泌尿器科診療における三つの柱
- 泌尿器科専門医による質の高い診療。
- 分かりやすい説明で、患者様が納得し、満足できる医療。
- 出来るだけ痛みの少ない検査法。
泌尿器とはおしっこを作り排出する器官の総称です。具体的には腎臓、尿管、膀胱、尿道からなります。泌尿器科は、腎臓、尿管、膀胱、尿道と、関連の深い生殖器や副腎も扱う診療科です。泌尿器科では、これらの臓器の悪性腫瘍や、おしっこに関する良性疾患を取り扱います。
主に次のような症状や病気の相談、診断、治療を行っています。
悪性疾患では、主に尿路と男性生殖器、腎臓を扱います。
-
前立腺がん
前立腺がんは、近年ものすごい勢いで増えています。2015年の前立腺がん罹患数は男性のがんで1位になると予測されています。今では腫瘍マーカーであるPSA検査が普及し、早期発見できるようになりましたが、十数年前は、腰痛から前立腺がんが発覚するなど前立腺がんが新興してから見つかることも多くありました。郡山市でも一昨年から前立腺がん検診が始まりました。検査はPSA検査、超音波検査、MRI検査、確定診断は経直腸的前立腺針生検で行います。手術療法、放射線療法、ホルモン療法などの治療法があり、いずれも治療効果が高く、予後は比較的良好です。
-
膀胱がん
膀胱がんの主症状は血尿です。血尿以外の症状(頻尿、残尿感、排尿時痛など)が出ないことも多く、一度肉眼的血尿があってもすぐに血尿がおさまり、気がついたときには大きくなっていたなどということもありますので、肉眼的血尿があったらすぐに泌尿器科を受診してください。検査は尿検査、尿細胞診検査、超音波検査、CT検査、膀胱鏡検査などです。膀胱鏡検査は軟性膀胱鏡で行い、以前の硬性膀胱鏡に比べ痛みは少なくなっています。治療は、まず経尿道的手術ですが、筋層までがんが浸潤していると膀胱全摘術が必要となることもあります。
-
腎がん
腎がんの3大症状は、血尿、腰痛、腹部腫瘤と言われておりましたが、現在では検診や他科で施行した超音波検査で見つかることが多くなりました。検査は、尿検査、超音波検査、CT検査などです。治療は、抗がん剤や放射線療法が効きにくく、手術療法が基本となります。
-
尿管がん
尿管がんの主症状も血尿ですが、おしっこの流れが滞り水腎症になることがあります。水腎症になると、腰痛が出現することがあります。検査は、尿検査、尿細胞診検査、超音波検査、CT検査、膀胱鏡検査、逆行性腎盂造影検査などです。治療の基本は腹腔鏡による内視鏡手術です。
-
尿道がん
尿道がんは比較的まれで血尿と排尿困難が主症状です。検査は、尿検査、尿道鏡検査、CT検査などです。治療は手術が基本となります。
-
陰茎がん
陰茎がんは陰茎の皮膚から発生するがんです。陰茎にできものができたら泌尿器科を受診してください。検査はCT検査などです。抗がん剤も効果はありますが、手術が第一選択となります。
良性疾患では、主に下記を扱います。
-
前立腺肥大症
前立腺肥大症は、加齢や生活習慣、男性ホルモンの影響などで前立腺が腫大する病気です。前立腺が腫大すると、尿道を圧迫して尿が出にくくなり、頻尿、残尿感、夜間頻尿、尿意切迫感などの症状も出現します。国際前立腺症状スコアで自覚症状を点数化を行い、超音波検査で前立腺の大きさを計ります。また、尿流残尿測定検査でおしっこの勢いや残尿量を調べ、総合的に重症度を判定します。前立腺がんも前立腺が大きくなり同じような症状が出ますので、前立腺がんを除外して治療に移ります。治療は、まず初めに薬物療法を行います。α1ブロッカーと言う尿道抵抗を小さくする薬が主に使用されます。他には、前立腺自体を小さくする薬や植物製剤、漢方薬などがあります。薬物治療で効果のない場合、手術療法を考えます。経尿道的前立腺切除術が基本ですが、大きい前立腺には経尿道的レーザー前立腺核出術など、低侵襲の経尿道的内視鏡手術が出現し、現在では開腹手術はほとんど行われておりません。
-
過活動膀胱
過活動膀胱とは、急におしっこがしたくなり我慢できなくなる状態(尿意切迫感)で、実際に漏れることもあります。頻尿や尿失禁により日常生活に支障をきたすこともあります。神経に障害がある時や、加齢、骨盤底筋の障害、前立腺肥大症など下部尿路に通過障害がある場合に起きることもあります。検査は、尿検査、超音波検査、膀胱内圧測定検査などがあります。治療は薬物療法です。主に抗コリン剤を使用しますが、男性で前立腺肥大症がある場合はα1ブロッカーを優先的に使用します。その他、行動療法として、生活習慣の改善や機能の弱まった膀胱や骨盤底筋を鍛える膀胱訓練、理学療法などで症状が改善することもあります。
-
神経因性膀胱
神経因性膀胱とは、排尿をコントロールする大脳、脊髄、末梢神経の障害によって起こります。症状は、頻尿、残尿感、排尿困難などです。時には全くおしっこが出せなくなる尿閉となることもあります。原因は様々で、認知症、パーキンソン病、脳卒中(脳梗塞や脳出血)、頭部外傷などの大脳の障害、多発性硬化症や脊髄小脳変性症などの脳脊髄神経疾患、脊髄損傷、頚椎症、二分脊椎、脊椎腫瘍などの脊髄の障害、糖尿病性神経症、腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離症、骨盤内手術後の末梢神経障害など、多様な原因が挙げられます。検査は、尿検査、超音波検査、MRI検査、膀胱鏡検査など尿路の評価と、原因疾患の検査として、頭部や脊髄の MRI検査、髄液検査などが行われることもあります。治療はまず原因に対する治療ですが、なかなか改善しないことも多く、薬物療法で排尿状態の改善を試みます。下腹部を圧迫して排尿したり、患者さん自身が1日4~5回導尿する間歇的自己導尿法や、尿道留置カテーテルを留置することによって尿を体外に排泄しなければならない場合もあります。
