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2009.12.08
診療
研究

医療費の詳細な明細書の無料発行について

厚生労働省では、全ての医療機関に対して医療費の詳細な明細書を無料発行するようにする動きがあるようです。

明細書には、行った処置や投与した薬剤の価格と共に、全ての病名が記載されます。
行われた行為とその事に対して支払う価格がはっきり明記されますので、医療の透明化を行うと言う視点からはとてもいいことだと思います。

ところが、医療者側はこの詳細な明細書の発行に対して強く反対しています。
なぜなんでしょうか。

ここで、ちょっと例を挙げます。
尿管結石で来院された患者さんが強い痛みを訴えた場合です。
即効性があり、痛みを抑える薬として、ボルタレン座薬があり、非常に有効でよく使われています。

しかし、ボルタレン座薬の適応病名は、
次の疾患並びに症状の鎮痛・消炎//関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、後陣痛。手術後の鎮痛・消炎。
急性上気道炎の緊急解熱。

となっています。
尿管結石は入っていません。
そこで、腰痛症と言う病名を付けるようになります。
これが「保険病名」です。

尿管結石は腰が痛くなるので、腰痛症と書いてあっても、それほど違和感がありません。
ただ、ある病気に対し、有効だと知られているけれど、適応病名にないものはたくさんあるのです。

なぜこんな事が起こるのでしょうか。
日本では、ある薬剤の適応病名を取るためには、追加する臨床試験の費用を含め、かなりのコストがかかるようなのです。
安価な薬の場合や適応が通っても少人数の方にしか使わない薬では、製薬会社がその薬の申請をしても、コストに見合う利益が得られないので、適応を取らなくなります。

しかし、痛がっている患者さんに有効であるボルタレンを使わない訳にはいきません。
そこで、実際には尿管結石とは違う病名である腰痛症という病名を使うようになるのです。

詳細な明細書に病名が全て書かれるようになると、患者さんは自分の病気と違う病名に気づくようになります。
その事を十分に説明すればいいのですが、たくさんの薬でこの様なことが有るため、これまで医師の裁量でこの薬が一番いいと判断していた薬も、これは適応が無いから使うのを止めようと言う考えが出てくるようになってしまいます。

このことは、結果的に患者さんにとても不利益になるのです。
ですから、詳細な明細書を義務化するなら、その前に有効でよく使われる薬に対しては、薬剤の適応病名をもっともっと広げて欲しいのです。
その時は、喜んで賛成するのではないかと思います。

プロフィール

援腎会すずきクリニック院長 鈴木一裕

こんにちは、援腎会すずきクリニック院長の鈴木一裕です。

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