショック状態を回避し、昇圧剤を減らすことができて、透析中に起こり問題である無痛性の心筋梗塞も起こす可能性が低くなります。

現状の週3回4時間血流200の透析でも、日常生活を過ごすためには何とか透析量は足りているのかもしれません。
でも、10年、20年後に突然死を起こさない為には、しっかり透析を受けると言うことが大切ではないかと僕は思っています。

 

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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