-
膀胱炎・尿道炎
尿道から細菌が逆行性に侵入すると膀胱炎や尿道炎になります。症状は排尿時痛、頻尿、残尿感などです。さらに細菌が尿管から腎盂に侵入して腎盂腎炎となると腰部痛や発熱といった症状も出現します。男性の場合、細菌が前立腺に侵入すると前立腺炎、さらに精管を通って精巣上体に侵入すると精巣上体炎を引き起こし、発熱や、精巣上体から精巣まで腫れ上がったりすることがあります。また、大人になっておたふく風邪になると精巣が腫れて精巣炎となることがあります。
-
尿路結石
尿の通り道に結石が出来ることを尿路結石と言います。腎臓にできれば腎結石、尿管にある結石を尿管結石、膀胱にある結石を膀胱結石、尿道にある結石を尿道結石と言います。結石があるだけでは症状はほとんど現れませんが、尿の通過障害をきたすと激しい腰背部痛、側腹部痛、下腹部痛や血尿が出現します。吐き気や嘔吐を伴うこともあります。30~60代の男性に多く(男女比約2.5:1)、約95%が上部尿路結石(腎結石と尿管結石)です。シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石が多く、その他尿酸結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石、シスチン結石などがあります。原因ははっきりしておりませんが、尿が濃くなると結石ができやすくなるので、水分を多めに摂ることで比重が小さい尿をたくさん出すことが一番の予防法です。治療法は、水分をどんどん摂取して自力で結石を排石する方法(もちろん痛み止めで痛みを取りながらですが)、体外衝撃波による結石破砕術(外来通院で治療可能)、内視鏡手術による結石破砕術などがあります。一昔前は開腹して結石を摘出していましたが、現在では開腹手術はほとんど行っておりません。
-
性感染症
性感染症とは、性行為により感染する病気です。細菌によるものでは、淋菌感染症、クラミジア感染症、梅毒など、ウィルスによるものでは、HIV(エイズ)、尖圭コンジローマ、B型肝炎、C型肝炎など、その他の病原体によるものでは、トリコモナス症、カンジダ症、ケジラミ、疥癬などがあります。
症状としては、排尿時痛、尿道から膿が出るなどの排尿症状、かゆみや発赤、できものができたなどの性器や性器周囲の皮膚の症状、オーラルセックスの場合は喉にも感染します。
放っておくと、不妊症の原因となったり、出産時に赤ちゃんに感染して失明したり死に至ることもあります。
泌尿器科を受診する患者さんで多いのは、淋菌とクラミジアの感染症です。当院では簡易同定検査で30~40分で結果がわかります。梅毒やウィルス感染の場合、多彩な皮膚症状が出ますので、診察とウィルス抗体の検査で診断します。
治療は、抗生物質や抗ウィルス薬による治療となります。 -
ED(勃起障害)
EDとは、性交時に十分な勃起やその維持ができずに満足な性交が行えない状態と定義され、「勃起障害」、「勃起不全」と訳されます。原因は様々で、年齢、ストレス、運動不足、お酒の飲み過ぎ、喫煙など生活習慣が原因となっていることが多いと言われています。また、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病の方はさらにリスクが高くなります。
治療は内服薬が主流です。現在3種類のED治療薬が発売されており、患者さんに合った薬を選んでいただけるようになりました。心臓の病気で硝酸剤(ニトログリセリン)との同時服用は禁忌になっており、その他の薬でも排尿障害や血圧の薬など一部の薬と併用できない薬もありますので、医師に相談してください。ED治療には健康保険が適用されないため、診察費、薬剤費など全て自己負担となります。
ED治療薬を内服できない場合は、陰圧式勃起補助具、陰茎海綿体注射、陰茎プロステーシスなどの治療法があります。 -
小児泌尿器疾患
小児の泌尿器科疾患として多いのは、停留精巣、遊走精巣(移動性精巣)です。赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる間に、精巣は後腹膜から鼠径管を通って陰嚢内に落ちてきます。その途中で止まってしまったものが停留精巣で、陰嚢内にじっとしておらず、鼠径部や腹腔内に上がってしまったりするものが遊走精巣です。停留精巣を放っておくと精子を作る働きが悪くなったり、精巣の悪性腫瘍になりやすくなったりするため、なるべく早期に手術が必要になります。遊走精巣の場合は明確なevidenceがあるわけではありませんが、手術適応となる場合もあります。
思春期以降になると、精索静脈瘤が見られることがあります。これは左の精巣静脈の血液の戻りが悪くなり陰嚢内の静脈が怒張し腫瘤上になった状態です。
精液検査について
初診時に診察とともに、検査前の準備や注意事項のご説明と採取容器のお渡しがあり、次回の精液検査予約をお取りします。